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未来からのラブレター
12月の夜を飛ぶ
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12月の夜に降る小雪と大都会の灯りが華やかに煌めく中、冬と帆乃を乗せたタクシーはまるで様々な星で彩られた銀河の中を飛びながら走っているようだった。
地方都市の隅っこで地味に暮らしている帆乃は、街を照らす沢山の光が物珍しく、ワクワクしながら外をじっと見つめる。
帆乃は脚本のことで連絡があって以来、まるで自分が映画の中の世界に迷い込んだ気がした。
すっかり大人びた、魔法の国の王様のような舞島くんに手をとられ、作りもののような煌びやかな世界の中、帆乃は優しくさらわれたお姫様みたいに、何処か知らないけど、とっても素敵な冒険へと導かれていく。
ファンタジーの世界みたいで、思わず微笑んでしまう。
帆乃の手を握り、ずっと見ていた冬も微笑みながら聞く。
「何が可笑しいの?」
冬の問いかけに、帆乃は目を輝かせて答える。
「だって、不思議で面白すぎるよ。
こんな時間に大人になった舞島くんと車に乗って、知らない場所に連れて行かれてる。
それに映画も出来るかもしれない。
丸っと別世界に入り込んだみたいで、可笑しくなっちゃった」
楽しく笑う帆乃を見て嬉しい冬は、子供みたいに胸がいっぱいになった。
幼かった自分が望んだ世界への扉がとうとう開き、これ以上ないほどの甘くて蕩けていく展開に、自然と身体中の振動がリミッターを超えて駆け回る。
その興奮で、照れ臭い言葉を冬は何でも口にする事が出来た。
「オレが帆乃ちゃんの願いを何でも叶えるから。
オレの側にいてくれる?」
帆乃は何故、冬がそんなことを言うのかわからなくて聞いた。
「舞島くんは、私の脚本が良いって本当に思ってくれたの?
、、同情とかじゃ無くて、、、」
帆乃のお父さんの事だと思った冬は、大切な事を聞いた。
「もちろん!本気でこれしかないと思った。
でも、オレが一緒にいる事で帆乃は思い出して辛く、悲しくならない?」
帆乃は窓の外の景色を見ながら考える。
「、、舞島くんは優しい良い子だから大丈夫。って、茜ちゃんが言ってた。
でも私の名前が出たら、もしかしたら舞島冬くん誰かにバレちゃうかも、、
それでも良いの?」
帆乃は、幼馴染の茜がwho youを冬だと結びつけた事を考えて言った。
茜がわかる事なら、同級生もわかるかも知れない。
帆乃の名前は、事件のせいで彼らの記憶に残っている可能性もある。
おまけに冬は誰の記憶にも残るくらい取り分け目立っていたし。
冬は自分のことなど、どうでも良かった。
「オレは本名名乗っても良いくらいだよ。
帆乃ちゃんを守りたいだけ、、」
帆乃は冬がそこまで自分に優しいのはどうしてなのか確信を持てないので、とりあえず言う。
「、、、ありがとう。
私、お荷物じゃないの?」
帆乃はだんだん面白くなってきて、冬がどこまで食らいついてくるか試し始めた。
「全然、そんなことない!
オレが好きでしてる事だから、帆乃ちゃんは何でも好きにすれば良い」
思わず、好き、と言う言葉が出て冬は赤くなる。
舞島くんって、こんな事言う子だったんだと思い、これ以上どうしようかなと帆乃は迷った。
「私、とってもワガママで注文つけまくるかも知れないよ?
映画のことで、、
覚悟は出来てるの?」
とっくの昔に気持ちだけは、覚悟も用意もできている冬は、すっかり、女王帆乃の下僕感満載な気分になって、胸に手を当てて成り切り恭しく答えた。
「もちろん、帆乃様の仰る事は絶対でございます。
仰せになる全ては、映画の為に、、」
帆乃はまた笑い出した。
「舞島くんって、本当に何でも出来るんだ!
