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婚約破棄された氷の王女、前世で結婚の約束をした幼馴染と再会する

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「エルフリーデ=メルリス・バーデン第三王女との婚約は、今日この場を以て破棄させてもらう!お前のような冷たい心の持ち主ではなく、ひだまりのように暖かく光り輝く聖女ココレーヌこそが我がアルベール公国の妃にふさわしい!!」



 婚約者から急に呼び付けられてわざわざ相手の国まで赴いた結果がこれとは。後ろでアルベール公が真っ青になって首を横にぶんぶん振っている。婚約破棄は恐らく殿下の独断なのだろう。



「イオル殿下のお気持ちはわかりましたが、我々の婚約は政治的な理由で定められたものです。アルベール公はどのようにお考えなのでしょうか?」

「今そのような話はしていない!やはりその氷のように冷たい心では、人を愛する気持ちは理解できぬのだろう。我が妃が務まるとは到底思えぬ!そうですよね、父上!」



 その父上の顔色は真っ青を通り越して降り積もった雪のように真っ白になっているが、気付かないままイオル殿下は自信満々に持論を述べている。大国バーデンと縁づくために苦労して縁談を整えたアルベール公にはお気の毒だが、私にはどうすることもできないし、どうにかする気もない。



◇◇◇



 バーデン王国第三王女の私ことエルフリーデは、アルベール公国の公太子イオル殿下の婚約者で、近く嫁ぐ予定だった。私にとってこの婚約は可もなく不可なく、そもそも回避不可能なものだったので、粛々と受け入れていた。殿下のことは、顔は整っているけど勢いだけで生きているやんちゃな少年だとしか思っておらず、結婚したら公国のために彼の尻拭いをして回って一生を終えるのだろうと思っていた。そこに嘆きや悲しみもなければ、状況を打破するために動こうとも思わない。こういうところが冷たく氷のようだと言うのならその通りなのだろう。だって、どうしても心が動かないのだから仕方ない。物心つく頃にはこの性格だったので、今更どうしようもないし婚約者のために変わろうという気持ちも湧いてこない。



「婚約の破棄は、私個人としては特に異存はありません。どうぞ聖女様とお幸せに。後のことは我が父バーデン国王とアルベール公で話し合って決めてくださいませ。それでは失礼いたします」

「待て、エルフリーデ!お前の罪をこの場で詳らかにしてやる!」



 イオル殿下の合図で近衛兵たちが私を取り囲む。恐る恐るといった様子なので、公太子の命で仕方なく行動しているのだろう。



「お前は公国が誇る当代随一の聖女ココレーヌに「聖女にふさわしく無い」だの「あなたのような田舎者と同じ城で生活するなんて御免だ」だの、酷い言葉を投げたそうだな!俺を愛してなどいないくせに公妃の地位には執着するとはなんと醜い女なんだ……!」

「いえ、そのような発言はしていません。第一私は聖女様にお会いしたこともなければ顔も見たことがありません。そもそも私たちの婚約は政略的なものなので、愛情の有無は関係ありません」

「しらばっくれるな!俺の寵愛を受けたココが妬ましかったのだと素直に認めたらどうなのだ。そのココも三日前から行方不明……大方お前がどこかに攫って閉じ込めたのだろう!」



 公国が誇る不世出の聖女が行方不明とは、一大事じゃなかろうか。こんなところで私に罪を着せている場合じゃなさそうだけど、イオル殿下は勝ち誇ったような顔でこちらを見るばかりだ。



「私には本当に心当たりがありません。こうして的外れな断罪を行っている暇があるのなら、聖女様の捜索を急ぐべきではないのでしょうか」

「ふん、あくまでシラを切るつもりだな。公国中から敬われ愛されているココを害するなど我が国の民ではあり得ぬ!異国人のお前が最も怪しいではないか!」

「つまり、大して調べもせず思い込みだけで私を呼びつけ、今もってなお聖女様を捜索していないということですね」

「ここに犯人がいるのに捜索の必要などない!お前を投獄して尋問すれば全て済む話だからな!!」



 傍らで真っ白になっていたアルベール公がイオル殿下の一方的な発言にとうとう倒れかけたが、公妃と護衛騎士に支えられなんとか持ち直した。公にとっては倒れて現実逃避出来た方が幸せだったかもしれない。



