君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 ここはどこだろう…。

 あたりを見渡すと、何もなくただひたすらに白い空間が広がっている。
「だれかいますか?」と、大きな声を出そうとするも喉からはヒューヒューと空気の抜ける音ばかりが出てくる。どうしようか、誰かが来るのを待ってみる?それとも誰かに会うまで歩いてみようか?


 見知らぬ空間で大声も出せない状況なのに、意外にも落ち着いているのはこの空間がどこか安心感を感じるからだろうか。






 ふと、目の前に僕と背丈が同じくらいの男の子が立っていることに気が付く。不機嫌そうに眉間にしわを寄せ、腕を組み僕のことをじっと睨んでいる。僕よりも長い金色の髪が白い空間に映えていてとても眩しい。

 あれ、おかしいな。僕はこの子のことをよく知っているはずなのに僕の知っている人とどこか違う気がしてならない。



 どちら様?と尋ねる前にその子が一度小さく舌打ちをして
「なんだ、その情けない面は。」と冷ややかな目をして吐き捨てるように言った。

「え…。」
「それに何であんな奴なんかと仲良くしてる?」
「あ、あんなやつって…?」
「まぁいい。とりあえずついてこい。」目の前の子が何を話しているのか分からず困惑している僕をよそにその子はどこかへと歩き始める。



「ここはどこなの?」
「今の君に言ったところで分からない。」
「そう…。じゃあ、君は誰?」
「そんな分かりきったことを聞くな。」
「だって、なんだか違う気がするんだもん。」
「それでも、根本は一緒だ。」
「君はここにずっといるの?」
「そんなわけないだろう。」
「どこに向かっているか聞いてもいい?」
「あそこだ。」とその子が指をさした先には黒いドアが立っていた。
 こんなものさっき見渡した時にはなかったのにな…。



「入れ。」その子はドアの前に立ち顎でくいっと促す。
「え?入れって…ここに?」
「そうだ。」
「この中には何があるの?」
「入ればわかる。」
「えぇ…。」


 もう一度ドアのほうを見る。そのドアに見覚えがあることに気が付く。
「これ、僕の部屋の扉にそっくりだ。」僕の部屋のものより少し傷が多いだけで、ほかの作りは全くと言っていいほど一緒だった。
「そっくりもなにも君が思う部屋のドアそのものだよ。」
「え…?ど、どういうこと…?」
「それも、入ればわかる。」と言って、その子はおもむろにドアを開き、僕をその中へと押し込む。




「あれ、僕の部屋だ…。」そこにはさっきの真っ白な空間とは打って変わり、今度は見慣れた僕の部屋が広がっていた。久しぶりに帰ってきたなと思う反面、あの子と同じようにどこかが違う気がする。その違和感を探ろうと僕は中へと足を進める。
「厳密には僕の部屋だ。」
「え、君の…?」
「そうだ。」
「君は入らないの?」ドアに寄りかかってなかなか入ろうとしないので不思議に思って尋ねてみると、
「入るわけないだろう。同じ世界に二人も要らない。そうだな、君が消えたら僕も戻るとするよ。」とまた意味不明な答えを返され、そのままドアを閉められた。





「あ、ちょっと!」あの子のもとに戻ろうとドアを開けるけれどその先は、先ほどの白い空間ではなく家の廊下になっていた。今は夜なのだろうか、廊下がとても薄暗い。あの子はどこに行ったんだろうと思い、近くを見渡してみてもあの子はおろか人ひとりいない。



 困ったな...。また1人になってしまった。どうしよう、さっきみたいに誰かが来るまで待ってみる?でもな~この部屋僕の部屋じゃないみたいでなんだか居心地がすごく悪いからずっといるのもな…。
 じゃあ誰かに会うまで歩いてみようか。薄暗いとはいえ歩くのが困難なほどではない。それにもしかしたらまだあの子がどこかにいるのかもしれない。よし!それなら歩いてみよう!









 そう思って僕は廊下の向こうへと足を向けた。
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