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イマジナリー
約束
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事故から2日後、カリフォルニアから冬の両親が駆けつけた。
命が助かったとはいえ未だ目覚めず、後遺症が残るかもしれない。
直輝は舞島夫妻にどんな言い訳もせずに、ひたすら謝罪した。
「申し訳ございません。
全て、私の責任です。
あれだけ、冬くんを守るとお約束したにも関わらず、こんな事になってしまい、本当に申し訳ないです。
お二人が大切に育ててこられた息子さんだというのに、私は守れませんでした、、」
土下座せんばかりに謝る直輝に、冬の父親は手を差し出して、直輝を立たせる。
「とにかく、冬は助かりました。
私達の息子は。
今はそれを感謝しています。
先のことはわかりませんが、冬ならきっと大丈夫だと信じています」
冬の母親も涙を浮かべて
「直輝さん、千里さん、お二人にこんなに心配かけて、あの子ったら、、
きっと、冬がぼんやりして何かしでかしたんでしょう。
お二人が、どれだけ冬を大切に、家族としてお世話をしてくださったか、あの子からよく聞いてますから、、」
直輝の側で一緒に頭を下げていた千里にも、労いの言葉をかける。
「とにかく、冬の様子を見て来てください」
直輝が言うと、両親は冬のいる病室に入っていった。
集中治療室の冬は、点滴に酸素マスク、各種医療器具を装備し痛々しい姿で眠っている。
右脚のギプスを見た母親は
「まぁ!どうしましょう!
この子、子供の時にも右足を骨折したのに、性懲りも無く、、
ギプスが嫌だってむずがるのをなだめるのがどんなに大変だったか!」
父親は涙を流す妻の肩を優しく抱きしめていると、そんな母の言葉が聞こえたのか、冬が目を覚ました。
「冬!!
気がついたのかい?」
「冬!冬!
お母さんよ!わかる?」
問いかける2人を見た冬は答えようとしたが、声が思うように出ない。
「何?何かして欲しい?」
話そうとすると鋭い痛みが走るので、冬は口の形で伝えようとした。
「は、び、が、い、た、、」
拙い言葉の意味が通じた父は冬の手を握り、
「ハービーは一昨日、急に体調が悪くなって天に還ったんだよ、、、
心臓が悪くなっていてね。
冬には言えなかった」
それを聞いた母はポロポロ泣きながら
「ハービーが冬を守ってくれたのよ!
あの可愛い子は最後まで誰かを守って逝ったのね、、」
盲導犬だったハービーは、引退した後再び仔犬時代を過ごした冬の家でのんびり暮らしていた。
ハービーは冬に会えなくても、ちゃんと冬のことを思ってくれていたのだ。
「は、び、、げ、ん、き、、し、て、た、」
両親はそれを聞いて、繰り返し、良かった、良かったと息子と分かち合った。
目覚めた冬は、順調に回復し普通病棟に移された。
残って冬を看ていた母親に、もう大丈夫だから家に帰ってゆっくりピアノを弾いて、とカリフォルニアに帰ってもらった。
ピアニストとしてコツコツと活動している母の邪魔をしたくない。
母は千里によろしくお願いしますと、冬の世話を任せ、いそいそと帰っていった。
冬は、直輝に直接謝りたいのに、1か月経っても顔をみなかった。
千里やバッシーは初め厳しく叱った後ちょくちょく来て、着替えや必要なもの、欲しいものを差し入れてくれるのに、直輝だけは電話をしても出ない、メッセージも既読無視だった。
ある日、バッシーが松田を連れて来たので、冬は事故の後どうなったのかを聞いてみた。
誰も何も教えてくれないからだ。
「おーおー!元気そうじゃの、冬!
お前、派手にやらかしてまー。
マジウケる!?」
チャラい感じで松田は話しかけた。
「松田さん、ごめんなさい。
僕が悪かったんです。
直輝さん、会ってくれないんだけど、どうなったんですか?」
冬は心配そうに聞いた。
バッシーが松田に目配せをしたので、適当に誤魔化していたが、バッシーが病室から出ていくのを見計らって話し始めた。
「ナオキマン、あの後全部自分が泥を被って大変じゃったんよ。
who youを最初に囲えんかったヤツらが、ここぞとばかりに襲いかかって、マスコミ焚き付けやがっての。
執念深いったらありゃしねー!
SNSも直輝のこと叩きまくって、非常識にも程があるとか、タレントを食い物にする鬼畜とか、エロジジイとか、人殺しタヌキとか、、、」
「、、、そんな
直輝さんは、タヌキじゃない。
、、柴犬かな?」
冬のボケにも引っかからず、松田は続ける。
「まあ、ナオキマンにとって、そんなことはどうでもええんじゃ。
可愛い冬が自分のせいで死にかけたショックが大き過ぎて、まともに向き合えんの!」
「、、、そんな」
「そりゃの、ナオキマン以外、誰もあの状況でやらせんわ。
いくらお前が泣いて喚き散らしても。
でも、アイツはやらせた。
冬の言うことなら何でも叶えてやりたいからの。
お前が銀行強盗やってみた~いって可愛く言ったら、アイツはいそいそとワシらを巻き込んで用意しそうな男だからの。
もしお前死んどったらワシらも殺人に加担した事になっとったんぞ!