「イオル、どういうことですか?聖女ココレーヌの居場所はわかっているから解決のためにエルフリーデ殿下を呼ぶと言い張るので許可を出しましたけど、それは貴方の思い込みだというの?」

「母上!そんなつもりではなく、僕は」

「お黙りなさい!取り返しのつかないことになる前に一刻も早く捜索隊を出さなくてはなりません。騎士団長をここに!」



 公妃殿下の叱責で青褪めたイオル殿下は、ようやく事の重大さに気付いたようだ。

 私を犯人と思い込み勢いで断罪するより前に、愛しい相手を一刻も早く見つけ出せるよう捜索隊を出すべきだったと言わざるを得ない。神の御力で万病を直し全ての傷を癒す奇跡を起こす聖女の存在はとても希少なのだ。攫われる心当たりなんてごまんとあるだろう。



「申し訳ないのだけど、嫌疑が晴れるまではエルフリーデの帰国は認められないの。もちろん貴女は無実だと信じているわ。それでも聖女様がお戻りになるまでは、こちらに留まってくれるかしら」

「承知しております、公妃殿下」



 後ろに控えている私の護衛騎士は抗議の声を上げようとしたけど、そっと押し留める。聖女様さえ見つかれば解放されるのだ。



◇◇◇



 聞いた話によると、聖女ココレーヌ様は平民の少女で、両親の商売の都合で公国にやってきたという。三年前に聖女の御力に目覚めてからは公国に仕える聖女として城に迎えられたらしい。公城住まいの聖女様はイオル殿下と接する機会も多かったのだろう。いつしか二人は恋仲になり、私の存在が煩わしくなったのだと察せられる。



「エルフリーデ、本当にココがどこに居るか知らないのか?」

「先程も申し上げた通り、存じません」

「ま……万が一ココに何かあったら、お前のせいだからな!お前が紛らわしいことをするからだ!!」

「それは違います。聖女様の身柄は公国預かりとなっているので、何かあった場合の責任はアルベール公におありでしょう。もしくは恋仲でありながら聖女様の動向を把握しておらず、私が犯人だと思い込み行方不明から三日も捜索せずにいたイオル殿下ご自身に責任があるのではないでしょうか」



 私の発言にイオル様は顔を真っ赤にしてこちらを睨みつける。心底そんなことをしている場合ではないと思うのだけど。



 愛する相手のためなら何でも出来るものだと少女向けの物語本には書いてあったけど、そんなのは物語の中だけのことなのだろうか。私にはよくわからない。



 ここまで愚かになる程誰かを愛するのは、果たして幸せなことなのか。立場がある人間がそれを擲ってでも己を貫くのは、周囲に迷惑をかけるし本人しか得をしないと思う。



「ココが見付かるまでお前は拘束する!ついてこい!!」

「イオル殿下、おやめください」

「黙れ!女騎士ふぜいが偉そうに、俺に指図をするな!!」

「主を守るのが護衛騎士の役目。相手が誰であろうと引きません!」

「ぐっ……」



 私の護衛騎士のルカーシャは怒り心頭と言った様子で、イオル殿下と公国の騎士たちを睨みつけた。私としても手荒く拘束されるのは遠慮したいと思いルカーシャの背に隠れ殿下から距離を取ろうとしたとき、広間の扉が大きく開いて一人の男性が現れた。



「依子、迎えに来たぞ」



 その人物を見た瞬間、頭の中に一気に前世の記憶が流れ込んできた。

 あぁ、私はこの人を知ってる。どうして今まで忘れていたんだろう。



「……唯人」

「悪ぃ、待たせた」



◇◇◇



「貴殿は…バウス辺境伯家のユーリ殿ではないですか!」

「ルカーシャ殿、お久しぶりです。今日は王命によりここまで馳せ参じました」



 ユーリ?違う、あれは唯人だ。そして私は依子だ。

 彼の顔を見た瞬間、前世のことを一気に思い出した。



「エルフリーデ王女殿下が婚約を破棄されるようなら、次の婚約者に名乗りを上げる許可をいただいております。そしてアルベール公国が我が国の王女殿下を不当に扱うようなら、直ちに連れて帰ってくるよう仰せつかっております」

「そんな勝手なことは許さぬ!エルフリーデには公国の聖女を誘拐した罪が――」

「聖女とは、こちらの方でしょうか」



 唯人の後ろに控えていた数名の騎士の影から、コーラルピンクの長い髪を持つ小柄な女性がひょっこり顔を出した。



「ココ、無事だったのか…!おのれ、やはりバーデンの者の手に落ちていたのだな!許し難い所業…」

「違います、わたしは自分の意思でこの国を出て行ったんです!そして早々に地図を無くして食料も底をついて困ってたところを、ユーリ様たちに助けてもらいました」



 厳しい眼差しでイオル殿下を睨めつける聖女様の様子を見ると、この二人が恋仲だとは到底思えない。イオル殿下を物凄く嫌っていそうな表情だ。



「公国はわたしを無理やり親元から離して城に拉致しておきながら、一生を国に捧げろとか公族の誰かと結婚しろとか、勝手なんですよ!元々この国で生まれたわけじゃないし、愛着もないのにそこまでしたくありません!」

「そんな!ココ、どうしてしまったんだい?君はいつだって笑顔で、どんな相手にも優しく接していて、まさに聖女の鑑だったじゃないか!」

「そりゃあわたしを頼って来てくれる怪我人や病人には親切にしますよ。この国の数少ないいいところは、聖女の癒しを貴賤なく誰にでも与える判断をしたところです。まぁそのお陰で毎日神力がすっからかんになるまで酷使されましたけど!」



 乾いた笑い声をあげながらイオル様を糾弾する聖女様の腕はか細く、顔色も冴えない。それでも深く澄んだ海のような青い瞳には強い意志が宿っていて、イオル殿下の思い通りにはならないという彼女の思いが伝わってくる。



「わたし、公族に嫁ぐのはまっぴらごめんです。ユーリ様の従者の方が家族を迎えに行ってくれたので、一家でバーデン王国に移住します。今までお世話になりました!」

「目を覚ましてくれココ!公妃になれば君は誰からも敬われる至高の存在として、僕に並び立てる唯一無二の聖女になれるんだよ?エルフリーデとの婚約は解消したし、これからは君を誰よりも何よりも、国を挙げて大事にすると誓おう!だから僕と…」

「うるさーーーーーーーい!!!人の決意に口を挟むなーーーーーーーー!!!!!」



 可愛らしい雰囲気の方だけど、かなりの迫力だ。自分の道を自分で切り開く力強さを感じ、カッコいいなと思う。あと唯人の妹に少し似ている。



「聖女ココレーヌは公国籍ではなく、西方にあるブレンダン王国の出身だと聞いてます。ご両親と弟妹は既に保護してバーデンに向かわせているので、落ち着いたら正式にバーデン国籍を取得していただきましょう」

「ま、待ってくれ!バウス辺境伯家の令息よ、ここは穏便に…」



 イオル殿下と聖女様のやり取りを震えながら見ていたアルベール公がようやく我に返り、慌てて口を開いたが唯人はバッサリと切り捨てた。



「ご令息の王女殿下へのなさりようは、いかがなものかと。そちらが穏便に婚約解消を申し入れていればこのような手段は取らなかったというのに…どのツラ下げて穏便に、だぁ?」



 途中までは貴族の令息らしい振る舞いだったけど、最後の方は完全に唯人の喋り方だ。めちゃくちゃ怒っているのがわかる。ガラが悪い。



「依子、こっち」

「ひゃっ!」



 私にだけ聞こえるよう耳元でささやいた唯人は、腰に手を回しぐっと私を引き寄せた。



「というわけで、エルフリーデ王女殿下は我々とこのまま帰国します。後日改めて今回の件について話し合いの場を設けますので、またお会いしましょう」



 そう宣言した唯人は私を抱き上げ、誰もが呆然としている中堂々と扉の外へ向かう。最初にハッとしたルカーシャが慌てて追いかけて来た。



「ごめんなさいルカーシャ。少し彼と二人きりにして欲しいの」

「姫様!?で、ですが…」

「しゃあねぇな、このまま走るぞ!」



 私の重量などものともせずに走り出した唯人は、階段を駆け下り踊り場の窓からそのまま外に向かって飛び降りた。いくら二階とはいえ両手が塞がってるというのに、唯人は華麗に着地し公城を駆け抜けた。



「ぎゃっ!!!」

「なんだ依子、王女様がそんな声出していいんか」

「バカ唯人!貴族の令息になったってあんた全っ然変わってないんだから!!いい歳してやんちゃが過ぎる!!!」

「武勇があるって言えよ。長年懸想していた王女を、愚昧な隣国の公子から搔っ攫うんだ。惚れちゃうだろ?」

「~~~~っ!」

「はは、真っ赤じゃん。かわい。氷の王女だなんて誰が呼んだんだろうな?」



 ほんとに全然変わってない。私まで依子だった頃の自分に戻ったようだ。



◇◇◇



「長年懸想って言うけど、唯人の記憶はいつ戻ったの?エルフリーデが依子だっていつ気付いたの?」

「戻るもなにも、俺は最初から唯人だったよ。依子は違ったん?」

「最初って……赤ちゃんの頃からってこと?」

「ハッキリ自覚したのは三歳くらいのときだったかな。俺はあの日事故に巻き込まれて死んで、この世界に前世の記憶を持ったまま生まれ変わったんだなって」



 依子と唯人は同じマンションに住む幼馴染で、保育園から中学まで一緒だった。別々の高校に進学し、たまに見掛ける唯人はかなりチャラい感じに成長していて、見るたびに髪の色が違うわガラの悪そうな大人と一緒にいるわで、近寄りがたい感じになっていた。

 

それが一転したのは成人式の後、一旦帰って振袖からワンピースに着替えて中学の同窓会に向かおうとしたところ、マンションのエントランスで唯人が待ち構えていた。



「依子、一緒にいこーぜ」

「なんで私と?男子は男子同士でつるんでなよ」

「だってお前そのかっこで行くんでしょ?可愛いから、アツシとかケータとか絶対声掛けに来るじゃん。今のうちに俺が確保しとかんと」

「確保ってなによ。私ってば知らないうちに賞金首にでもなったの?」

「それいいな、それでいこう。俺の心を奪った罪ということで一つ」

「はぁ!?」

「俺と付き合ってよ、依子。彼氏はまだいないっておばちゃんから聞いたし、唯人くんなら大歓迎だってさ」

「ちょっと、何私に言うより先にお母さんに言ってるワケ!?」



 距離は置いていたけど、いつだって視界に入れば目が離せないし、時々会う唯人のお母さんや妹から唯人の話は聞いていた。学校でめちゃくちゃモテてるのに彼女は作らずに趣味の写真にのめり込んでいること。高校の頃、一度だけエレベーター前で鉢合わせしたときに私の写真を一枚だけ撮ってくれて、その写真がコンテストで入選したことも全部知っていた。いつだって唯人の事が頭から離れなかった。だから私は、その日は唯人と手を繋いで同窓会に向かった。



◇◇◇



 公城の庭園でようやく落ち着いて二人きりになれた。城の方で騒動があった影響か人気がなかったので、ここでなら前世の話も出来ると思ったら唯人は相変わらずマイペースだった。



「な、今度こそ結婚しよ。お前んちも俺んちも金あるし、式は盛大にやろうな」

「お前んちって…言い方!今の私は王族なんだよ?唯人…ユーリ様にだってお立場があるでしょう?」

「二人きりの時は唯人って呼んでよ。それとも昔みたいにゆいくんって呼んどく?よりちゃん」

「~~~~っ、だからほんと、そーゆーとこ!」



 お互い大学を卒業して就職し、三年経った頃に実家マンションの一つ下の階にちょうどいい間取りの空き部屋が出たので、そこを借りて同棲を始めた。うちはお父さんが小さい頃に亡くなっていて持病のあるお母さんと二人暮らしだったから、実家を出ることに迷いがあったのでちょうどよかった。私の気持ちを尊重してくれた唯人に感謝しているし、結婚するならそんな唯人がよかった。



 だけどある日、二人で遠出をした帰りに大きな事故に遭い、依子としての人生はそこで途切れた。あのまま死んでしまったのだろう。そこを深く考えると酷い悲しみに襲われそうなので、今は考えないようにしておく。



