1 / 1
罰
しおりを挟む
ある所に、精神が病んでしまった女がいました
女には、訳もなく沸き上がる怒りや悲しみに飲み込まれ、錯乱し、泣き叫んでしまう事が度々おこります
自分が自分でなくなってしまう病気なのです
女には男の子が一人いて、心からその子を愛していました
けれど一度、たった一度だけ、男の子に手を上げてしまった時がありました
愚かな女はその時の男の子の顔を、きっと一生忘れないでしょう
その時の手の痛み、心の痛みがいつまでも残り、一生苦しみ続けるでしょう
それが、愛する弱きものへ手を上げてしまった事の罰なのです
それ以来、女は怒りを自分自身に向け始めました
自分の足を、腕を、力任せに殴るのです
頭を壁に打ち付け、腹に爪をつきたて、感情の波が引くのを待つのです
そんな時、男の子はいつも懇願します
「ぼくをぶって! ママが痛いのはいや!」
そんな事を言わせるために産んだのではないのです
そんな思いをさせるために育てているわけではないのです
愛しているから、幸せになってもらいたいから
誰よりも何よりも、ましてやおかしくなってしまった自分などよりも、ずっとずっと大切だから
なのに……
男の子はいつも言います
「ママ大好き。ぼくはママ大好き」
泣き崩れる女の頭を撫でるのです
小さな小さな腕で、抱き締めるのです
男の子の優しさが女をますます苦しめ、罪悪感ばかりがつのります
ああ神様
どうかどうか普通の暮らしをさせてください
心がいつでも平穏で過ごせるだけで良いのです
私はもうおかしくなっていくばかりなのですか?
それならばこの子の前からいなくなってしまいたい
もうあなたを傷つけたくないの……
女には、訳もなく沸き上がる怒りや悲しみに飲み込まれ、錯乱し、泣き叫んでしまう事が度々おこります
自分が自分でなくなってしまう病気なのです
女には男の子が一人いて、心からその子を愛していました
けれど一度、たった一度だけ、男の子に手を上げてしまった時がありました
愚かな女はその時の男の子の顔を、きっと一生忘れないでしょう
その時の手の痛み、心の痛みがいつまでも残り、一生苦しみ続けるでしょう
それが、愛する弱きものへ手を上げてしまった事の罰なのです
それ以来、女は怒りを自分自身に向け始めました
自分の足を、腕を、力任せに殴るのです
頭を壁に打ち付け、腹に爪をつきたて、感情の波が引くのを待つのです
そんな時、男の子はいつも懇願します
「ぼくをぶって! ママが痛いのはいや!」
そんな事を言わせるために産んだのではないのです
そんな思いをさせるために育てているわけではないのです
愛しているから、幸せになってもらいたいから
誰よりも何よりも、ましてやおかしくなってしまった自分などよりも、ずっとずっと大切だから
なのに……
男の子はいつも言います
「ママ大好き。ぼくはママ大好き」
泣き崩れる女の頭を撫でるのです
小さな小さな腕で、抱き締めるのです
男の子の優しさが女をますます苦しめ、罪悪感ばかりがつのります
ああ神様
どうかどうか普通の暮らしをさせてください
心がいつでも平穏で過ごせるだけで良いのです
私はもうおかしくなっていくばかりなのですか?
それならばこの子の前からいなくなってしまいたい
もうあなたを傷つけたくないの……
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
賢二と宙
雨宮大智
児童書・童話
中学校3年生の宙(そら)は、小学校6年生の弟の賢二と夜空を見上げた⎯⎯。そこにあるのは、未だ星座として認識されていない星たちだった。ふたりの対話が、物語の星座を作り上げてゆく。流れ星を見た賢二はいう。「願い事を三回言うなんて、出来ないよ」兄の宙が答えた。「いつでもそうなれるように、準備しておけってことさ」。
【旧筆名、多梨枝伸時代の作品】
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
りこちゃんせんせい
やぼ
児童書・童話
さくらんぼ児童クラブの子ども達と新米りこちゃんせんせいの楽しかったり悲しかったりケンカしたりの毎日の中で、ある時、不思議なおじいさんが持ってきた不思議な
植物、赤い花が咲き始めると、さくらんぼ児童クラブに不思議なことが起こりはじめます。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる