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8.やっぱり嫌いです!
5話
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「……あのさ、よかったら今度行ってみない?」
「え?」
「ほら、妖精の加護で溢れている街に行ったら元気が出るんじゃないかと思ってさ!」
レスター様はそう言って笑う。元気がなかった私を気遣ってくれているらしい。
レスター様とファロンの街……。今までだったら断っていたかもしれない。
レスター様は友人として誘ってくれているだけだろうけれど、婚約者がいるのにほかの男性と出かけては周りに誤解を与える可能性があるもの。
けれど、クロード様がミアと泊りがけでレアンの街に行ったという話を聞いた今では、私がそこまで気にする必要はないように思えた。
というか、どうして今まで私ばかり気にしていたのかと、不満な気持ちがもたげてくる。
「……いいですよ。行きましょうか、ファロンの街」
「本当!? いつにしようか!」
私が了承すると、レスター様は嬉しそうな顔になる。
その後は、授業が始まるまでの時間、ずっとファロンの街へ行く計画を立てていた。街へ行ったらどこへ行くのか話していると、自然と明るい気持ちになった。
***
その日の授業が終わり、校舎を出ると、やはりクロード様は待っていた。彼は私に気づくといつもより遠慮がちに近づいてくる。
「エミリア……」
「クロード様、また待ち伏せですか」
「エミリア、まだ怒っているのか?」
クロード様は私の顔を覗き込み、不安げな調子で尋ねる。
「え?」
「ほら、妖精の加護で溢れている街に行ったら元気が出るんじゃないかと思ってさ!」
レスター様はそう言って笑う。元気がなかった私を気遣ってくれているらしい。
レスター様とファロンの街……。今までだったら断っていたかもしれない。
レスター様は友人として誘ってくれているだけだろうけれど、婚約者がいるのにほかの男性と出かけては周りに誤解を与える可能性があるもの。
けれど、クロード様がミアと泊りがけでレアンの街に行ったという話を聞いた今では、私がそこまで気にする必要はないように思えた。
というか、どうして今まで私ばかり気にしていたのかと、不満な気持ちがもたげてくる。
「……いいですよ。行きましょうか、ファロンの街」
「本当!? いつにしようか!」
私が了承すると、レスター様は嬉しそうな顔になる。
その後は、授業が始まるまでの時間、ずっとファロンの街へ行く計画を立てていた。街へ行ったらどこへ行くのか話していると、自然と明るい気持ちになった。
***
その日の授業が終わり、校舎を出ると、やはりクロード様は待っていた。彼は私に気づくといつもより遠慮がちに近づいてくる。
「エミリア……」
「クロード様、また待ち伏せですか」
「エミリア、まだ怒っているのか?」
クロード様は私の顔を覗き込み、不安げな調子で尋ねる。
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