「あのさ唯人、私さっき思い出したばっかりでまだ混乱してるの。ちょっと色々待ってくれる?」

「は?さっき?まじで??」

「大マジよ。唯人が私を依子って呼んだからかな?それで一気に思い出した」

「そっか、なら納得だわ」

「なにが?」

「俺も婚約を申し込んだのに、俺のこと蹴ってアホ公太子と婚約しちゃったじゃん。国王陛下に言われて断れなかったんかなとか、俺より公太子の方を好きになったんかなって、ずっと気になってた」



 私がイオル殿下と婚約したのは、二年前の15歳の時。デビュタント後に複数名から婚約の申し入れがあった際に父から意見を求められたが、まるで興味が持てなかった私は全てお任せしますと丸投げした結果、隣国の公妃になると定められた。



「横着するなって俺にいつも言ってたクセに、自分は丸投げかよ!」

「だ、だって全然興味が湧かなかったし!国益になるような結婚が出来ればいいわって思ってたから!」

「……あー、俺も甘かった。婚約さえ申し込めば依子は絶対俺を選ぶって思ってたから、まさかそれ以前の問題だったなんて」



 その頃の私に前世の記憶があれば間違いなく唯人を選んだし、婚約者候補の肖像画を見たら記憶を取り戻して唯人だと気付いたかもしれないけど、いかんせん私は王女なのだ。父は一応私の意見を聞いてくれたけど、その上で私の希望より国益優先でお相手が決まる可能性もあったのだ。危うすぎる。



「半年前に国王陛下から直々に話があったんだよ。エルフリーデに一番いい相手だと信じて、小さいけど豊かな公国に嫁がせることを決めたけど、間違いだったかもしれない…ってさ」

「お父様が?いつの間にそんなこと…」

「アルベールの公太子が第三王女殿下をないがしろにして聖女に熱を上げているようだって、バウス辺境伯家が独自に得た情報を陛下に報告したんだ。ここまで俺の計画通り」

「そんなことしてたの!?」

「してたしてた。んで、それがキッカケで陛下はエルフリーデ王女殿下の婚約解消を視野に入れはじめた。「ユーリ殿がまだ婚約者を定めていないのは娘を諦めていないからであれば、改めて婚約を申し入れてくれないか」って頭を下げられたよ。いい父さんだな」



 今の唯人ことユーリは、国防の要であるバウス辺境伯家の嫡男で近衛騎士たちも一目置く腕の持ち主だ、とルカーシャが話しているのを聞いたことがある。私より二つ年上の19歳で、王都での社交にはほとんど顔を出さないけどその名と功績は知られていて、同年代の貴族たちから慕われ一目置かれる存在だと記憶している。



「いやー諦めなくてよかった!聖女が来てから公国の内部がかなりごたついてるって聞いたから、それも含めて国王陛下に報告したかいがあった。ココにも感謝だな!」

「ココって聖女ココレーヌ様のことよね。どうして一緒にいたの?」

「あぁ、俺らが公国に向かってる最中に森で拾ったんだよ。一人で獣道を突き進んでいく女の子が居るから危ないと思って声掛けたら、間諜が描いた聖女の似顔絵にそっくりで」

「獣道って…そんな危ないところにいたの!?」

「あのままだと今頃森の獣たちのエサになってたかもな。こっちの事情を話したら嬉々として公国の内部事情をリークしてくれた上に、イオル殿下に一発喰らわせたいから同行させてくれって頼んできたわ。めちゃくちゃ面白かったから右ストレートの手ほどきしたけど、上手くできたかなー」

「そうだったのね…」

「依子?」



 今まで私は、何にも心が動かなかった。自分自身に起こっていることもいつだって他人事のようで、身体の周りが冷たい氷の壁に覆われているような感覚が常にあった。楽しいことも辛いことも、心の底からそうだと感じることは出来なかった。人間として欠陥があるのだと諦めて開き直り、何もかも他人事だと思って生きてきた。



 その間にも唯人は私を見付けてくれて、こうして迎えに来るために努力を重ねてくれた。聖女様だって、自分の望みを掴み取るため必死に行動して見事に勝ち取った。それだけじゃなく、お父様だって私のことを思って縁談を沢山用意してくれて、丸投げした私を叱ることなく最善の相手を選ぼうとしてくれた。一人で凍えていないで、早く手を伸ばせばよかったのかもしれない。



