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15.助け
2話
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***
それから何時間が経っただろうか。
獣の声はどんどん集まって来て、小屋の外を回る気配がする。時折爪でドアをひっかくような音が聞こえてきて、私は体を震わせた。
いくら怯えても、どこにも逃げ場なんかない。ただ小屋の中で獣が入ってこないよう願いながら震えていることしかできないのだ。
ひどく惨めな気分だった。まんまとミアとローズマリーさんに追い詰められているこの状況が悔しい。
その時、突然ドアの方で何かを叩きつける音がした。おそるおそる近づくと、獣がドアに向かって体当たりしているようだった。
ドアは獣がぶつかる度にぎしぎし歪む。何度目かの体当たりでドアと壁の間に隙間ができたのを見て、血の気が引いた。
私は急いでテーブルや椅子を持ってきてドアの前に置く。しかし獣の力は強く、獣がドアに向かって体当たりすると、内側に置いてあるテーブルや椅子まで大きく揺れた。
こんな状態で、助けが来るまで持つのだろうか。
外にいる獣の数はどんどん増えているようなのに、窓から見える景色はまだ夜にもなっていない。両親はまだ私が置き去りにされていることに気づいてもいないかもしれない。
絶望的な気持ちが胸を埋め尽くしていく。
私はここで魔獣に殺されるのだろうか。
一体何のためにそこまで? ローズマリーさんとミアの底知れない悪意が理解できない。
もしかしたら私はもう帰れないのかもしれない。
不安と恐怖で、目に涙が滲む。泣くことしかできない自分が悔しかった。
(こんなことになるなら、クロード様に断られてもいいからちゃんと気持ちを伝えておけばよかったわ……)
この前はせっかくクロード様に本心を伝えようと決意したのに。クロード様に少し距離を置かれたように感じたからって、そのまま逃げてしまった。
弱虫な自分が嫌になる。
たとえクロード様にもう好きじゃなくなったと言われても、言いたいことは言っておけばよかったのだ。
それから何時間が経っただろうか。
獣の声はどんどん集まって来て、小屋の外を回る気配がする。時折爪でドアをひっかくような音が聞こえてきて、私は体を震わせた。
いくら怯えても、どこにも逃げ場なんかない。ただ小屋の中で獣が入ってこないよう願いながら震えていることしかできないのだ。
ひどく惨めな気分だった。まんまとミアとローズマリーさんに追い詰められているこの状況が悔しい。
その時、突然ドアの方で何かを叩きつける音がした。おそるおそる近づくと、獣がドアに向かって体当たりしているようだった。
ドアは獣がぶつかる度にぎしぎし歪む。何度目かの体当たりでドアと壁の間に隙間ができたのを見て、血の気が引いた。
私は急いでテーブルや椅子を持ってきてドアの前に置く。しかし獣の力は強く、獣がドアに向かって体当たりすると、内側に置いてあるテーブルや椅子まで大きく揺れた。
こんな状態で、助けが来るまで持つのだろうか。
外にいる獣の数はどんどん増えているようなのに、窓から見える景色はまだ夜にもなっていない。両親はまだ私が置き去りにされていることに気づいてもいないかもしれない。
絶望的な気持ちが胸を埋め尽くしていく。
私はここで魔獣に殺されるのだろうか。
一体何のためにそこまで? ローズマリーさんとミアの底知れない悪意が理解できない。
もしかしたら私はもう帰れないのかもしれない。
不安と恐怖で、目に涙が滲む。泣くことしかできない自分が悔しかった。
(こんなことになるなら、クロード様に断られてもいいからちゃんと気持ちを伝えておけばよかったわ……)
この前はせっかくクロード様に本心を伝えようと決意したのに。クロード様に少し距離を置かれたように感じたからって、そのまま逃げてしまった。
弱虫な自分が嫌になる。
たとえクロード様にもう好きじゃなくなったと言われても、言いたいことは言っておけばよかったのだ。
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