よく覚えとけよ、コラ!」
冬は申し訳なさでいっぱいになった。
命が助かったとはいえ未だ目覚めず、後遺症が残るかもしれない。
直輝は舞島夫妻にどんな言い訳もせずに、ひたすら謝罪した。
「申し訳ございません。
全て、私の責任です。
あれだけ、冬くんを守るとお約束したにも関わらず、こんな事になってしまい、本当に申し訳ないです。
お二人が大切に育ててこられた息子さんだというのに、私は守れませんでした、、」
土下座せんばかりに謝る直輝に、冬の父親は手を差し出して、直輝を立たせる。
「とにかく、冬は助かりました。
私達の息子は。
今はそれを感謝しています。
先のことはわかりませんが、冬ならきっと大丈夫だと信じています」
冬の母親も涙を浮かべて
「直輝さん、千里さん、お二人にこんなに心配かけて、あの子ったら、、
きっと、冬がぼんやりして何かしでかしたんでしょう。
お二人が、どれだけ冬を大切に、家族としてお世話をしてくださったか、あの子からよく聞いてますから、、」
直輝の側で一緒に頭を下げていた千里にも、労いの言葉をかける。
「とにかく、冬の様子を見て来てください」
直輝が言うと、両親は冬のいる病室に入っていった。
集中治療室の冬は、点滴に酸素マスク、各種医療器具を装備し痛々しい姿で眠っている。
右脚のギプスを見た母親は
「まぁ!どうしましょう!
この子、子供の時にも右足を骨折したのに、性懲りも無く、、
ギプスが嫌だってむずがるのをなだめるのがどんなに大変だったか!」
父親は涙を流す妻の肩を優しく抱きしめていると、そんな母の言葉が聞こえたのか、冬が目を覚ました。
「冬!!
気がついたのかい?」
「冬!冬!
お母さんよ!わかる?」
問いかける2人を見た冬は答えようとしたが、声が思うように出ない。
「何?何かして欲しい?」
話そうとすると鋭い痛みが走るので、冬は口の形で伝えようとした。
「は、び、が、い、た、、」
拙い言葉の意味が通じた父は冬の手を握り、
「ハービーは一昨日、急に体調が悪くなって天に還ったんだよ、、、
心臓が悪くなっていてね。
冬には言えなかった」
それを聞いた母はポロポロ泣きながら
「ハービーが冬を守ってくれたのよ!
あの可愛い子は最後まで誰かを守って逝ったのね、、」
盲導犬だったハービーは、引退した後再び仔犬時代を過ごした冬の家でのんびり暮らしていた。
ハービーは冬に会えなくても、ちゃんと冬のことを思ってくれていたのだ。
「は、び、、げ、ん、き、、し、て、た、」
両親はそれを聞いて、繰り返し、良かった、良かったと息子と分かち合った。
目覚めた冬は、順調に回復し普通病棟に移された。
残って冬を看ていた母親に、もう大丈夫だから家に帰ってゆっくりピアノを弾いて、とカリフォルニアに帰ってもらった。
ピアニストとしてコツコツと活動している母の邪魔をしたくない。
母は千里によろしくお願いしますと、冬の世話を任せ、いそいそと帰っていった。
冬は、直輝に直接謝りたいのに、1か月経っても顔をみなかった。
千里やバッシーは初め厳しく叱った後ちょくちょく来て、着替えや必要なもの、欲しいものを差し入れてくれるのに、直輝だけは電話をしても出ない、メッセージも既読無視だった。
ある日、バッシーが松田を連れて来たので、冬は事故の後どうなったのかを聞いてみた。
誰も何も教えてくれないからだ。
「おーおー!元気そうじゃの、冬!
お前、派手にやらかしてまー。
マジウケる!?」
チャラい感じで松田は話しかけた。
「松田さん、ごめんなさい。
僕が悪かったんです。
直輝さん、会ってくれないんだけど、どうなったんですか?」
冬は心配そうに聞いた。
バッシーが松田に目配せをしたので、適当に誤魔化していたが、バッシーが病室から出ていくのを見計らって話し始めた。
「ナオキマン、あの後全部自分が泥を被って大変じゃったんよ。
who youを最初に囲えんかったヤツらが、ここぞとばかりに襲いかかって、マスコミ焚き付けやがっての。
執念深いったらありゃしねー!
SNSも直輝のこと叩きまくって、非常識にも程があるとか、タレントを食い物にする鬼畜とか、エロジジイとか、人殺しタヌキとか、、、」
「、、、そんな
直輝さんは、タヌキじゃない。
、、柴犬かな?」
冬のボケにも引っかからず、松田は続ける。
「まあ、ナオキマンにとって、そんなことはどうでもええんじゃ。
可愛い冬が自分のせいで死にかけたショックが大き過ぎて、まともに向き合えんの!」
「、、、そんな」
「そりゃの、ナオキマン以外、誰もあの状況でやらせんわ。
いくらお前が泣いて喚き散らしても。
でも、アイツはやらせた。
冬の言うことなら何でも叶えてやりたいからの。
お前が銀行強盗やってみた~いって可愛く言ったら、アイツはいそいそとワシらを巻き込んで用意しそうな男だからの。
もしお前死んどったらワシらも殺人に加担した事になっとったんぞ!
よく覚えとけよ、コラ!」
冬は申し訳なさでいっぱいになった。
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