「あ、もしかしてココに嫉妬してる?全然そういうのじゃないし、俺、依子以外眼中にないから」

「…違う!そういう話じゃない!!」

「ほんとに違う?まったくさっぱり?かけらもない?」

「ない!!!!!」

「そーかそーか、ちょっとはあるのか」

「ぐっ………」

「依子のことは顔見ればわかるよ俺。だからいつでも顔が見れるように、早く結婚しないとな」



 ニコニコ笑う唯人は、なんだか子供みたいだ。私のことでこんな顔をしてくれるなら、なんだってしてあげたいと思ってしまう。エルフリーデとして生まれてからこんなに心が動くのははじめてで、なんだか落ち着かない。



 今ならハッキリとわかる。

 私の心が動かなかったのは、唯人がいなかったから。唯人に焦がれるあまり、唯人がいない人生なんて耐えられなくて、無意識に前世の記憶と心を閉ざしていたのだ。



「あのさ、唯…」

「姫様ーーーーーっ!」

「ユーリ様!やってやりましたよ私!!伝授してもらった右ストレートをお見舞いしてきたのでこんな国はもうおさらばですーーーー!!!」



 唯人に話し掛けようとしたら、ルカーシャと聖女様の呼び声が遠くから聞こえた。護衛騎士から逃げてしまうなんて、ルカーシャには申し訳ないことをした。謝らなきゃと思いそちらへ大きく手を振ろうとしたら、唯人にその手を掴まれ引き寄せられ、そのままキスされた。



「んっ…」

「依子、口あけて」

「やっ…こんなとこで…」

「だいじょーぶ、あんな遠くからじゃ見えないよ」



 エルフリーデとしてはファーストキスだというのに唯人はなかなか解放してくれず、ルカーシャと聖女様がやってくる頃にはすっかり腰が砕けてしまった。



◇◇◇



「兄上、お帰りなさい!」

「どうだった!?王女さまどうだった!!??」

「あなたたち、ちょっとは落ち着きなさい!で、どうだったのユーリ!?」

「ほら、お前も落ち着いて。で、首尾はどうだいユーリ…!?」 



 エルフリーデ王女殿下こと依子をバーデン王都に送り届けて、すぐ領地に帰ってきた。国王陛下は王城に滞在していくよう勧めてくれたけど、まだまだ事後処理が残ってると伝え丁寧に辞退した。一日も早く依子と一緒に暮らすために、やるべきことはまだまだ残っている。それに、どうせ客室に滞在したところで依子とイチャつけるわけでもない。



「ローヴ、留守中に変わったことはなかったか?ここ数日分の報告書は部屋に回しておいてくれ。リーリエ、王女様はとても可愛らしい方だったよ。後でゆっくりお話してあげる。父上、母上、今から少し時間をください。首尾は上々ですので、今後のことについて話し合いましょう」

「おぉ…!よくやった!よくやったぞユーリ!!」

「やったぁ!王女様がうちにくるのね?歓迎のパーティをしなくちゃだわ!!」

「…まじですか兄上。前世云々の話は妄言じゃなかったんですね」

「ユーリならやってくれると信じていたわ。これでバウス辺境伯家の跡継ぎは貴方に決定ね!」



 弟妹と両親が大騒ぎしている隙に自室に戻り、この二日間の出来事に想いを馳せた。

 しかし弟よ、妄言とは言ってくれたな。向こう一週間は厳しくしてやる。



「あー…連れて帰りたかった」



 よく依子の手を離せたと、己の自制心を褒めてやりたい。このまま辺境伯領に連れて行こうかと道中何度も思ったけど、ここで国王陛下の不興を買ったら今までの苦労が水の泡だ。最終的にはどんな手を使ってでも依子を手に入れると決めていたけど、彼女にとって一番望ましい形でそうなるのがベストだと思っていたので、今日まで耐えてきた。



(俺はエルフリーデ王女殿下のデビュタントの日に一目見て依子だってわかったのに、アイツときたら…薄情もんめ)



