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16.このままで
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それからクロード様に抱えられて山を下りた。
私はけがもしていないので、手足をけがしているクロード様に抱えられるのが申し訳なくて何度も降ろして欲しいと言ったけれど、危ないからと聞いてくれなかった。
けれど実際、私にかけられた魔獣を引き付ける魅了魔法はまだ効果が切れていないようで、途中で何度も魔獣が近づいてくる気配がし、危険なことは確かだった。
その度にクロード様が振り切るように道を駆けて行ったので何とか無事に降りられたけれど、私一人ではきっと無事に下りられなかっただろう。
「クロード様、来てくれて本当にありがとうございます……」
クロード様の首にしがみつきながら言ったら、クロード様は「俺がエミリアのことを助けに来るのは当然だろう?」と言ってくれた。なんだか少し嬉しそうな声で。
山の麓につくとクロード様の家の馬車があり、心配そうな顔をしたクロード様の従者さんが迎えてくれた。
なんでもクロード様は昼間にミアと会って嫌な予感がしてからそのままこの山に向かってくれたそうで、従者さんには馬車で後から来るように伝えておいたのだという。
「エミリア、中へ」
「はい」
クロード様は抱えていた私を下ろすと、馬車の扉を開けて入るよう促す。私が中に入ると、クロード様も中へ乗り込んだ。
馬車の中に入ると、危険が過ぎ去ったことを実感し、一気に力が抜ける。
「エミリア、すぐバーンズ家に着くからな」
クロード様はほっと息を吐く私に、労わるように言う。私はうなずいて、恐ろしかった山を後にした。
私はけがもしていないので、手足をけがしているクロード様に抱えられるのが申し訳なくて何度も降ろして欲しいと言ったけれど、危ないからと聞いてくれなかった。
けれど実際、私にかけられた魔獣を引き付ける魅了魔法はまだ効果が切れていないようで、途中で何度も魔獣が近づいてくる気配がし、危険なことは確かだった。
その度にクロード様が振り切るように道を駆けて行ったので何とか無事に降りられたけれど、私一人ではきっと無事に下りられなかっただろう。
「クロード様、来てくれて本当にありがとうございます……」
クロード様の首にしがみつきながら言ったら、クロード様は「俺がエミリアのことを助けに来るのは当然だろう?」と言ってくれた。なんだか少し嬉しそうな声で。
山の麓につくとクロード様の家の馬車があり、心配そうな顔をしたクロード様の従者さんが迎えてくれた。
なんでもクロード様は昼間にミアと会って嫌な予感がしてからそのままこの山に向かってくれたそうで、従者さんには馬車で後から来るように伝えておいたのだという。
「エミリア、中へ」
「はい」
クロード様は抱えていた私を下ろすと、馬車の扉を開けて入るよう促す。私が中に入ると、クロード様も中へ乗り込んだ。
馬車の中に入ると、危険が過ぎ去ったことを実感し、一気に力が抜ける。
「エミリア、すぐバーンズ家に着くからな」
クロード様はほっと息を吐く私に、労わるように言う。私はうなずいて、恐ろしかった山を後にした。
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