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幕開け
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入学式の次の日から普通に授業は始まる。このロングストン学園は学年ごとに最低限履修しなければならない科目と取らなければならない単位が決まっている。逆に言えばそれらの科目さえ取っておけば、あとの科目は自分で決めることができるという仕組みだ。自分の将来を想定して特定の分野に特化した授業を組むこともできれば、様々な分野の授業をまんべんなく組むこともできる。ちなみに僕は将来なりたいものが特にないので、まんべんなく組むようにしている。色んなことを知れば自分のやりたいことが見つかるかもしれないし、教養として将来役に立つかもしれないからね。
そして今僕は教室の扉の前でとてつもなく緊張している。緊張しすぎて指一本動かない。教室に入ろうとしない僕をシンとリーンが不思議そうにこちらを見ている。
「どうしたの?入らないの?」
「ん?緊張してんのか?」
あぁ、がちがちに固まって返事すらできない…。
いつまでたっても一向に動かない僕に痺れを切らした二人が半ば強引に僕を中に引き入れる。
その瞬間、教室の音という音が止まる。
視線が一気に集まってくるのが分かる。驚愕の目。好奇の目。懐疑の目。品定めをする目。冷ややかな目。目という目が僕達を見てる。
だから初めての場所は苦手なんだ。僕だって周りからどういう評判を受けているのかぐらい知ってる。覚悟はできてるつもりだったんだけど、昔からこの感じは慣れない…。冷や汗が止まらない。逃げたい。怖い。
あ、ダメかもしんない。
その時シンとリーンがのぞき込んでくる。
この感じは慣れないんだけど昔と違って今はシンとリーンがいてくれる。だからかな?安心して前に進むことができる気がする。うん、二人の顔を見たら緊張も少し和らいだ。
「お、おはようございます…。」声、震えてなかったかな?
「おっはよー!ございます‼」
「ごきげんよう。」僕に続いて二人も挨拶する。不思議と視線が気にならなくなる。大丈夫。大丈夫だ。
教室の隅で三人で話しているとチャイムが鳴った。しばらくして先生と思われる人が入ってくる。身長高いんだろうけど猫背が台無しにしていて、見た目はなんというか…若干、ぼさっ?というか、もさっ?としてる。
でも僕この人のことを知ってるんだ。風属性の魔術の第一人者らしくてよく僕の家に来て兄と何か話してたから見たことあるんだ。全然話したことはないけど。名前はたしか、
「シャーマール=フォルストだ。よろしく。」
そうだ、シャーマールだ。シャーマール先生。
「俺は魔術系の授業を大体持っている。魔術に関して質問があれば何でも聞け。」
兄の話によるとシャーマール先生は魔術の使えないような人でも使えるような装置を作ろうとしているらしい。
例えばこの世界に転移魔法というものがあるんだけど、それは魔力がないとできないし、魔力があっても魔術式を知ってないとできない。でもこの先生は風属性の魔術を一個の魔石に込めてそれを源とした装置を作り、誰でも転移魔法を使えるようにと研究しているらしい。僕も転移魔法が使えないから正直、滅茶苦茶興味ある。使ってみたい。
一限目の必修の魔術学(座学)を終えて二限目の武術(実践)が始まる前の休憩時間。さてところ変わってここは学園の体育館。この授業は、僕みたいに魔力が無いから受けてるって子もいるけど、やっぱり貴族だから最低限受けておくっていう子が大半で、そういう子たちにとって魔力のない僕は格好の的だったりする。さっきからシンやリーン、武術の先生がいないことをいいことにひそひそと陰口を言われてる。僕これでも一応公爵なんだけどな。うぅ、数の暴力…。肩身が狭い…。
そう僕は今現在絶賛ぼっち中である。シンとリーンは魔術専攻で、僕は武術専攻。この学園のシステム上僕は実践授業の間、二人と別のクラスで受けなければならないので、自然とぼっちになってしまう。ぼっちになったところで周りからの視線は変わらない。むしろ二人がいなくなった分痛いほど感じるようになった。居たたまれないってこういう感じなんだなぁと体感する。でも僕の得意な武術だからさっきよりかは心に余裕がある。我ながら単純だなとは思うけどね。なにより僕には作戦がある。この実践授業でカッコいいところをたくさん皆に見せて評判を改めるんだ!そして友達を作る!