 けど、よくよく考えたら依子は興味がないものはまったく視界に入れないところがある。

 そんな依子が別々の高校に進学してからも俺の事を気にしていると知った時から、絶対に依子と付き合って結婚すると決めていた。自分の想いは一方通行じゃないんだとわかって、物凄く嬉しかった。依子が俺をゆいくんと呼んだあの日からずっと、俺の一番は依子なのだ。



「これでよーやく結婚出来る…はぁ、長かった!」



 まだ唯人だった頃、結婚間際で事故に遭い、古屋依子と秋月唯人のまま死んでしまった。依子は『銀行とかの名義変更で必要になるから』と早々に秋月姓のハンコを用意してたけど、結局使わずじまいだった。俺はどうしても依子と結婚したくて、唯人の記憶を持ったままユーリに生まれ変わった。だからこそこの世界のどこかに依子の記憶を持った女性がいると信じ続けて、エルフリーデ殿下のデビュタントの夜会で彼女を見付けたときは歓喜した。



「さて、と。一番邪魔だったアルベール公国は片付けたし、あとはトルネオ王国の第二王子を黙らせとくか。それから国内の有力貴族で王女の降嫁狙いの家をリストアップしておこう」



 エルフリーデ殿下のデビュタントの翌日、すぐさま両親を説得し王家に婚約の打診をした。国防の要たるバウス辺境伯家の嫡男と第三王女だったら悪くない組み合わせだし、跡継ぎになるため文武両道たれと厳しく育てられてきた上に、幼い頃から前世の記憶があったおかげで同年代の男子より優れている自負があったため、当然自分が選ばれると思っていた。何より依子なら何の迷いもなく自分を選ぶと信じて疑わなかった。その結果、アルベール公国の世継ぎに競り負けてまんまと婚約者の座を持っていかれてしまったので、何事にも油断は禁物だと手痛く学んだ。



『俺には前世の記憶があります。前世、こことは異なる世界でエルフリーデ王女殿下と婚約していて、結婚する直前に事故で死んだので彼女に未練があります。彼女以外と結婚するつもりはないので、俺を跡継ぎから外してください』



 家族の前でそう宣言したら、大騒ぎになった。自慢の息子が厳しく育て過ぎたせいでおかしなことを言いだしたと父は嘆き、真実ならロマンティックだけど妄想だったらかなりヤバいのでどのみち後は継がせられないと案外母は冷静で、跡継ぎは兄がなるものだと思い補佐をするため育てられてきた弟は「今更俺が跡継ぎになるかもだなんて冗談じゃない!無理!!」と逃亡しかけたのでとっ捕まえて直々に跡継ぎ教育を施した。次期辺境伯の座を放り出す気はなかったが、最重要事項は依子と結婚することなので、場合によってはやむなしだと考えていた。なお幼いリーリエはすんなり受け入れてくれて、王女様が未来のお義姉さまになったらステキねとはしゃいでいた。可愛い妹だ。



 俺の本気を感じ取った家族たちは、どうにかしてエルフリーデ王女殿下とアルベール公太子の婚約を解消させ、王女殿下を長男の嫁にもらう手段はないかと考え始めた。一家で話し合い、公国に間諜を忍ばせ周辺諸国からも情報を集め内情を探ったところ、異国よりやってきた聖女に公太子が入れ込んでいることがわかった。



『ユーリの話す前世のことが真実なのか、俺にはわからん。だから、ここからはお前一人でなんとかしろ。もし殿下との婚約が認められなければ、お前は跡継ぎから下ろ……いや、ローヴはたぶん向いてない。ローヴかリーリエが結婚して子が生まれるまでは、お前が中継ぎの辺境伯に…』

『父上、万が一婚約が認められなければ俺はどんな手段を取るかわかりません。家に迷惑をかけるつもりはないので、その時は廃嫡してください』

『いやちょっと待って!?手段は選ぼうせめて!?』

『好きな女を手に入れるのになりふり構ってられませんよ。父上だって、従兄殿と決闘して母上の婚約者の座をもぎ取ったんでしょう?』

『うっ…いや、あれは合法だったから全然違う話だ!!』



 そこから色々あったけど、無事に依子との婚約が陛下に認められた。アルベール公を黙らせた上で王女殿下を無事に連れ帰ったことに加えて、聖女を我が国の手中に収めたことも評価された。とはいえココは王宮預かりではなく、当面は辺境伯騎士団に従事してもらうことになっている。王族に不信感を持つ彼女をイキナリ王宮に預けても上手くいかない可能性の方が高いし、イオル殿下に一発喰らわせるための手ほどきをしたら「ユーリ様は私の師匠です!色々教えてください!!」と懐かれた。ちょうどいいので程よく鍛えて依子の護衛につけよう。不世出の聖女を護衛につけた王女なんて他にいないだろう。依子と聖女を結びつけることは多方面への牽制にもなるしちょうどいい。



