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イマジナリー
ロングヴィスタ
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デビュー曲のミュージックビデオと注目度の高い車のCMが同時発表という事態に、事務所のスタッフが活気づくなか、一足早く家に帰った冬はCMソングの制作を開始した。
冬は、車を運転する時、どんなだったら最高の気分に湧き立つかをイメージしていく。
朝か昼か夜か、、
天気は、、どんな風が吹いて、どんな季節か、、
どんな道か、、何を眺めて何を思うのか、、
何処に行くのか、
何処まで行くのか、
誰と、
どんな物語を、、
目を閉じて感じていると、ハンドルを握る自分の隣には、記憶の中の未だ幼い帆乃が大人しくちょこんと座り、首を傾げて冬を不思議そうに見ている。
「何をしているの?
私たち、これから何処にいくの?」
帆乃の声は覚えていないけれど、なんとなく伝わってくる。
「曲を作ってるよ。
帆乃が行きたいところ、何処でも連れて行くよ」
そう答えると、帆乃はホッとして窓を開け、目を閉じて空気の匂いを感じながら、冬の運転に身を任せる。
サラサラと髪は揺れ、楽しげな帆乃は流れる美しい緑の景色をみつめていた。
帆乃のいる世界はいつも優しく輝いて、心から安心できる。
この世界があれば、何処に迷い込んだとしても、冬は何だってやれるし、何処にでも行ける。
どんなに向かい風でも気持ち良くスピードを上げていき、素敵な世界だけを見つめながら、帆乃と何処までも一緒にいようと思った。
そんな夢想をしていると、ドアをカリカリしてフニャーと鳴く声がした。
猫のプリンちゃんが、家には誰もいないので、仕方なく冬に甘えに来た。
プリンちゃんを部屋に入れてやると、冬の膝に可愛い白い手をかけてヒョイと乗ると、次は頭をグニグニ押し付けて撫でてと要求した。
プリンちゃんは、子猫の時に道端で弱って怯えていたのを千里が保護して大切に育てた、明るい茶色と白のキュートな女の子だった。
そのクルクルしたつぶらな瞳に見つめられて額をそっと撫でると、プリンちゃんは満足そうに目を細めてグルグルと呟き始めた。
冬はプリンちゃんのリラックスした喉を鳴らすリズムを心地よく全身に響かせながら、音を鳴らして描いていく。
静かにテンポ良く走り出し、颯爽と飛び出すが、途中、迷い道に入り込んでしまう。
ちょっと冒険したかったんだ、違う世界を覗いてみたかったんだと思い直して、勇気を出して進んで行くと、ワクワクして来て突き抜けるポイントが見えた。
千里がプリンちゃんを探しにきた時には曲は完成し、夜に直輝が帰宅すると、リビングで今日の歌として、冬は千里にシンプルなギターの弾き語りで練習をしている最中だった。
それを聴いた直輝は、
「、、もしかして、この曲?!」
ウットリして聴いていた千里が幸せそうに答える。
「おかえりー!
直輝、これ冬の新しいCMの曲だって!
凄く素敵じゃない?
私が最初のリスナーよ!」
冬は立ち上がり、直輝に向かい
「一応、出来たよ。
あと、CMに合うように手直しや仕掛けしないと、、」
直輝は生まれたばかりの曲が余りにも良すぎて、嬉しくて、思わず冬に抱きつくと、千里も興奮して、そんな二人を抱きしめる。
冬は、何で二人がこんなに喜んでいるのか分からずに、ポヤンとしたまま、良かったのか、、と思っていた。
ニューソング、『landscape of zero 』が生まれCMディレクターに送ると、とても喜んでいた。
「何これ!メチャ気持ちいい!最高!
いやあ、つい引き込まれる。
爽やかなのに、どっかワザと引っかける如何わしさを出すよね、この子。
聞き惚れて、車の運転がヤバくなるレベル!」
who youのデビューMVを任せた映像カメラマンの松田は、30代後半の一癖ある愉快な冗談好きの男で直輝に言った。
「ナオキマン、冬は世に出たら面白いことになるでの!
しっかり覚悟しとけやー!」
「マジか?!
マッサンも、やっぱ、冬は良いと思うか?」
「いやー、ナオキマン、よーも冬を取って来れたの!
まだまだ線が細いんじゃが、危なっかしいんがええの。
アレだけのスタイルとお面持っとったらモデルも行けるし、演技の集中力と迫力が半端ないんよ。
怖いもん無しの憑依系じゃの。
大人しゅうにしとるが、こがな世界に出てくるんじゃけ、かなり危ないヤバい奴よ。
どげんして、そがな引き出し持っとるんか言うほど、えげつない表情するしの。
しかも英語と中国語が流暢なら、どこでも平気でやれるじゃろ!
いやー、どこまで売れるんか、末恐ろしいの。
ナオキマン、コレからもワシを宜しく頼むけん!」
それを聞いて、直輝は嬉しかったが、改めて気を引き締める思いで言った。
「、、ありがたいけど、マッサン、冬には余計なことは一切させないから。
儲けとか一切考えて無いから」
松田は含みのある笑いを見せる。
「よう言いますな~!
