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イマジナリー
始まりの初め
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遂に3月の吉日、who youのデビュー曲とwho youが出演する車のCMが発表された。
CMは事前に完成形を見せてもらっていた。
車が主役なのは勿論なのだが、思った以上にwho youが映っていて驚いた。
画面のwho youは初々しさと爽やかな色気を振り撒き、音楽も同様に最高の気分でドライブ出来ること間違い無しで
「who youがノッてるから、多く出さずにいられなかった。
もちろん、クライアントも喜んでくれている」
CMディレクターは楽しそうに言った。
このCMを観た反応が物凄くて、出演者のwho youが曲も作って歌っているとなると、尚更だった。
車の売れ行きも大好調で納車待ちが続出し、メーカーが大満足のいく成果を出す。
連動してYouTubeのwho youのチャンネルの登録者も鰻登りで、デビュー曲とCM曲がヒットチャートのトップ10に躍り出た。
そこからは夢中で、ひたすら突き進んで行く。
初ライブのチケットはわずかな時間でソールドアウト。
SNSで猫のプリンちゃんと遊ぶダラダラしたオフの姿や、楽器やダンスの練習風景、レコーディングの様子などをどんどん発信して、who youに親しみ易さを演出していく。
直輝は大林ことバッシーのアドバイスを受け、行き過ぎないギリギリのライン内での露出を心掛けた。
現場では、切れ者バッシーが影のボスとなり、やれ財布を忘れたとか、道を間違えてたとか、車をぶつけたとかの対応を、素早く冷静にこなし、スケジュールと各種手配とオファーの管理を厳しい目で組み立て監督していた。
「直輝さん、冬の体調はどうですか?
昨日は低血糖で突然倒れてましたよね、今日は大丈夫なんですか?
それから、音楽誌からのインタビューオファーが有りましたが、お断りして良いんですか?
それから、ブランドのLOVERLUNAから、新しいモデルコンセプトにとオファーがあります。
それから、、」
要件を畳み掛ける続けるバッシーに、慌てる直輝は
「OK!
冬は今朝ピンピンしてた。
アイツ、いきなり電池切れするから、よく見といて、その前に何か食べるものを与えてもらえるかな?
ちゃんとした専属トレーナーを付けた方がいいだろうか?
後は、もうテキトーに、、」
バッシーは右の眉を吊り上げて厳しく話す。
「適当って、どちらも大きな案件だと思いますが、よろしいんですか?
先方は幾度も連絡されて来てますが」
クールに言い放つバッシーに、コンサートの追加スケジュールや次の新曲に向けて、レコーディングの進行具合の事で頭が一杯の直輝は、落ち着きを取り戻す。
「すまん、すまん!
発信に関しては、冬が自分の言葉と表現で出すから、インタビューは一切不用だと。
モデルは、どうかなぁ、、やるかなぁ?やらせてみたいなぁ、、いい宣伝にもなるし」
そこにダンスレッスンから戻った冬が足を引きずって現れ、直輝は青ざめ、バッシーは切れ長の目を細めた。
「大した事ないけど、ちょっと、脚捻ったかも、、」
「なんだってー!?
大丈夫か?オイ!」
直輝は目が飛び出しそうに叫び、冬に駆け寄る。
「、、もしもし、診察の予約をお願いします。
番号は、、」
バッシーは素早く掛かりつけの病院に連絡を入れた。
こんな調子だったが、忙しさやハプニングも皆、テンションを高くして楽しんでいる。
コンサートの映像を撮るのに、松田ことマッサンが打ち合わせにやって来て、どっかり椅子に座って話し始めた。
「ところでじゃ、冬は舞台慣れしとんかの?
こげな過保護に育ておって、いきなり初ライブとかチビらずにいけるんかの?
