君の瞳は月夜に輝く

文字の大きさ
上 下
16 / 99
幕開け

14

しおりを挟む
 やっとのことで今日一日の授業が終わり、僕達は皆より早めの晩ご飯を食べ、いつものように談話室へと向かう。この時間の談話室は人がいることが少ないので、ほとんど貸し切り状態だ。
 それにしても3人とも昼からずっとうかない顔をしていて、なんともいえない空気が漂っている。シンとリーンはなんだか険しい雰囲気だし、ソーンくんも話しかけてもなんだか反応が薄い。きっとシェフラーさんとのことなんだろうけど、僕がそれについて何か言うと逆効果な気がしてなにもできない。


 ふと廊下の掲示板に目をむける。色々な伝達事項や所連絡の中に新入生歓迎会という文字を見つける。
 これは!この空気をどうにかするために使えるかもしれない…!



「ねぇ3人とも。2週間後新入生歓迎会あるって…。」恐る恐る話題を振ってみる。
「「「新入生歓迎会?」」」
 予想通り3人とも掲示板に近づく。
「昼は宝探しで、夜はみんなでご飯か…。」
「へぇ~なんだか楽しそう…。」だんだん3人とも笑顔になる。空気もなんだか軽くなったようだ。
「夜はみんなでご飯って、アルはどうするの?」
「2週間後はたしか満月だし、夜は参加せずに昼だけ参加しようかな。」
「てか、これ生徒会主催じゃん。そばにいる暇がないだろうし、アランさんはダメって言うだろうな。」シンがまだ根に持ってるのか水を差してくる。
「でも昼くらいは大丈夫なんじゃないのかな?」ここでソーンくんが助けてくれる。
「そうだよ。それに僕3人とずっといる気だから大丈夫。」
「本当?いつもそう言いながら気づいたらいないじゃん。」リーンもまだ機嫌が悪いようだ。
「今回は本当に近くにいる!本当だって!!ね!いいでしょ!!」
「アランさんに許可取ったら、参加していいぜ。許可取れるんならな。」にやりと笑うシン。
「そんなの絶対無理じゃん!」絶望で立ち止まる僕を楽しそうに置いていく3人。

「ねぇちょっと!待ってよ!!」









 談話室に着いてからも僕達の話題は新入生歓迎会だった。
「掲示板に優勝した人には豪華なプレゼントって書いてあったけど、なんだろうな?」とシンが談話室のカーテンを閉めながら言う。
「上級生の方の話によれば前回は高級スイーツ店のプリンだったらしいよ。」交友関係の広いリーンが言う。
「じゃあ、今年も食べ物関連?」
「どうなんだろう?」
「去年はどうだったの?」ソーンくんがお菓子を頬張りながら聞く。
「去年も宝探しで、問題の紙が入った箱を探して、それを解きながら鍵をさがす感じだったらしいよ。」
「え~問題解くの~?俺苦手~。」
「あ、でもその前の年は宝探しじゃなくて、単純にご飯食べるだけだったって言っていたような。」
「じゃあ、今年も全く変わるのかな?」
「そうじゃないのかな?あ、変わるといえば、話違うけど隣の席の子がもう試験の話をしていてね、たしか魔術論以外は去年と問題が一緒の科目が多いんだけど、魔術論だけ毎年変わっていて、しかも問題も難しいらしいの。」
「げ、もう試験の話!?まだ授業始まったばっかじゃん!」
「そんなんだと落第するかもしれないよ?それに魔術論ってみんなとってるじゃない。今の内から復習したらどうなの?」
「お母さんみたいなこと言うなよリーン!それに今の内って言ったって、まだ1か月も先の話じゃんかよ!?」
「え、それって十分な時間があると思ってる?今日の小テストの点数も悪かったじゃん。少しはソーン君を見習えば?」
「ソーンは生徒会だから頭良いんじゃん。」
「関係ないじゃん。ねぇ?ソーン君。」
「え?あぁ、そうかな。」
「そうだ、ソーン君勉強法教えてくれない?参考にしたいんだよね。」
「え、勉強法?」
「てか、ソーンの勉強してるとこ見たことねぇな。本当にしてんの?」
「そりゃ、陰でしてるに決まってるじゃない。ねぇ?」
「隠すことないじゃん。」
「あんた本当にデリカシーないわよね。」
「それはさ…。」



