3 / 104
幕開け
2
しおりを挟む
馬車の扉が開くまで僕を抱きしめて離さなかった兄と別れて僕は講堂の入口に向かう。既にシンは待っていた。シンはフィンオール侯爵家の一人息子でかなりの情報通だ。
「お待たせ。」
「…なんか屋敷以外の場所でアルの姿見るの新鮮だな。」
「まぁ僕も、外出ること自体が久しぶりだからね。」
「今日アルの兄ちゃんは?」
「さっきまで一緒だったけど…ほら会長だから。」
そう、僕の兄はこの学園の生徒会長でもあるのだ。すごいだろ!
「そっか、じゃあもう中にいるのか。」
「多分ね。リーンは?」
「リーンも中。周りの貴族さん達に挨拶中。」
リーンはアシュレ侯爵家の3人姉妹の末っ子。アシュレ家は貴族界の中で1番顔が広いと言っても過言ではない。
僕ら3人は小さい頃からの幼馴染なのだ。
「あ、そういえばお前の兄さんで思い出したけど、この学園に平民の子が来るんだよ。」
「それがうちの兄となんの関係があるの?」
「いや、どうやらその子光属性操れるらしいんだ。」
「あ、そう言うことか。お兄ちゃんと一緒ってことね。てか、よく知ってるねそんなこと。さすがは情報通というか。」
「結構有名な話だよ。そんな調子じゃ第3王子も同じ学年って知らないな?」
「いや、それはお父さんからほんのり聞いたというか…。」
「まぁもっと他人に関心もてって。でさ、もう1人話題の人がいてこっちの方がもっと有名。」
「だれ?」
「シャンブルク公爵家んとこのリュークさんも入学するんだってよ。」
「シャンブルク公爵家?リューク?」
「いや、さすがに交友関係狭すぎるお前でもそれは知ってるだろ!シャンブルク家はお前んとこの家の対抗馬で、リュークさんはそこの息子。あの、闇属性が得意な人だって。」
リューク=シャンブルク。
思い出した。あの全体的に黒い人か。小さい頃に1度見かけたきりだったから忘れてたな。
シャンブルク家は昔からシューベルト家と何かとぶつかっているところである。(僕は全く関わってないんだけどね。)確か今までは貴族界において、勢力的にはシューベルト家の方が優勢だったけど、このリュークって人がこれまた扱える人の少ない闇属性の魔術を最大限まで引き出せちゃって(しかもその限度も日々更新しているらしい)シューベルト家と肩を並べれる以上に勢力を盛り返したということで昔おじいちゃんが焦っていた気がする。
光を持するシューベルト家と闇を持するシャンブルク家。しばらくは話題になってたっけ?(まあ僕はびっくりするくらい関与してないんだけどね。)
「あ、あの人!!」
と、シンが指を指した先には何年か前に見た時と変わらず、黒い髪に黒い目更に黒いローブをまとった全身黒人間ことリューク=シャンブルクがいた。同い年とは思えぬ風貌に、溢れ出すただならぬオーラ。その人の登場で周りの空気がぴんっと張り詰めた気がする。
あの鋭い目と目が合ったら凍りついちゃうだろうなぁなんて考えていると一瞬、ほんの一瞬だけ目が合った。
あれ?息が苦しい。吸えないし、吐き出せない。心臓の鼓動が早くなる。耳のそばで心臓が鳴っているのかと思うくらい鼓動がうるさい。頭もグラグラしてきた。そのまま立っていることも出来ずその場に座り込んでしまう。
「おい、大丈夫か?急にどうした!?」とシンが話しかけてくれる。
「アル!深呼吸しろ!深呼吸!!」
シンが呼吸するタイミングに合わせて僕は何度も深呼吸をする。
徐々に落ち着いていく呼吸。
「...も、もう大丈夫。」
まだ鼓動は少し早いけど、じきに落ち着くはずだ。大丈夫。
もう一回だけ深く呼吸をして立ち上がる。
「落ち着いた。ありがとう。」
「医務室行く?」
「それほど酷かったわけじゃないし、もう落ち着いてきてるから大丈夫。それに僕達入学式遅れちゃう。」
「うわ!ほんとだ!!急ごう!」
周りを見渡すと僕達以外人はほとんどいなかった。
「終わったー。疲れたー。いやーどこの学園も学長の話は長いもんなんかな?」
入学式は無事に終了した。始まる前にあった発作も起こることなく無事に終了した。式の途中兄が在校生代表として祝辞を述べていたけど、なんか、かっこよかった。家とは違うキリッとした姿にドキドキしたのは内緒。
「あんた、ほとんど寝てたじゃん。」今度はリーンも一緒だ。僕達は3人で一緒のベンチに座っている。
「だってすんごい話長いんだもん。お経聞いてんのかと思ったわ。それよりさ、見た?噂の平民の子。」
「見た!天使かと思うくらい可愛かった!!」
「天使って、天使ならここにもいるだろ!」と言って僕を指すシン。
「え?」びっくりする僕。
「冗談!!」にかっと笑って手を振るシン。冗談...。
「確かにアルはパーツは整ってるけどなんか地味。でもあの子はなんというか...輝いていた...!!本物の天使のように!!…仲良くなれないかな?」
「地味って、ちょっと傷つくな…。」
「光属性だから輝いてんじゃね?てかさ、仲良くなるならぜってーあの黒人間だろ!」
「あ!リューク=シャンブルクさん!」覚えたぞ!