「はぁ…第三王女より、平民の出とはいえ高い能力を持った聖女の方が尊ばれるかもしれないのに、兄上は心底エルフリーデ王女殿下のことしか見ていませんね」



 わざわざ自室を訪ねてきた弟のローヴに一連の出来事を話すと、この呆れた反応が返ってきた。



「俺の価値観とはかけ離れた意見なんて、何も心に響かないよ。大事なのはそんなことじゃないからな」

「それもそうですね。兄上の望みが叶ったなら、家族一同祝福しますよ。それにエルフリーデ王女殿下がここに住むのなら、兄上はバウス辺境伯領を大陸で一番安全な地になさるのでしょう……そういう点でも、やはり兄上が跡を継ぐのが一番だ」

「俺とエルフリーデ王女殿下の平穏な暮らしを脅かす奴が居たら、一族郎党滅ぼすと決めてる。怪しい動きがあったらすぐに教えてくれ」

「はいはい……それにしても、氷の王女はうちに来て大丈夫ですかね。我が家の気風に馴染めます?」

「それさ、誰が言い出したんだ?ずっと気になってたんだけど、あの子のどこが氷?」

「あの子!?あの怜悧な美貌の第三王女殿下をあの子呼ばわりするなんて、兄上だけですよ!」

「うーん、俺が知ってるあの子と王女殿下のパブリックイメージにかなり開きがありそうだなぁ」



 依子は俺が居れば表情が柔らかくなるし、王家では末っ子だけど依子の頃はうちの弟妹を凄く可愛がっていたから、きっとローヴやリーリエとも上手くいくだろう。特にリーリエは王女様に憧れがあるので、仲良しな義姉妹になってくれると思う。



「半年後には輿入れ予定だから、そのつもりでな」

「半年?早すぎません?どんなに短くても一年は婚約期間を設けるのが一般的でしょう」

「あのなぁ、今更一年も待つ必要がどこにある?こちとら三歳の頃から結婚したくて堪らなかったんだぞ。半年でも正直長い!」

「……兄上が心底惚れ込んだ女性がどんな方なのか、今から楽しみです」



◇◇◇



 それから四か月後に、エルフリーデ=メルリス・バーデン第三王女殿下とユーリ=カイト・バウス辺境伯嫡男は婚姻を結び、一年後には国を挙げて盛大な式を執り行った。式には聖女ココレーヌも参列し、盛大な祝福の光を降らせて話題となった。この光を浴びた多くの参列者は、向こう三年は病気知らずになるという素晴らしい効能があったという。その噂を聞きつけたアルベール公子イオルは、聖女奪還のため少数の兵を引き連れ密かにバウス辺境伯領に攻め入ったものの、わずか5分程度で降伏させられたそうだが、それはまた別の話。



「ねー依子、俺の前でも”氷の王女”っぽくしてみてよ」

「は?なによ急に」

「だって俺だけ知らないよ、冷たい依子。俺以外はみんな今の依子にビックリするし、どんだけコエー顔してたのか見てみたい」

「絶対やらない!それに、やろうと思ってやってた訳じゃないから、どうしていいかわからない」

「そーかそーか、俺と一緒に居たら幸せ過ぎて冷たい顔なんて出来ないんだな」

「……そうじゃない!」

「わかってるよ、依子。愛してる」

「…………うん。私も」

「あ、素直な依子だ可愛すぎる。ベッド行こ」

「ちょっと待ちなさい!まだ明るい時間なんだからやめて…」

「オッケー了解。今夜、楽しみにしてる」

「~~~~~~っ!唯人!!」



 こうして二人は、バーデン王国一のおしどり夫婦として近隣諸国にも知られる存在になり、末永く幸せに暮らしましたとさ。
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