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第6話
ウェディングケーキ
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早々と点検が終わりおかみさんを呼ぼうとした時、薄暗い壁際に目が行った。
包装紙や木製のばんじゅうが積んである。その中に、ガラスケースに入った3段重ねのウェディングケーキが見えた。食べられない装飾用のクリームがくすんで変色している。何年も動かしていないらしく、ケースの上には
埃がかぶっていた。
「お薬使ってた?」
いつの間にかおかみさんが近くにいた。
「いえ、今回は大丈夫です」
今回も、と言いそうになった。
「今は置き薬も使わないからね」
嫌な予感がする。
無意識に話を変えようと思ったのか、単に話したかったのかわからない。考える間もなく喋っていた。
「あそこにあるのはウェディングケーキですか」
おかみさんはちょっと驚いて振り返った。
「あれね。前にお父さんが作っていたのよ。もう、やってないけどね」
女の子がはにかんで笑ったように見えた。
変な間が空いた。
「ぼくもこの仕事をする前は、ケーキ屋さんで働いていたんです」
おかみさんはいつもより明るく「へえ、そうなの」と言ってくれた。
「いいお仕事ですよね」
ぼくはなんだか決まりが悪くなった。
もう帰らなくてはいけない。
「お薬は置かせて頂くだけで励みになります。また、よろしくお願いいたします」
お辞儀をして、逃げるようにお店を出た。帰り際、チラッとおかみさんと目が合った。なぜか微笑んでいるように見えた。
包装紙や木製のばんじゅうが積んである。その中に、ガラスケースに入った3段重ねのウェディングケーキが見えた。食べられない装飾用のクリームがくすんで変色している。何年も動かしていないらしく、ケースの上には
埃がかぶっていた。
「お薬使ってた?」
いつの間にかおかみさんが近くにいた。
「いえ、今回は大丈夫です」
今回も、と言いそうになった。
「今は置き薬も使わないからね」
嫌な予感がする。
無意識に話を変えようと思ったのか、単に話したかったのかわからない。考える間もなく喋っていた。
「あそこにあるのはウェディングケーキですか」
おかみさんはちょっと驚いて振り返った。
「あれね。前にお父さんが作っていたのよ。もう、やってないけどね」
女の子がはにかんで笑ったように見えた。
変な間が空いた。
「ぼくもこの仕事をする前は、ケーキ屋さんで働いていたんです」
おかみさんはいつもより明るく「へえ、そうなの」と言ってくれた。
「いいお仕事ですよね」
ぼくはなんだか決まりが悪くなった。
もう帰らなくてはいけない。
「お薬は置かせて頂くだけで励みになります。また、よろしくお願いいたします」
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