「あーあのすこぶる黒い人?」
「なんかカッコいいじゃん!落ち着いてるけど堂々としてるオーラ!!男の中の男みたいな感じがさ!」拳を握るシン。
「えー?世界は自分中心に回ってるって考えてそうだからヤダ。私はやっぱりあの天使の子がいい!みた?あの透き通るような髪の毛。輝く瞳。あれを天使と言わずしてなんというの?あぁ名前とか調べとかなくちゃ!」
「はぁ?ぜってー黒人間の方がいいって!!アルはどう思う?」
「えぇ…。どっちにせよ僕には関わりを持つことない人間だと思う。だってそもそも僕は魔力ないし。あの2人はとてつもない魔力を持っているから有名なのであって、僕には遠い存在だよ。」
「まぁな。」
「でもひょんなことから、っていうこともあるし分かんないよ?」
「そーかな?でも可能性は低い気がする。」
「ね、ねぇ。」リーンが呟く。
「あ、あれ噂の…」瞠目した目線の先には
あの平民の子がいた。
リューク=シャンブルクとは違う意味で空気を一変させたその子。天使の生まれ変わりかと思うくらい可愛らしい見た目。颯爽と歩く後を花が咲いていっても違和感はない。周囲にホンワカとした空気が流れる。
その子がハンカチを落とした。その子は全く気付く様子もなく、歩みを止めない。ましてや周りの人達はその子に見蕩れて誰も気づかない。僕はおもむろに立って、その子のハンカチを拾う。
「あの!!これ落としましたよ?」
これが僕達の出会い。
「お待たせ。」
「…なんか屋敷以外の場所でアルの姿見るの新鮮だな。」
「まぁ僕も、外出ること自体が久しぶりだからね。」
「今日アルの兄ちゃんは?」
「さっきまで一緒だったけど…ほら会長だから。」
そう、僕の兄はこの学園の生徒会長でもあるのだ。すごいだろ!
「そっか、じゃあもう中にいるのか。」
「多分ね。リーンは?」
「リーンも中。周りの貴族さん達に挨拶中。」
リーンはアシュレ侯爵家の3人姉妹の末っ子。アシュレ家は貴族界の中で1番顔が広いと言っても過言ではない。
僕ら3人は小さい頃からの幼馴染なのだ。
「あ、そういえばお前の兄さんで思い出したけど、この学園に平民の子が来るんだよ。」
「それがうちの兄となんの関係があるの?」
「いや、どうやらその子光属性操れるらしいんだ。」
「あ、そう言うことか。お兄ちゃんと一緒ってことね。てか、よく知ってるねそんなこと。さすがは情報通というか。」
「結構有名な話だよ。そんな調子じゃ第3王子も同じ学年って知らないな?」
「いや、それはお父さんからほんのり聞いたというか…。」
「まぁもっと他人に関心もてって。でさ、もう1人話題の人がいてこっちの方がもっと有名。」
「だれ?」
「シャンブルク公爵家んとこのリュークさんも入学するんだってよ。」
「シャンブルク公爵家?リューク?」
「いや、さすがに交友関係狭すぎるお前でもそれは知ってるだろ!シャンブルク家はお前んとこの家の対抗馬で、リュークさんはそこの息子。あの、闇属性が得意な人だって。」
リューク=シャンブルク。
思い出した。あの全体的に黒い人か。小さい頃に1度見かけたきりだったから忘れてたな。
シャンブルク家は昔からシューベルト家と何かとぶつかっているところである。(僕は全く関わってないんだけどね。)確か今までは貴族界において、勢力的にはシューベルト家の方が優勢だったけど、このリュークって人がこれまた扱える人の少ない闇属性の魔術を最大限まで引き出せちゃって(しかもその限度も日々更新しているらしい)シューベルト家と肩を並べれる以上に勢力を盛り返したということで昔おじいちゃんが焦っていた気がする。
光を持するシューベルト家と闇を持するシャンブルク家。しばらくは話題になってたっけ?(まあ僕はびっくりするくらい関与してないんだけどね。)
「あ、あの人!!」