まあな、失敗するのも良い経験じゃが。
それはそれで、撮れ高あるけーの、うししし、、」
バッシーは松田の不遜な物言いに
「私共は、お客様に喜んでいる頂けるように、最大の配慮を心掛けています。
冬も、練習通りにパフォーマンス出来れば、何の問題もありません!」
自信を持ってピシャリと言ってのけた。
一方で、大いに甘やかしてる自覚のある直輝は、今からライブハウスで修行させようかと言い出す。
それをのんびりと聞いていた冬は、
「ロスのフェスで、何回かバンメンで出たことあるよ。
高校のクラブで、年2回はホールで舞台に立ってた。
それから、一度だけオーディション受けて、映画の端役したことある。
その程度じゃだめ?」
「なんだってーー!?」
直輝はまたもや叫び、何の映画だ?探せ探せ!とうるさかった。
「、、参ったの。大変失礼致した。
冬くんや、出来んことってないんかの?」
バッシーに睨まれながら松田は、冬に聞いた。
「、、?いっぱいあるけど。
早寝早起き、アルバイト、家事、物理、化学、フランス語、スペイン語、、」
考えながら素直に答える冬に、皆失笑した後、直輝がしみじみと言う。
「確かに、冬を起こすのは至難の業だなぁ、、
これもあるから、一人暮らしさせられないかもしれん、、
よく学校行けたよなぁ!」
冬は学生時代を振り返った。
「病気かも知れないって、両親に心配かけた、、けど、ただの夜更かしだったから。
お父さんが盲導犬の子犬を預かるから、朝の世話をするかいって、、それでその子に強制的に起こされるようになって、、」
冬の話を聞いていた皆は、冬の父親の発想に驚く。
「あーあー!ナオキマンが冬の父ちゃんの努力を台無しにしおった!
飛んだ甘ちゃんに育ておっての」
松田の言葉を受けて、直輝も負けずに考えた。
「、、取り敢えず、明日の朝からウチの猫のプリンちゃんを一番手に投入する」
そう言って、冬を見ると、えっと言う顔をしたが
「悪くないかも、、」
と言い、また皆で笑った。
CMは事前に完成形を見せてもらっていた。
車が主役なのは勿論なのだが、思った以上にwho youが映っていて驚いた。
画面のwho youは初々しさと爽やかな色気を振り撒き、音楽も同様に最高の気分でドライブ出来ること間違い無しで
「who youがノッてるから、多く出さずにいられなかった。
もちろん、クライアントも喜んでくれている」
CMディレクターは楽しそうに言った。
このCMを観た反応が物凄くて、出演者のwho youが曲も作って歌っているとなると、尚更だった。
車の売れ行きも大好調で納車待ちが続出し、メーカーが大満足のいく成果を出す。
連動してYouTubeのwho youのチャンネルの登録者も鰻登りで、デビュー曲とCM曲がヒットチャートのトップ10に躍り出た。
そこからは夢中で、ひたすら突き進んで行く。
初ライブのチケットはわずかな時間でソールドアウト。
SNSで猫のプリンちゃんと遊ぶダラダラしたオフの姿や、楽器やダンスの練習風景、レコーディングの様子などをどんどん発信して、who youに親しみ易さを演出していく。
直輝は大林ことバッシーのアドバイスを受け、行き過ぎないギリギリのライン内での露出を心掛けた。
現場では、切れ者バッシーが影のボスとなり、やれ財布を忘れたとか、道を間違えてたとか、車をぶつけたとかの対応を、素早く冷静にこなし、スケジュールと各種手配とオファーの管理を厳しい目で組み立て監督していた。
「直輝さん、冬の体調はどうですか?
昨日は低血糖で突然倒れてましたよね、今日は大丈夫なんですか?
それから、音楽誌からのインタビューオファーが有りましたが、お断りして良いんですか?
それから、ブランドのLOVERLUNAから、新しいモデルコンセプトにとオファーがあります。
それから、、」
要件を畳み掛ける続けるバッシーに、慌てる直輝は
「OK!
