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12.危険な令嬢
6話
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「ねぇ、エミリア様。よろしければまたお店にいらっしゃいません? エミリア様の好きそうなお洋服が先日入荷しましたの。エミリア様が来てくださるなら、私お店に出て張り切って接客します!」
「本当ですか? カペラのお洋服はどれも素敵でしたから、ぜひ見せていただきたいです。ローズマリーさんにお洋服を紹介してもらえるなら、なおさら嬉しいですわ」
私が答えると、ローズマリーさんは満面の笑みになる。
「エミリア様に来て欲しい服、たくさん用意して待っていますね!」
「ありがとうございます。楽しみにしていますわ」
「絶対いらしてくださいね!」
ローズマリーさんは嬉しそうに言う。そして席を立つと、手を振って去って行った。
私は少し明るい気持ちになって、駆けて行く彼女の背中を見送った。
***
庭のベンチで話して以来、ローズマリーさんは何かと学園で話しかけてくるようになった。
休憩時間や放課後に廊下を歩いているときすれ違うと、目が合った途端満面の笑みで近づいてくる。
人懐こい笑みを浮かべるローズマリーさんは可愛らしいけれど、時折少しだけ違和感が胸をよぎった。彼女はいつも曇りない笑顔をしているのに、なぜだかその目を怖く感じてしまうのだ。
また、彼女はなぜだか話の合間に何かとクロード様のことを聞きたがった。
クロード様とはいつ婚約したのかとか、よく一緒に出掛けたりするのかとか、あんなに人気のある人が婚約者だと不安はないのかとか。
私とクロード様の関係は現在、全く良いとはいえないので、私は聞かれるたびに曖昧に濁すしかなかった。
できれば今はクロード様のことに触れて欲しくないんだけどなと思いながら、興味津々の様子で尋ねてくるローズマリーさんに言葉を返す。
……それに、そもそもローズマリーさんとはクラスが離れているから以前はほとんど会う機会がなかったはずなのに、どうして急に頻繁にすれ違うようになったのかも気にかかる。
「本当ですか? カペラのお洋服はどれも素敵でしたから、ぜひ見せていただきたいです。ローズマリーさんにお洋服を紹介してもらえるなら、なおさら嬉しいですわ」
私が答えると、ローズマリーさんは満面の笑みになる。
「エミリア様に来て欲しい服、たくさん用意して待っていますね!」
「ありがとうございます。楽しみにしていますわ」
「絶対いらしてくださいね!」
ローズマリーさんは嬉しそうに言う。そして席を立つと、手を振って去って行った。
私は少し明るい気持ちになって、駆けて行く彼女の背中を見送った。
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休憩時間や放課後に廊下を歩いているときすれ違うと、目が合った途端満面の笑みで近づいてくる。
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また、彼女はなぜだか話の合間に何かとクロード様のことを聞きたがった。
クロード様とはいつ婚約したのかとか、よく一緒に出掛けたりするのかとか、あんなに人気のある人が婚約者だと不安はないのかとか。
私とクロード様の関係は現在、全く良いとはいえないので、私は聞かれるたびに曖昧に濁すしかなかった。
できれば今はクロード様のことに触れて欲しくないんだけどなと思いながら、興味津々の様子で尋ねてくるローズマリーさんに言葉を返す。
……それに、そもそもローズマリーさんとはクラスが離れているから以前はほとんど会う機会がなかったはずなのに、どうして急に頻繁にすれ違うようになったのかも気にかかる。
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