私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが

雪丸

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3.予想外の申し出 クロード視点

1話

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 俺とエミリアは、六歳の頃に婚約者になった。

 薄茶色の髪に青い目のエミリアは少々頼りないところがあるけれど、素直で俺の言葉は何でも目を輝かせて聞くので、結構気に入っていた。

 だから、エミリアが婚約者になると聞かされたときも、悪くない気分だった。


 エミリアは泣き虫でしょっちゅうつまらないことで泣くので、俺はエミリアが泣かないようによく面倒を見てやっていた。

 さっきまで泣いていたエミリアが嬉しそうに笑ってお礼を言ってくるのを見ると、ちょっと得意になった。


 幼い頃の俺たちは、決して悪くない関係だったと思う。

 しかし、いつからか俺はエミリアの目を真っ直ぐに見ることが出来なくなった。


 子供の頃のエミリアは、年齢よりも幼くて、どう見てもあまり頭も良さそうではなくて、出来の悪い妹という感じだった。

 エミリアの兄は王立学園初等部の時点で研究所からスカウトが来るくらい優秀だったのに、妹のエミリアの方はてんで駄目なのだ。

 見た目も行動も子供っぽくて、俺がついていないとすぐに泣くエミリア。仕方ないのでずっと俺がそばにいてやろうと思っていた。


 しかし、そんなエミリアは成長するに従ってどんどん美しくなっていった。

 顔からは幼さが消え、手足も腰もほっそりして、幼い頃の面影は消えていく。

 俺がついて行ってやらなければ、よく行く街ですら道に迷っていたエミリアが、完璧な淑女だと称えられるようにまでなった。

 俺はそんなエミリアを見る度落ちつかず、以前のように振る舞えなくなっていた。
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