要するに、実践授業でカッコいいところを見せる→「アルス君って実はすごくかっこいいんだね!」→「友達になってください!」
というわけだ。我ながら完璧な作戦だと思う。
先生が体育館に入り、授業の内容や一年の見通しの話もそこそこに武術の実践授業が始まる。今学期は弓を扱うらしい。先生が前でお手本を見せる。視線の先には四角形の小さな的。五本のうち三本が的の中央に、残り二本が中央とまではいかないがその周辺に刺さる。おぉーと声があがる。
「最終的には馬に乗った状態でもこのように五本中三、四本があの小さな的に当たるようにしてほしい。最初は難しいかもしれないが大丈夫だ!練習すればすぐにできるようになる!さぁ、早速だがやってみようか!」
来たぞ!僕の見せ場‼弓なら調子がいいときは四本的に当たる!これは僕の勝ちなのでは!
意気揚々と射場に立つ。心を落ち着かせることと一直線に矢が行くことを意識して集中する。
頑張れ!!いいとこ見せたいだろ僕!
タン タン タン タン タン
やばい今すごい手が震えてる。五本全部的の中央に当てちゃった。過去最高記録をここで更新。まさかの。ニヤけてしまいそうになる顔を抑えて澄まし顔になるよう全身全霊を注ぐ。気を抜いたら、ひゃっほーうって叫びそうになるからね。でもそれだと締まらない!ここはクールを装ってこそ「カッコいい!」につながるのだ!きっと!
さり気なく周りの人たちを見る。みんな唖然としてる。先生までも目が点になってる。これは作戦成功といっても過言じゃない‼あくまでも表面的には澄まし顔を心がけて、心の中でガッツポーズを決める。後は授業終わりに誰かが話しかけてくれるのを待つだけ!明るい未来にわっくわくるんるんが止まらない!
そして今僕は教室の扉の前でとてつもなく緊張している。緊張しすぎて指一本動かない。教室に入ろうとしない僕をシンとリーンが不思議そうにこちらを見ている。
「どうしたの?入らないの?」
「ん?緊張してんのか?」
あぁ、がちがちに固まって返事すらできない…。
いつまでたっても一向に動かない僕に痺れを切らした二人が半ば強引に僕を中に引き入れる。
その瞬間、教室の音という音が止まる。
視線が一気に集まってくるのが分かる。驚愕の目。好奇の目。懐疑の目。品定めをする目。冷ややかな目。目という目が僕達を見てる。
だから初めての場所は苦手なんだ。僕だって周りからどういう評判を受けているのかぐらい知ってる。覚悟はできてるつもりだったんだけど、昔からこの感じは慣れない…。冷や汗が止まらない。逃げたい。怖い。
あ、ダメかもしんない。
その時シンとリーンがのぞき込んでくる。
この感じは慣れないんだけど昔と違って今はシンとリーンがいてくれる。だからかな?安心して前に進むことができる気がする。うん、二人の顔を見たら緊張も少し和らいだ。
「お、おはようございます…。」声、震えてなかったかな?