凄いね!」
ケラケラと無心で楽しく笑う帆乃は、まるで真冬の枯れ草の中に小さく元気に咲いている、お日様色のたんぽぽのようだった。
見つけ出した冬は、これでもかと言うくらい幸福感に包まれた。
地方都市の隅っこで地味に暮らしている帆乃は、街を照らす沢山の光が物珍しく、ワクワクしながら外をじっと見つめる。
帆乃は脚本のことで連絡があって以来、まるで自分が映画の中の世界に迷い込んだ気がした。
すっかり大人びた、魔法の国の王様のような舞島くんに手をとられ、作りもののような煌びやかな世界の中、帆乃は優しくさらわれたお姫様みたいに、何処か知らないけど、とっても素敵な冒険へと導かれていく。
ファンタジーの世界みたいで、思わず微笑んでしまう。
帆乃の手を握り、ずっと見ていた冬も微笑みながら聞く。
「何が可笑しいの?」
冬の問いかけに、帆乃は目を輝かせて答える。
「だって、不思議で面白すぎるよ。
こんな時間に大人になった舞島くんと車に乗って、知らない場所に連れて行かれてる。
それに映画も出来るかもしれない。
丸っと別世界に入り込んだみたいで、可笑しくなっちゃった」
楽しく笑う帆乃を見て嬉しい冬は、子供みたいに胸がいっぱいになった。
幼かった自分が望んだ世界への扉がとうとう開き、これ以上ないほどの甘くて蕩けていく展開に、自然と身体中の振動がリミッターを超えて駆け回る。
その興奮で、照れ臭い言葉を冬は何でも口にする事が出来た。
「オレが帆乃ちゃんの願いを何でも叶えるから。
オレの側にいてくれる?」
帆乃は何故、冬がそんなことを言うのかわからなくて聞いた。
「舞島くんは、私の脚本が良いって本当に思ってくれたの?
、、同情とかじゃ無くて、、、」
帆乃のお父さんの事だと思った冬は、大切な事を聞いた。
「もちろん!本気でこれしかないと思った。
でも、オレが一緒にいる事で帆乃は思い出して辛く、悲しくならない?」
帆乃は窓の外の景色を見ながら考える。
「、、舞島くんは優しい良い子だから大丈夫。って、茜ちゃんが言ってた。
でも私の名前が出たら、もしかしたら舞島冬くん誰かにバレちゃうかも、、
それでも良いの?」
帆乃は、幼馴染の茜がwho youを冬だと結びつけた事を考えて言った。
茜がわかる事なら、同級生もわかるかも知れない。
帆乃の名前は、事件のせいで彼らの記憶に残っている可能性もある。
おまけに冬は誰の記憶にも残るくらい取り分け目立っていたし。
冬は自分のことなど、どうでも良かった。
「オレは本名名乗っても良いくらいだよ。
帆乃ちゃんを守りたいだけ、、」
帆乃は冬がそこまで自分に優しいのはどうしてなのか確信を持てないので、とりあえず言う。
「、、、ありがとう。
私、お荷物じゃないの?」
帆乃はだんだん面白くなってきて、冬がどこまで食らいついてくるか試し始めた。
「全然、そんなことない!
オレが好きでしてる事だから、帆乃ちゃんは何でも好きにすれば良い」
思わず、好き、と言う言葉が出て冬は赤くなる。
舞島くんって、こんな事言う子だったんだと思い、これ以上どうしようかなと帆乃は迷った。
「私、とってもワガママで注文つけまくるかも知れないよ?
映画のことで、、
覚悟は出来てるの?」
とっくの昔に気持ちだけは、覚悟も用意もできている冬は、すっかり、女王帆乃の下僕感満載な気分になって、胸に手を当てて成り切り恭しく答えた。
「もちろん、帆乃様の仰る事は絶対でございます。
仰せになる全ては、映画の為に、、」
帆乃はまた笑い出した。
「舞島くんって、本当に何でも出来るんだ!
凄いね!」
ケラケラと無心で楽しく笑う帆乃は、まるで真冬の枯れ草の中に小さく元気に咲いている、お日様色のたんぽぽのようだった。
見つけ出した冬は、これでもかと言うくらい幸福感に包まれた。
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