トゥルルルル……!

羽黒

文字の大きさ
上 下
17 / 25

サバンナと殺害

しおりを挟む
 次の留守電が19日最後のメッセージになる。
 何が入っているのか緊張しながら、俺は画面をタッチした。


 6月19日 23時43分。

『あのぉ、5時頃に中華そば頼んだ渡辺ですけど、まだですか?』

 俺とカンタの声は綺麗に重なり、渡辺へツッコミが入った。



 6月20日 00時12分。

『もしもしぃ、依子?』

「ああ、またタカシからの電話だ」

 呑気にカンタは言うが、タカシはのっぴきならぬ状況へ追いやられつつあるらしい。
 電話の声は、すっかり怯え切っており、涙混じりで必死に依子へ訴えていた。

『お前さ、何で連絡付かねぇの……。木村さん、スナックの事で話があるって。これ以上待たせるのヤベェよ、頼むから連絡くれ。俺達、サバンナにいるからさ……来たら連絡く――』

「また途中で切れたな」

 カンタに頷いて見せたが、頭の中はサバンナと言うワードでいっぱいであった。

 頭には昔テレビで見た大草原が浮かんでいる。

 記憶が正しければ、サバンナとはアフリカ・南アフリカなどの熱帯、亜熱帯の草原地帯である。
 動物園でもおなじみのライオンやゾウ、シマウマ、キリン、サイが生息しており、動物にとっての楽園。動物好きにとっては天国だ。

 俺はガゼルやヌーなどの草食動物が草を食むところを、じっと低く身を屈めたライオンやチーターが狙っている姿を想像した。

 ……問題は、その中にどうしてタカシが混ざっているのか、だ。

 疑問を残しつつも、次の録音を再生させるとタカシは息を荒く切らせながら話をしていた。

『依子ぉ、俺。やっちまったよ……咄嗟に、咄嗟だったんだ。わざとじゃねぇ、やろうと思ってやったんじゃないんだ』

 まるで罪を言い逃れようとする子供のような台詞であった。

『木村さん、殺しちまった』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冀望島

クランキー
ホラー
この世の楽園とされるものの、良い噂と悪い噂が混在する正体不明の島「冀望島(きぼうじま)」。 そんな奇異な存在に興味を持った新人記者が、冀望島の正体を探るために潜入取材を試みるが・・・。

実体験したオカルト話する

鳳月 眠人
ホラー
夏なのでちょっとしたオカルト話。 どれも、脚色なしの実話です。 ※期間限定再公開

【完結】山梔子

清見こうじ
ホラー
山梔子;くちなし 花言葉:幸福 天国に咲く花とされ、幸運を呼び込むとされる。 けれど、その香りが呼び込むのは、幸運とは限らない………。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「NOVEL DEYS」でも公開しています

吸収

玉城真紀
ホラー
この世には説明がつかない事が沢山ある。その中の一つ「胎児」に焦点を当ててみよう。

心の悪魔は真夜中に呟く…

ゆきもと けい
ホラー
まるで路地裏の公衆電話のように、誰にも気づかれない店がある。夜に現れるというその店は、ある条件を満たした者だけが見つけることができる。その条件とはいったい何か…その店を見つけた者はどうするのか…最後はどいう結末になるのか…5話完結です。読んで頂けたら幸いです。

怪異少女は愛が欲しい

偽物道化師@アルファポリス
ホラー
【恋】それは、愛情。 【恋】それは、言葉にできない思い。 【恋】それは、病気だと思っていまう苦しさ。 そんな、【恋心】は果たして人間以外の存在においても起こる感情なのでしょうか? A.だったら創りましょう、その物語を!!by.作者 恋なんて一度もしたことのない作者が書く、人外(妖怪、霊、化け物.etc..)と人間【恋(笑)】のホラー物語。 #ホラー #男主人公 #怖くない?

暗闇で音がする

ツヨシ
ホラー
灯りの点いていない真っ暗な部屋から毎晩音が聞こえてくる。

やわらかなつの

遥々岬
ホラー
鬼のツノは柔らかい。 イラストから生まれたお話です。 怖い話、ほっこりする話、色々

処理中です...