「おっはよー!ございます‼」
「ごきげんよう。」僕に続いて二人も挨拶する。不思議と視線が気にならなくなる。大丈夫。大丈夫だ。
教室の隅で三人で話しているとチャイムが鳴った。しばらくして先生と思われる人が入ってくる。身長高いんだろうけど猫背が台無しにしていて、見た目はなんというか…若干、ぼさっ?というか、もさっ?としてる。
でも僕この人のことを知ってるんだ。風属性の魔術の第一人者らしくてよく僕の家に来て兄と何か話してたから見たことあるんだ。全然話したことはないけど。名前はたしか、
「シャーマール=フォルストだ。よろしく。」
そうだ、シャーマールだ。シャーマール先生。
「俺は魔術系の授業を大体持っている。魔術に関して質問があれば何でも聞け。」
兄の話によるとシャーマール先生は魔術の使えないような人でも使えるような装置を作ろうとしているらしい。
例えばこの世界に転移魔法というものがあるんだけど、それは魔力がないとできないし、魔力があっても魔術式を知ってないとできない。でもこの先生は風属性の魔術を一個の魔石に込めてそれを源とした装置を作り、誰でも転移魔法を使えるようにと研究しているらしい。僕も転移魔法が使えないから正直、滅茶苦茶興味ある。使ってみたい。
一限目の必修の魔術学(座学)を終えて二限目の武術(実践)が始まる前の休憩時間。さてところ変わってここは学園の体育館。この授業は、僕みたいに魔力が無いから受けてるって子もいるけど、やっぱり貴族だから最低限受けておくっていう子が大半で、そういう子たちにとって魔力のない僕は格好の的だったりする。さっきからシンやリーン、武術の先生がいないことをいいことにひそひそと陰口を言われてる。僕これでも一応公爵なんだけどな。うぅ、数の暴力…。肩身が狭い…。
そう僕は今現在絶賛ぼっち中である。シンとリーンは魔術専攻で、僕は武術専攻。この学園のシステム上僕は実践授業の間、二人と別のクラスで受けなければならないので、自然とぼっちになってしまう。ぼっちになったところで周りからの視線は変わらない。むしろ二人がいなくなった分痛いほど感じるようになった。居たたまれないってこういう感じなんだなぁと体感する。でも僕の得意な武術だからさっきよりかは心に余裕がある。我ながら単純だなとは思うけどね。なにより僕には作戦がある。この実践授業でカッコいいところをたくさん皆に見せて評判を改めるんだ!そして友達を作る!
要するに、実践授業でカッコいいところを見せる→「アルス君って実はすごくかっこいいんだね!」→「友達になってください!」
というわけだ。我ながら完璧な作戦だと思う。
先生が体育館に入り、授業の内容や一年の見通しの話もそこそこに武術の実践授業が始まる。今学期は弓を扱うらしい。先生が前でお手本を見せる。視線の先には四角形の小さな的。五本のうち三本が的の中央に、残り二本が中央とまではいかないがその周辺に刺さる。おぉーと声があがる。
「最終的には馬に乗った状態でもこのように五本中三、四本があの小さな的に当たるようにしてほしい。最初は難しいかもしれないが大丈夫だ!練習すればすぐにできるようになる!さぁ、早速だがやってみようか!」
来たぞ!僕の見せ場‼弓なら調子がいいときは四本的に当たる!これは僕の勝ちなのでは!
意気揚々と射場に立つ。心を落ち着かせることと一直線に矢が行くことを意識して集中する。
頑張れ!!いいとこ見せたいだろ僕!
タン タン タン タン タン
やばい今すごい手が震えてる。五本全部的の中央に当てちゃった。過去最高記録をここで更新。まさかの。ニヤけてしまいそうになる顔を抑えて澄まし顔になるよう全身全霊を注ぐ。気を抜いたら、ひゃっほーうって叫びそうになるからね。でもそれだと締まらない!ここはクールを装ってこそ「カッコいい!」につながるのだ!きっと!
さり気なく周りの人たちを見る。みんな唖然としてる。先生までも目が点になってる。これは作戦成功といっても過言じゃない‼あくまでも表面的には澄まし顔を心がけて、心の中でガッツポーズを決める。後は授業終わりに誰かが話しかけてくれるのを待つだけ!明るい未来にわっくわくるんるんが止まらない!
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