トゥルルルル……!

羽黒

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タカシと依子

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 俺はカンタの顔を見ながら、おどけて見せた。

「まさか俺達の知ってるタカシだったりして。なんか声も似てる気がするし」

「タカシの声はもっと高かっただろ?」


『あのよ依子? 実は今夜パーティーやるんだけど、スナック持ってきてくんねぇか? 2つ3つあれば足りると思うから。そう言うわけで頼むわ。電話見たら――』

 メッセージは途中で切れていた。

 冷蔵庫から麦茶を持って来たカンタは、コップに注ぎながら「リア充かよ」と文句を言った。

「世の中、俺やお前みたいな非リアの方が少数派なんだ。そう腐るなよ」

「スナックって、わざわざ留守電にメッセージ残してまで頼みたい事? コンビニとかいくらでもあるんだし、自分で買ってくりゃいいじゃん」

 一々彼はもっともである。

 「だよなぁ」と俺は相槌を打ちながら、頭の中を軽く整理した。


 この携帯の持ち主が『依子』と言う名前だとわかっただけでも、留守電を確認した甲斐があったと言う物である。

 奇しくも友人の名が『タカシ』であった点は奇妙な縁を感じないでもないが、タカシなんて名前は珍しくもなんともない。
 極々有り触れた名前であると、俺は深く考えなかった。

 依子が無事にスナックを買って、タカシへ渡せたのかだけ、気にしながら俺は次の音声を再生させた。

 6月19日 18時15分。

『あのぉ、さっき中華そばを頼んだ渡辺ですけど、ずっと待ってるんですが何時になったらくるんでしょうか?』

「催促かよ!」

 俺が突っ込むと、カンタは笑った。
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