私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが

雪丸

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16.このままで

10話

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「……もういいです! あなたが甘っちょろい理解不能の人間だということはよくわかりました! 今後はもう私に関わらないでください!!」

「私から関わったことはない気がするのですが……」

 私は顔を真っ赤にして怒るローズマリーさんに戸惑いながら言葉を返す。全体的にそれは私のセリフじゃないだろうか。

 くるりと背を向けて去って行くローズマリーさんは、一度だけ足を止めると、消え入りそうな声で言った。


「……あなたのことは嫌いですけれど、卑怯なことをしたことは、その……謝りますわ。申し訳ありませんでした」

「え……」

「でも、嫌いなのは変わりませんから! さようなら!!」

「あっ、ローズマリーさん!」

 呼びかけるけれど、ローズマリーさんは、振り返ることなく行ってしまった。

 私は何とも言えない思いでただ、彼女の後ろ姿を見ていた。


***

 そんな風に色々騒動はあったけれど、数ヶ月も経つとすっかり元の日常が戻って来た。

 ローズマリーさんはあれから姿を見かけていないけれど、人づてに聞いた話では学園に戻って来たらしい。

 友人たちにはローズマリーさんやミアがまた何かしてくるのではないかと心配されてしまったけれど、私は笑って大丈夫だと言っておいた。

 ミアには何かすれば魅了魔法の件を公にすると忠告してあるし、ローズマリーさんはあの様子だと、もう何かしてくる気はないと思うから。


「あぁ、エミリアは心が広過ぎる。あんなことをされて許してやるなんてまるで女神のようではないか。俺は心配だ」

 今日もうちまで迎えに来たクロード様は、私を背中からぎゅっと抱きしめながら、真面目な声で言う。
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