私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが

雪丸

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16.このままで

7話

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「ごめん、被害者のエミリアさんの前で」

「いいえ、構いませんわ」

「……あの子には中等部時代、色々相談に乗ってもらったから……。当時、ひどい台風でうちの領地が被害にあって窮乏したことがあったんだ。その時、ロージーは真剣に話を聞いてくれて、支援が受けられそうな場所を必死で探してくれて、すごく救われたんだ。……って、エミリアさんには関係ないことだよね、ごめん」

 レスター様は難しい顔で言った後、再び慌て顔になって謝る。

 正直、ローズマリーさんの話を聞いたときは、彼女が一方的にレスター様に好意を抱いているだけのように聞こえてしまったけれど、少なくともレスター様の方でも彼女のことを信頼していたらしい。


「レスター様、本当にお気になさらないでくださいね。レスター様は何も悪くありませんから。それにローズマリーさんとご友人だったのなら、心配なさるのは何もおかしなことではありませんわ」

「……ありがとう、エミリアさん」

 レスター様は少し困ったような笑みを浮かべる。それから遠慮がちに尋ねてきた。


「エミリアさん、山小屋にはクロード様が助けにきたって本当?」

「はい、クロード様ったら私の行動を従者に報告させていたそうなんですよ。呆れてしまいますよね。そのおかげで助かったので今回は文句は言えませんけれど」

 くすくす笑いながら言うと、レスター様は少し切なげな顔になる。

「嬉しそうだね、エミリアさん」

「え?」

「いや、エミリアさんは幸せなんだなって思って。この前、君とクロード様が並んで歩いているのを見かけたよ。クロード様、とても大切そうに君を見ていた。なんだかあの様子を見ていたら、君がクロード様といると幸せじゃないんじゃないかなんて考えて引き離そうとしていた自分が恥ずかしくなっちゃった」

「それは……」

 私は何と言っていいかわからず、レスター様を見る。

「本当にごめんね、エミリアさん。それと……クロード様とお幸せに」

 レスター様は少し寂しげな顔でそう言うと、くるりと背を向けて去って行った。私はその背中を、少し複雑な思いで見送った。
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