私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが

雪丸

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14.嫉妬 ミア視点

7話

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 目論見は成功して、レアンの街に行って一泊したことを告げながらエミリアにジャケットを渡すと、彼女はショックを受けたような顔をしていた。

 おかしくて吹き出しそうになるのをこらえ、紙袋に入れたジャケットを押し付ける。

 期待通り、二人の縮んだ距離は、またしても遠のいたように見えた。

 きっとこのままいけば仲違いしてくれるはず。

 作戦がうまく行ったことに満足し、しばらくは楽しい気分でいたけれど、よく見ていると二人はやっぱりお互いを気にしているように思えた。

 このままでは以前と同じように、仲直りしてしまうかもしれない。

 ……小さな波風を立てるくらいでは駄目なのかも。

 いっそ、エミリアが消えてくれたら……。


 私は自分の手をじっと見つめる。私に使える魔法といったら魅了魔法くらいだ。

 私の魅了魔法では好意を増幅させることはできても、完全に相手を操れるわけではない。

 悔しいことに私が仲良くなった騎士や公爵令息たちはエミリアに好感を持っているようだから、陥れるように仕向けるのは難しいだろう。

 考え込んでいると、目の前で小鳥がパンくずをついばんでいるのが見えた。

 何気なく、小鳥に向かって魅了魔法をかけてみる。

 小鳥はふらふらとこちらに近づいてきて、私の足をつついた。

「動物にはかからないのよね……。使い魔みたいに私の言うことを聞くようになったらやりようがあるのに」

 動物には私に対する好意も何もないからか、ただ近づいてくるだけで特に大きな変化は見られない。

 懐いているペットに使ったらまた違うのかもしれないけれど、試したことがないからわからない。

 動物は好きじゃないから、これからも試す気はない。前に数匹のお腹を空かせた様子の野良犬に魅了魔法を試してみたら、集まってきて噛みつかれそうになってひどい目にあったもの。

 ひどい目に……そう考えたところで、ふとおもしろいことを思いつく。

「……これ、使えるんじゃない?」

 相変わらず私の足をつつこうとしている小鳥を避けながら、私は自分のアイデアに口元を緩ませる。

 いいことを思いついたかもしれない。でも、実行するには誰か協力者を見つけないと。
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