冬は今朝ピンピンしてた。
アイツ、いきなり電池切れするから、よく見といて、その前に何か食べるものを与えてもらえるかな?
ちゃんとした専属トレーナーを付けた方がいいだろうか?
後は、もうテキトーに、、」
バッシーは右の眉を吊り上げて厳しく話す。
「適当って、どちらも大きな案件だと思いますが、よろしいんですか?
先方は幾度も連絡されて来てますが」
クールに言い放つバッシーに、コンサートの追加スケジュールや次の新曲に向けて、レコーディングの進行具合の事で頭が一杯の直輝は、落ち着きを取り戻す。
「すまん、すまん!
発信に関しては、冬が自分の言葉と表現で出すから、インタビューは一切不用だと。
モデルは、どうかなぁ、、やるかなぁ?やらせてみたいなぁ、、いい宣伝にもなるし」
そこにダンスレッスンから戻った冬が足を引きずって現れ、直輝は青ざめ、バッシーは切れ長の目を細めた。
「大した事ないけど、ちょっと、脚捻ったかも、、」
「なんだってー!?
大丈夫か?オイ!」
直輝は目が飛び出しそうに叫び、冬に駆け寄る。
「、、もしもし、診察の予約をお願いします。
番号は、、」
バッシーは素早く掛かりつけの病院に連絡を入れた。
こんな調子だったが、忙しさやハプニングも皆、テンションを高くして楽しんでいる。
コンサートの映像を撮るのに、松田ことマッサンが打ち合わせにやって来て、どっかり椅子に座って話し始めた。
「ところでじゃ、冬は舞台慣れしとんかの?
こげな過保護に育ておって、いきなり初ライブとかチビらずにいけるんかの?
まあな、失敗するのも良い経験じゃが。
それはそれで、撮れ高あるけーの、うししし、、」
バッシーは松田の不遜な物言いに
「私共は、お客様に喜んでいる頂けるように、最大の配慮を心掛けています。
冬も、練習通りにパフォーマンス出来れば、何の問題もありません!」
自信を持ってピシャリと言ってのけた。
一方で、大いに甘やかしてる自覚のある直輝は、今からライブハウスで修行させようかと言い出す。
それをのんびりと聞いていた冬は、
「ロスのフェスで、何回かバンメンで出たことあるよ。
高校のクラブで、年2回はホールで舞台に立ってた。
それから、一度だけオーディション受けて、映画の端役したことある。
その程度じゃだめ?」
「なんだってーー!?」
直輝はまたもや叫び、何の映画だ?探せ探せ!とうるさかった。
「、、参ったの。大変失礼致した。
冬くんや、出来んことってないんかの?」
バッシーに睨まれながら松田は、冬に聞いた。
「、、?いっぱいあるけど。
早寝早起き、アルバイト、家事、物理、化学、フランス語、スペイン語、、」
考えながら素直に答える冬に、皆失笑した後、直輝がしみじみと言う。
「確かに、冬を起こすのは至難の業だなぁ、、
これもあるから、一人暮らしさせられないかもしれん、、
よく学校行けたよなぁ!」
冬は学生時代を振り返った。
「病気かも知れないって、両親に心配かけた、、けど、ただの夜更かしだったから。
お父さんが盲導犬の子犬を預かるから、朝の世話をするかいって、、それでその子に強制的に起こされるようになって、、」
冬の話を聞いていた皆は、冬の父親の発想に驚く。
「あーあー!ナオキマンが冬の父ちゃんの努力を台無しにしおった!
飛んだ甘ちゃんに育ておっての」
松田の言葉を受けて、直輝も負けずに考えた。
「、、取り敢えず、明日の朝からウチの猫のプリンちゃんを一番手に投入する」
そう言って、冬を見ると、えっと言う顔をしたが
「悪くないかも、、」
と言い、また皆で笑った。
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