私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが

雪丸

文字の大きさ
上 下
126 / 138
15.助け

5話

しおりを挟む
「それにしても、私が今日ローズマリーさんと出かけること、よく知っていましたね」

 何気なくそう言うと、クロード様の肩がびくりと跳ねた。そして、クロード様は気まずそうな顔をこちらに向ける。

「いや、それは何というか……偶然……」

「偶然誰かから聞いたのですか?」

「いや、その……。悪かった! エミリアの動向が気になって、従者に君の予定を逐一調べさせてたんだ!!」

 クロード様はしばらく目を泳がせた後、観念したようにそう言った。

 助けに来てくれたことに感動していたのに、裏でそんなことをしていたなんてと、呆れてしまう。

 けれどそのおかげで助かったわけなので、私は苦笑いで言った。


「……仕方ないですね。そういうことは今回限りにしてくださいね」

「すまなかった……」

「今回はそのおかげで助かりましたから、いいですよ」

 私がそう言うと、クロード様は小声で「悪かった」と至極気まずそうに謝った。そんな態度がおかしくて、つい笑ってしまう。


「クロード様、もう気にしないでください」

「しかし……」

「私こそ、謝らなければなりません。今までひどいことばかり言ってすみませんでした。ミアさんのことだって、クロード様に何か事情があるのはわかったのに、聞こうともしないで……。反省しています」

 そう言って頭を下げると、上からクロード様の慌てた声が降って来た。

「謝らないでくれ、エミリア! ミアの件は俺が全部悪かったんだ! そもそも俺がエミリアにやきもちを焼かせようなんて考えてミアに近づかなければ、つけ込まれることもなかったんだから」

「やきもち? え、クロード様、そのためにミアさんと仲良くしていたんですか?」

「あぁ……。学園に入学してから、エミリアはやたら大人っぽくなって周りからも騒がれ出したから、俺のことなんていつか関心がなくなるような気がして……。でも、俺がミアと一緒にいるのを見たときのエミリアは悲しそうで、俺のことを気にしてくれるのが嬉しかったんだ……」

 クロード様は叱られた子供のように、目を逸らしながら言う。

 そんな理由だったのかと、呆れてしまった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。

ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。 事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

幼馴染だけを優先するなら、婚約者はもう不要なのですね

新野乃花(大舟)
恋愛
アリシアと婚約関係を結んでいたグレイ男爵は、自身の幼馴染であるミラの事を常に優先していた。ある日、グレイは感情のままにアリシアにこう言ってしまう。「出て行ってくれないか」と。アリシアはそのままグレイの前から姿を消し、婚約関係は破棄されることとなってしまった。グレイとミラはその事を大いに喜んでいたが、アリシアがいなくなったことによる弊害を、二人は後に思い知ることとなり…。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...