8 / 138
1.我慢の限界です!
8話
しおりを挟む
「クロード様のご両親は納得していただけなかったのでしょうか」
今までよくお世話になった彼らに迷惑をかけてしまったのなら申し訳ないと思いながら尋ねると、クロード様は苦々しい顔で言った。
「両親は婚約解消を受け入れる気でいた。……俺がエミリアに失礼な態度を取ったのだろうと文句を言われた」
クロード様はいかにも不満そうに私を見る。私は本当のことを、それもかなりクロード様に気を遣った表現で伝えただけなのに心外だ。
「クロード様のご両親が納得していただけたようで安心しました。そろそろ失礼してもよろしいでしょうか」
「あ……っ、待て!!」
立ち去ろうとする私の腕をクロード様が掴む。
「俺は認めないからな! 婚約解消はしない!」
「え……」
私は戸惑いながらクロード様の目を見つめる。
クロード様は意固地になっているのだろうか。婚約解消はクロード様の方にこそメリットが大きいはずなのに。
「いいか、俺は絶対認めない。二度と婚約解消なんて口にするなよ」
「クロード様、待ってくださ……」
クロード様は私の呼び止める声など聞かず、さっさと歩いて行ってしまった。
私は呆然と彼の背中を見送ることしか出来なかった。
今までよくお世話になった彼らに迷惑をかけてしまったのなら申し訳ないと思いながら尋ねると、クロード様は苦々しい顔で言った。
「両親は婚約解消を受け入れる気でいた。……俺がエミリアに失礼な態度を取ったのだろうと文句を言われた」
クロード様はいかにも不満そうに私を見る。私は本当のことを、それもかなりクロード様に気を遣った表現で伝えただけなのに心外だ。
「クロード様のご両親が納得していただけたようで安心しました。そろそろ失礼してもよろしいでしょうか」
「あ……っ、待て!!」
立ち去ろうとする私の腕をクロード様が掴む。
「俺は認めないからな! 婚約解消はしない!」
「え……」
私は戸惑いながらクロード様の目を見つめる。
クロード様は意固地になっているのだろうか。婚約解消はクロード様の方にこそメリットが大きいはずなのに。
「いいか、俺は絶対認めない。二度と婚約解消なんて口にするなよ」
「クロード様、待ってくださ……」
クロード様は私の呼び止める声など聞かず、さっさと歩いて行ってしまった。
私は呆然と彼の背中を見送ることしか出来なかった。
258
お気に入りに追加
5,484
あなたにおすすめの小説


わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。
平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。
家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。
愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる