私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが

雪丸

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13.憎しみ

9話

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「魅了魔法を知っていますよね? 人々を虜にできる、限られた人間しか使えない特別な魔法です。その液体には魅了魔法を応用した魔法がかかっているんです」

「ローズマリーさん、魅了魔法が使えたんですか……?」

「まさか。私にはそんな能力ありません。魔法をかけたのはミアさんです」

「ミアさん……?」

 突然出てきた名前に頭が混乱する。ミアとは、クロード様と仲良くしていたあのミアだろうか。私を散々苦しめた……。

 けれどローズマリーさんとミアの存在が繋がらず、私はただ彼女を見つめることしかできない。

「ミアさんにね、エミリア様を消すのに協力して欲しいって頼まれたんです。自分では警戒されるから、うまくエミリア様に近づいて欲しいと。うまくいってよかったですわぁ」

「初めからそのつもりで近づいたんですか……?」

「それ以外に理由があると思いまして?」

 ローズマリーさんはくつくつ笑いながら言う。

「ミアさんは子供の頃から魅了魔法を使えたそうで、今ではそれを応用した魔法も使えるそうですわ。たとえば、人以外のもの……たとえば魔獣なんかを引き付けたりもできるらしいのです」

「え……?」

 その言葉に一気に血の気が引く。胸を濡らす青い液体が、やけにおどろおどろしく見えた。

 青ざめる私を見て、ローズマリーさんは楽しげに言う。


「そのうち山の奥から魔獣が集まってくるでしょうね。あ、今から服を脱いだって無駄ですよ? その液体、少しでも皮膚につけばそうそう落ちないように作ってありますから」

「……あなたの指にも液体がかかったんじゃないですか」

 混乱する頭を鎮め、何とかそう言うと、ローズマリーさんはおかしそうに笑う。


「私は問題ありませんわ。エミリア様専用にかけられた魔法ですもの。あの液体にはエミリア様がターゲットになるよう、あなたの髪が混ぜ込んであったんです。心当たりありませんか?」

 ローズマリーさんにそう言われ、ふとミアの不可解な行動が頭に浮かぶ。

 私にお詫びがしたいと、やたら馴れ馴れしく腕を絡めてきたミア。彼女は私が数回断ると、途端にあっさり引いた。

 まさか、あの時に髪を回収されたのだろうか。
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