私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが

雪丸

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2.突然なんなんですか!?

2話

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 馬車が学園に到着すると、クロード様は意外なことに手を差し伸べて私を下ろしてくれた。

 顔はやっぱり不機嫌なままだったけれど。まさか本当に態度を改めるつもりなのだろうか。

「珍しいですね、手を貸してくれるなんて」

「素直に礼も言えないのか。可愛くない女だ」

 クロード様は冷たい声で言う。私は何とも言えない気持ちでクロード様を見た。


「クロード様! おはようございます!」


 その時、後ろからやけに明るい声が聞こえてきた。振り返るとそこには元気に手を振るミアがいる。

「ミア」

「今日は少し遅かったですね。クロード様に会えないかと思って待っていたんですが……」

 言いかけたミアは私の方に顔を向け、驚いたように目を見開いた。

「えっと……今日はエミリア様とご一緒だったのですか?」

「ああ。俺たちは婚約者だからな」

 クロード様はやけにきっぱりと言う。そんなことを言われたのは初めてだ。いつも私が婚約者であることなんて忘れたように振る舞うくせに。

 クロード様の言葉を聞いたミアの顔が引きつるのがわかった。


「仲がよろしくてうらやましいですわ。あの、クロード様。お邪魔でなかったら私も校舎までご一緒してもよろしいですか?」

 ミアはすぐに気を取り直したようで、花の咲いたような笑顔で言う。

「いや、今日はエミリアと二人でいたいんだ。申し訳ないが今度にしてもらえるか?」

 しかし、可愛らしく尋ねるミアの言葉を、クロード様はあっさり斥けた。

 ミアは驚いたようにクロード様を見る。

 一方で私もミア以上に驚いてしまった。
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