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閑話

ベリニア開拓村支援センター定例会議

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 ここは天界。白い空間に覆われた中にポツンとホワイトボードと長机がロの字に並んでいる。

 そのホワイトボードには「ベリニア開拓村支援センター定例会議」と書かれており、正面には創造神ニエルが座っており、ニエルを囲う形で十二名分の席と、ひと席分を除いた十一名が座っている。

 「えー、それでは定例会議を始めます」

 ニエルの斜め後ろで水性マジックを持った男性が会議の開催を宣言した。

 「まず始めに、ミミエルですが、山田さんご一家の買い出しのため今回は欠席となります」

 進行役は一旦話を区切り皆の反応を確かめた後、「では、ニエル様」とニエルを促す。

 ニエルは前に座る十一名を見渡してから厳かに話し出す。

 「毎日の業務お疲れ様です。この度は、ここにお集まりいただいた皆さまのお陰で、山田さんご一家を無事、私たちの世界へ送ることができました。この場を借りて感謝申し上げます」

 ニエルが頭を下げると全員頭を下げる。

 「山田さん一家が転移してから四日が経ちましたが・・・」

 ニエルはここで一呼吸おき、砕けた口調で話し出す。

 「ね!凄くない!?たったの四日で狼人族やエルフの少女達、それに冒険者からドワーフよ?異世界転移の影響か、山田さん一家の引きが強いのか解らないけど、こんなに早く影響が現れるとは思わなかったわ!」

 出席者全員が(挨拶までしかもたなかったかぁ)と思いながらも顔には出さず真面目な顔をして話を聴いている中、ご機嫌なニエルの話が丁度切れたタイミングで十代位のツインテールの少女が手を挙げる。

 「はい。ベリニア現地アテンダントのカルエルさん」

 進行役に指されたカルエルは起立し、「あのー、私の役割って山田さん一家が現地入りして困った時に颯爽と現れてアドバイスする役って聞いてたのですが・・・なんて言うか、その、出鼻を挫かれた感じで、あの中に入って行き難いんですが・・・この役割って要ります?」

 「あっそれ!わかる!僕は現地人斡旋担当なのに勝手に集まって来てるんですよ!」

 同じ十代ぐらいの男児が話し出す。

 「それもなんですが、地球側もミミエルだけでは限界かと・・・」

 今度は二十代の女性が横から口を挟む。

 「やはり、購入代行サービスに無理があったのでは?」

 「いやいや、それは散々話し合った結果決まった事なんだから蒸し返すなよ」

 「購入代行がなきゃ、食料だのなんだの必要な物資供給が出来ないじゃない」

 「いやだから、他の方法を・・・」

 みんなが好き放題話し始めたため収集が付かなくなってくる。

 んん!進行役は咳払いをした後、「意見がある方は挙手をお願いします」と場を一旦落ち着かせる。

 はい!と先ほどミミエルの心配をしていた女性が手を挙げる・

 「では、サミエルさん」

 「はい。先ほど言いましたが、ミミエルは山田さんご一家のフォローで手が空きませんので、現在斡旋中の稲田さん、井上さん、吉田さんにそれぞれ担当を着けては如何でしょうか」

 皆がサミエルの提案を考慮を始める。

 「確かに、山田さん達の引きの強さで何とかなりそうですから、カルエルとダニエルの担当を地球斡旋担当に変更しましょう」

 ニエルの言葉に二人はやった!と喜ぶ。

 「あともう一名は、サミエルさん地球担当になりますか?」

 「はい。謹んでお受けいたします」

 サミエルは恭しく頷くが、内心は先日ミミエルからお土産に貰ったずんだ餅をまた食べるため、稲田さんの担当になるべく頭をフル回転させていただき。

 ニエルが決定を伝え、三人が了承したのを確認した進行役は、「では、次の議題に移りますが、他には何かありますか?」と皆に問いかける。

 「・・・特にない様ですね。では次に、今回山田さんご一家が保護したエルフ達について、本来なら開墾に使用すべき費用を衣料などの服飾品や食料に回している事について、費用的な補填が必要なのでは?との意見が出ていましたので、そちらの話し合いをしたいと思います」

 三十代のガッチリした男性が手を上げ意見する。

 「エルフ達を救った事は賞賛すべき事だが、保護したのは山田家が自らの意思で決めたのであって、そこから発生する費用なのだから補填するのは不要では?」

 「今後の事を考えても費用補填の前例を作るのは得策では無いと思います。それに我々の日本円予算は山田家の現在資産より、控えめに言ってもかなり低くいのでこれ以上減ってしまうと地球側での活動が難しくなります。それにこれから三人も増えるなんて・・・・」

 後半、日雇いでバイトするしか・・とぶちぶちと愚痴をこぼし始めた経理担当を隣の女性が慰めつつ他の意見も出ないことから、進行役はニエルに意見を求める。

 「では、山田さんご一家には費用に関する補填は見送りとします。ただ、悲惨な末路を辿ったであろう娘達を自らも転移して間もない状況で助けた功績については、私から直接山田さんご一家に褒賞を与えたいと思います」

 「その褒賞とは?」三十代のガッチリした男性がニエルに質問する。

 「それはヒミツです♪」ニエルはにっこり笑って答えをはぐらかした。

 「えー、他に意見はありませんか?ありませんね?それでは、ベリニア開拓村支援センター定例会議を終了いたします。お疲れ様でした」

 「「お疲れ様でした~」」

 進行役が会議の終了を告げられて、各人がわいわい言いながらそれぞれに消えていくのであった。

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