君の瞳は月夜に輝く

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アランの独り言


 カーテンを閉め切った真っ暗な部屋。時折、苦しそうに呻く声。寝返りを打ってする布の擦れる音。何年も経験してきたはずなのにいつまでたってもこの雰囲気はどうしてだか居心地が悪い。
 

 ベットで寝ているアルがまた苦しそうに呻く。俺はアルの額を流れる汗を濡れたタオルで丁寧に拭う。






 アルが参加するのを何としてでも止めるべきだった。
 
 最初は参加させる気なんてなかった。昼とはいえ満月の日だし、何より俺が生徒会の仕事で同行できないからアルに何かあってもすぐに対応できない。しかし、せっかくの歓迎会に参加できないというのはあまりにも可哀想だし、俺も新入生歓迎会の日程をずらせなかったという負い目もあってそれならばと、今回は何かあってらすぐに知らせるという約束をさせアルをあいつらに任せた。それに、万が一俺がすぐに動けなくても対処ができるように、低学年の見守りを強化するという名目で万全な体制を敷いたつもりだった。


 その判断が間違っていたことを今身をもって知る。

 




 


 今は何時だ。外が騒がしいので食事会が終わったころなのだろう。

 それにしても、不思議なのはあいつのことだ。アルは広場で気を失ったと聞いていたから、てっきり近くのロストあるいは尾行をさせたカイルが連れてきてくれたのかと思っていた。しかし、アルが寝ているベットの隣にはロストもカイルもおらず、何故かあのリューク=シャンブルクがいた。あいつにはアルを守れなんて一言も頼んでいないはずだ。みんなに聞けばどこからともなくやってきてアルを抱えて行ってしまったそうだが、あいつがアルの近くにいた理由が分からない。なぜお前がといくら問うても、口をもごもごさせ挙句には「今はうまく説明できない。」とはぐらかされる。それに、帰りがけに呟いたことも気になる。それは捉えようによってはアルの今までの努力を否定するようなことだったため、俺は思わずあいつに掴みかかりそうになった。それをあいつはねじ伏せるように証拠を見せつけたので、それ以上何も言えなくなってしまった。今考えればあいつの言ったことは正しいのかもしれない。しかし、それならばどうして…。 



 そこまで考えたところで、アルが一度大きく唸った。さっきよりも呼吸が荒く、汗もひどい。まるで悪夢にうなされているようだ。

 今まではこんなに大きく反応することはなかった。なんで今日に限って反応が酷いのだろうか。それに気絶をするにもアルが倒れたのは、昼間だ。夜ならまだしも昼にというのは初めてだ。やっぱりあいつの言ったことが関係しているのだろうか。そうじゃなくても何かが要因になっているのは間違いがない。


 熱が早く引くようにと祈りを込めて、アルの額に手を当てる。少しは安心したのか呼吸が落ち着いたように見える。


 明日の朝になれば両親が駆けつけてくる。明日になれば反応も少しは落ち着くはず、だ。それまでの辛抱だと言い聞かせるように、これ以上苦しまないように、アルの頭を撫でる。
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