 なんだろうさっきからずっと眠い。今日は色んなことあったし疲れてるのかな。2人の言い合いが子守歌に聞こえてくる。落ちてくる瞼に抗うことができない。寝ちゃうな…これ…。







「…なぁ、どう思うアル?って…。」
「あ、寝てる…。」
「噓でしょ…。さっきから一言も喋ってないと思ってたら。もしかして疲れてたのかな…?」
「どうする?部屋まで運ぶ?」
「アルのお兄さんは?」
「確か生徒会の仕事で今日は遅くなるって言ってたよ。」
「じゃあ、俺達で運ぶか。あ、リーンはいいよ。男子部屋に女子入れないだろ?」
「言われなくてもそうするつもりよ。でも途中までついていく。」
「ん。あ、ソーン足の方持って。」
「分かった。」

















~ソーンside~


 アルを僕とシンの2人で持ち上げて、リーンは隣を歩く。アルは気持ちよさそうな顔をしてすやすやと眠っている。男子部屋と女子部屋との分かれ道に差し掛かったところで見覚えのある黒い影が前から近付いてくる。

「なぁ、あれって…。」
「まさか…。」
「黒すぎでしょ…。びっくりした…。」
「と、とりあえず端っこよろうぜ。」
「そうだね。」相手に聞こえないよう小さな声で話し、廊下の端による。



 そのままアルの部屋に行こうとするのを彼が止める。


「おい、ちょっと待て。」何度聞いても慣れない冷たく低い声。2人も同じなのだろうか、顔が強張っている。
「あっ!リューク様じゃないっすか!こんな時間にどうかしました?」無理やり笑顔を作りシンが聞く。
「そいつは?」ギロッとアルの方に目だけを向ける。
「え?あー、な、名前っすか?」
「名前くらい知ってる。気絶したのか?」
「あぁ!そうっすよね。えーっと、気絶なんてしてないっすよ。ただ寝ちゃっただけっす。」
「…そうか。」そう言ってその場を去って行く。すれ違いざま、アルの体がピクッとした。それを見て思わず笑みを浮かべそうになる。いけない気を引き締めなきゃ。








「ったぁー!殺されるかと思ったー!怖かったー!」息を止めていたのかリーンが大きく深呼吸をする。
「急に暗闇からきて心臓止まるかと思ったよ!」僕も慌てて話を合わせる。
「なぁ、なんで2人とも話してくれなかったの?俺1人でよくやったと思わない?」不貞腐れた表情のシン。
「それは、ごめんね。口が開かなかったの。」
「まじであいつ殺気やばすぎ。俺今日命日かと思ったよ。てかなんでソーン笑ってんの?」
「え?笑ってなんかないよ!」
「いやニヤついてんじゃん!」
「あ~あはっごめんあまりにもシンが必死だったから。」
「それひどくないか?ソーン君?」
「あははっ確かにあんなに焦ってるシン初めて見たかも。」
「2人ともそりゃないよ~。なんかこう、お褒めの言葉とかあってもいいじゃん!」
「助かったよ、ありがとうシン。」
「私は何も言わないよ。そこから男子部屋だから入れないし。」
「それ全然かんけーねぇじゃん。ま、いっか。ソーン君が言ってくれたし。じゃあな。おやすみ、リーン。」
「おやすみ。ソーン君もおやすみ!」
「うん。おやすみ。」
 リーンと別れ、僕達はアルの部屋へと行く。




















 …それにしても顔に出てたかな。今度から気をつけなくちゃ…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

僕が幸せを見つけるまで

Moon🌙.*·̩͙
BL
僕には5歳までの記憶が無い 僕は何で産まれてきたんだろう 誰も幸せになんてならないのに、 これは愛を知らずに生きてきた少年の話 これからこの少年は誰と出会い何を思うのか この少年に幸せが訪れますように (BのLのお話なので嫌いな方はUターンしてください)

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

処理中です...