君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 ゲームも中盤に差し掛かり始めたので、僕たちは少し休憩をとることにした。

 近くにベンチを見つけ足の疲れをいやす。最初のほうは後ろで騒がしく色んな人を注意していたカイルさんはいつの間にか落ち着いたようで静かにはなったようだが、依然として背中に圧を感じている。ていうか、静かになったからか、その分圧がすごく重くなった気がする。若干首筋がピリピリするし。カイルさんのことだからきっと眉間にしわ寄せながら着いて来ているんだろうな…。






 
 ていうか、この場所心地いいなぁ・・・!全身を隠すように木の影がかかっているし、そよ風も吹いていて、涼しい!このままここで寝れそうだな…。


 うとうとしかけたその時、「そんなとこで何してんだ?」と頭上から声がかかる。




......正直、とっても目を開けたくはないのだけど、開けなかったら開けなかったで何をされるのか分からないので、恐る恐る目を開け上を見る。

 案の定、目の前にはメルロス殿下がいた。



「メルロス殿下!そこから落ちたら怪我をします!危ないですよ!」僕は慌てて立ち上がり、木の上に立っている殿下に言った。
「危ないって、俺がここから落ちるわけがないだろ。それより俺は何してんだって聞いてんの。外が騒がしいからなんかあるのかと思って高いところに登っても何も分からないし。」
「新入生歓迎会です、殿下。今は宝探しといって、点数の書かれた板を探しているんです。」
「新入生歓迎会…。あぁ、そんなもんもあったな…。てか、なんで宝探しなのに宝探さないんだ。それ、点数探しとかのほうが良くないか?」
「さぁ、何ででしょう。恐らく決めたのは会長の兄なので兄に聞いてみれば分かるかもしれません。」
「ま、まぁ、でも点数探しじゃちょっと、締まらないか…。」メルロス殿下はどうやら兄が苦手みたいで、名前を出すだけで大人しくなってしまう。何かされたのだろうか…。


「殿下は歓迎会参加されないんですか?」
「参加するはずがないだろう?俺は忙しいんだ。」忙しい、ね…。大方悪いことなんだろうな。
「じゃ、忙しい俺はもう行く。あ、そうだ。また俺が暇な時呼ぶから必ず来いよ。じゃあな。」そう言い殿下は木から飛び降り走り去っていった。




 僕の武術を指導してくれるっていう殿下の気まぐれは未だに続いていて、あの武術の授業以来何回か見てもらっている。殿下の技術は言わずもがな、教え方も分かりやすい。おかげで、以前よりもさらに武術の腕があがり、この前は先生にも褒められた。それに、たまにだけど武術以外の自分の身の守り方も教わっている。さすがは王家というか、色んな人の思惑渦巻く社交の場で、いかに生き延びるかをよく知っていて、いつも終わった後は精神的にも強くなった気がする。





「アルス君って、メルロス殿下と仲いいの?この前の武術の時間も一緒にいたよね?」と同じ班の子が聞いてくる。
「仲がいいっていうか、なんていうか。揶揄われているだけだよ。」
「あの時はすごかったな~。だって、気付いたら端っこの方で的が盛大に燃えていたんだもん。」
「あれは、僕でもびっくりしたよ。」
「だから、てっきりアルスくんってちょっと怖い人なのかと思ってた。ほら最初もさ、いきなり的に五本とも当てちゃうし!牽制されているのかと思ったよ。」
「あぁ、あれは張り切りすぎたっていうか…。まさか僕も全部当たるとは思っていなかったし。みんなに、こう、いいとこ見せたかったっていうか…その…。」

「牽制って!だからあの時周りのみんなの様子変だったんだ!」隣でシンと話していたはずのリーンが話に割り込んでくる。
「やっぱりなんかしてたんだな、アル。」シンまでもニヤニヤしながら会話に入ってくる。
「いいとこ見せたかったって、どうせアルのことだから『カッコいいところ見せたら皆話しかけてくれるかな?』とか思ったんでしょ?」なんで、ばれてるんだ…?
「アルは昔から友達作るの下手くそだからなぁ~。」
「う、うるさいな…。」
「でも、意外と話しやすくって、今はもっと早く話しかければ良かったなってすっごく思ってる。」ははは、と笑いながらもフォローをしてくれる班の子。なんて優しいんだ。










 そろそろ、再出発をしようかと思った矢先、
「忘れてた!」とどこからか声がする。声がしたほうを見ると、走り去って行ったはずの殿下戻ってきて、
「木の上に登ったとき、あっちの方に数字の書いてある板を見つけた!」と嬉しそうに庭園の南の方を指さす。その数字が今まで見つけた中で一番高い点数だったので、僕たちは慌てて立ち上がり、庭園を目指し歩き始める。
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