と、シンが指を指した先には何年か前に見た時と変わらず、黒い髪に黒い目更に黒いローブをまとった全身黒人間ことリューク=シャンブルクがいた。同い年とは思えぬ風貌に、溢れ出すただならぬオーラ。その人の登場で周りの空気がぴんっと張り詰めた気がする。
あの鋭い目と目が合ったら凍りついちゃうだろうなぁなんて考えていると一瞬、ほんの一瞬だけ目が合った。
あれ?息が苦しい。吸えないし、吐き出せない。心臓の鼓動が早くなる。耳のそばで心臓が鳴っているのかと思うくらい鼓動がうるさい。頭もグラグラしてきた。そのまま立っていることも出来ずその場に座り込んでしまう。
「おい、大丈夫か?急にどうした!?」とシンが話しかけてくれる。
「アル!深呼吸しろ!深呼吸!!」
シンが呼吸するタイミングに合わせて僕は何度も深呼吸をする。
徐々に落ち着いていく呼吸。
「...も、もう大丈夫。」
まだ鼓動は少し早いけど、じきに落ち着くはずだ。大丈夫。
もう一回だけ深く呼吸をして立ち上がる。
「落ち着いた。ありがとう。」
「医務室行く?」
「それほど酷かったわけじゃないし、もう落ち着いてきてるから大丈夫。それに僕達入学式遅れちゃう。」
「うわ!ほんとだ!!急ごう!」
周りを見渡すと僕達以外人はほとんどいなかった。
「終わったー。疲れたー。いやーどこの学園も学長の話は長いもんなんかな?」
入学式は無事に終了した。始まる前にあった発作も起こることなく無事に終了した。式の途中兄が在校生代表として祝辞を述べていたけど、なんか、かっこよかった。家とは違うキリッとした姿にドキドキしたのは内緒。
「あんた、ほとんど寝てたじゃん。」今度はリーンも一緒だ。僕達は3人で一緒のベンチに座っている。
「だってすんごい話長いんだもん。お経聞いてんのかと思ったわ。それよりさ、見た?噂の平民の子。」
「見た!天使かと思うくらい可愛かった!!」
「天使って、天使ならここにもいるだろ!」と言って僕を指すシン。
「え?」びっくりする僕。
「冗談!!」にかっと笑って手を振るシン。冗談...。
「確かにアルはパーツは整ってるけどなんか地味。でもあの子はなんというか...輝いていた...!!本物の天使のように!!…仲良くなれないかな?」
「地味って、ちょっと傷つくな…。」
「光属性だから輝いてんじゃね?てかさ、仲良くなるならぜってーあの黒人間だろ!」
「あ!リューク=シャンブルクさん!」覚えたぞ!
「あーあのすこぶる黒い人?」
「なんかカッコいいじゃん!落ち着いてるけど堂々としてるオーラ!!男の中の男みたいな感じがさ!」拳を握るシン。
「えー?世界は自分中心に回ってるって考えてそうだからヤダ。私はやっぱりあの天使の子がいい!みた?あの透き通るような髪の毛。輝く瞳。あれを天使と言わずしてなんというの?あぁ名前とか調べとかなくちゃ!」
「はぁ?ぜってー黒人間の方がいいって!!アルはどう思う?」
「えぇ…。どっちにせよ僕には関わりを持つことない人間だと思う。だってそもそも僕は魔力ないし。あの2人はとてつもない魔力を持っているから有名なのであって、僕には遠い存在だよ。」
「まぁな。」
「でもひょんなことから、っていうこともあるし分かんないよ?」
「そーかな?でも可能性は低い気がする。」
「ね、ねぇ。」リーンが呟く。
「あ、あれ噂の…」瞠目した目線の先には
あの平民の子がいた。
リューク=シャンブルクとは違う意味で空気を一変させたその子。天使の生まれ変わりかと思うくらい可愛らしい見た目。颯爽と歩く後を花が咲いていっても違和感はない。周囲にホンワカとした空気が流れる。
その子がハンカチを落とした。その子は全く気付く様子もなく、歩みを止めない。ましてや周りの人達はその子に見蕩れて誰も気づかない。僕はおもむろに立って、その子のハンカチを拾う。
「あの!!これ落としましたよ?」
これが僕達の出会い。
0
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる