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第30話
不幸
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「今日は娘さんは居ませんか」
話の流れで聞いてみた。奥さんは急に声を落とした。
「このあいだ、友だちに不幸があったんですよ。それから、ふさぎ込んじゃって。可哀想に」
頭の中がくらっとした。奥さんは誰のことを可哀想と言っているのだろう。
「そうでしたか」
また言葉を失った。黙っているのが正しい気がした。奥さんはいつもの笑顔だったが、泣き出しそうにも見えた。帰りがけにまたブルーベリー酢を1本買ってくれた。値段は前回と同じにした。
その後2件回ったが少しも営業に身が入らなかった。あぜ道に車を止めて辺りを見回した。山、田んぼ、林、古民家。ジオラマの風景みたいだ。のどかな村と女の子の死。そんなことがあるのだろうか。みんながぼくの知らないことを知っている。知らない所で物事は進んでいく。
話の流れで聞いてみた。奥さんは急に声を落とした。
「このあいだ、友だちに不幸があったんですよ。それから、ふさぎ込んじゃって。可哀想に」
頭の中がくらっとした。奥さんは誰のことを可哀想と言っているのだろう。
「そうでしたか」
また言葉を失った。黙っているのが正しい気がした。奥さんはいつもの笑顔だったが、泣き出しそうにも見えた。帰りがけにまたブルーベリー酢を1本買ってくれた。値段は前回と同じにした。
その後2件回ったが少しも営業に身が入らなかった。あぜ道に車を止めて辺りを見回した。山、田んぼ、林、古民家。ジオラマの風景みたいだ。のどかな村と女の子の死。そんなことがあるのだろうか。みんながぼくの知らないことを知っている。知らない所で物事は進んでいく。
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