この世界知り尽くしとるじゃろに。
甘い蜜を吸い尽くそうと、魑魅魍魎がワラワラ寄って来るでの」
芸能界で多くの注目が集まるという事は、ひとつ間違えれば大きなしがらみの権力の餌食になり得る可能性も待ち受けている。
それらから冬を守り、寄り添い、冬が望む活躍の場を切り開いて、望む人達により良い作品の提供をするのが、直輝は自分の仕事だと思っていた。
巨大なマスメディアの広告塔を使い、繰り返し洗脳するような人気の取り方を、冬も直輝も望んではいなかった。
ただ、他の思惑の何にも染まらないで、自由に自分たちの思いと感性が望む方向と方法で、世界を創り出したかった。
どんな事が待ち受けているのか、予想もつかないが、非常に楽しみでもある。
行きたい未来を思い描き、なるように成るだけ。
後はただ一歩づつ着実に行くしかない。
冬は、車を運転する時、どんなだったら最高の気分に湧き立つかをイメージしていく。
朝か昼か夜か、、
天気は、、どんな風が吹いて、どんな季節か、、
どんな道か、、何を眺めて何を思うのか、、
何処に行くのか、
何処まで行くのか、
誰と、
どんな物語を、、
目を閉じて感じていると、ハンドルを握る自分の隣には、記憶の中の未だ幼い帆乃が大人しくちょこんと座り、首を傾げて冬を不思議そうに見ている。
「何をしているの?
私たち、これから何処にいくの?」
帆乃の声は覚えていないけれど、なんとなく伝わってくる。
「曲を作ってるよ。
帆乃が行きたいところ、何処でも連れて行くよ」
そう答えると、帆乃はホッとして窓を開け、目を閉じて空気の匂いを感じながら、冬の運転に身を任せる。
サラサラと髪は揺れ、楽しげな帆乃は流れる美しい緑の景色をみつめていた。
帆乃のいる世界はいつも優しく輝いて、心から安心できる。
この世界があれば、何処に迷い込んだとしても、冬は何だってやれるし、何処にでも行ける。
どんなに向かい風でも気持ち良くスピードを上げていき、素敵な世界だけを見つめながら、帆乃と何処までも一緒にいようと思った。
そんな夢想をしていると、ドアをカリカリしてフニャーと鳴く声がした。
猫のプリンちゃんが、家には誰もいないので、仕方なく冬に甘えに来た。
プリンちゃんを部屋に入れてやると、冬の膝に可愛い白い手をかけてヒョイと乗ると、次は頭をグニグニ押し付けて撫でてと要求した。
プリンちゃんは、子猫の時に道端で弱って怯えていたのを千里が保護して大切に育てた、明るい茶色と白のキュートな女の子だった。
そのクルクルしたつぶらな瞳に見つめられて額をそっと撫でると、プリンちゃんは満足そうに目を細めてグルグルと呟き始めた。
冬はプリンちゃんのリラックスした喉を鳴らすリズムを心地よく全身に響かせながら、音を鳴らして描いていく。
静かにテンポ良く走り出し、颯爽と飛び出すが、途中、迷い道に入り込んでしまう。
ちょっと冒険したかったんだ、違う世界を覗いてみたかったんだと思い直して、勇気を出して進んで行くと、ワクワクして来て突き抜けるポイントが見えた。
千里がプリンちゃんを探しにきた時には曲は完成し、夜に直輝が帰宅すると、リビングで今日の歌として、冬は千里にシンプルなギターの弾き語りで練習をしている最中だった。
それを聴いた直輝は、
「、、もしかして、この曲?!」
ウットリして聴いていた千里が幸せそうに答える。
「おかえりー!
直輝、これ冬の新しいCMの曲だって!
凄く素敵じゃない?
私が最初のリスナーよ!」
冬は立ち上がり、直輝に向かい
「一応、出来たよ。
あと、CMに合うように手直しや仕掛けしないと、、」
直輝は生まれたばかりの曲が余りにも良すぎて、嬉しくて、思わず冬に抱きつくと、千里も興奮して、そんな二人を抱きしめる。
冬は、何で二人がこんなに喜んでいるのか分からずに、ポヤンとしたまま、良かったのか、、と思っていた。
ニューソング、『landscape of zero 』が生まれCMディレクターに送ると、とても喜んでいた。
「何これ!メチャ気持ちいい!最高!
いやあ、つい引き込まれる。
爽やかなのに、どっかワザと引っかける如何わしさを出すよね、この子。
聞き惚れて、車の運転がヤバくなるレベル!」
who youのデビューMVを任せた映像カメラマンの松田は、30代後半の一癖ある愉快な冗談好きの男で直輝に言った。
「ナオキマン、冬は世に出たら面白いことになるでの!
しっかり覚悟しとけやー!」
「マジか?!
マッサンも、やっぱ、冬は良いと思うか?」
「いやー、ナオキマン、よーも冬を取って来れたの!
まだまだ線が細いんじゃが、危なっかしいんがええの。
アレだけのスタイルとお面持っとったらモデルも行けるし、演技の集中力と迫力が半端ないんよ。
怖いもん無しの憑依系じゃの。
大人しゅうにしとるが、こがな世界に出てくるんじゃけ、かなり危ないヤバい奴よ。
どげんして、そがな引き出し持っとるんか言うほど、えげつない表情するしの。
しかも英語と中国語が流暢なら、どこでも平気でやれるじゃろ!
いやー、どこまで売れるんか、末恐ろしいの。
ナオキマン、コレからもワシを宜しく頼むけん!」
それを聞いて、直輝は嬉しかったが、改めて気を引き締める思いで言った。
「、、ありがたいけど、マッサン、冬には余計なことは一切させないから。
儲けとか一切考えて無いから」
松田は含みのある笑いを見せる。
「よう言いますな~!
この世界知り尽くしとるじゃろに。
甘い蜜を吸い尽くそうと、魑魅魍魎がワラワラ寄って来るでの」
芸能界で多くの注目が集まるという事は、ひとつ間違えれば大きなしがらみの権力の餌食になり得る可能性も待ち受けている。
それらから冬を守り、寄り添い、冬が望む活躍の場を切り開いて、望む人達により良い作品の提供をするのが、直輝は自分の仕事だと思っていた。
巨大なマスメディアの広告塔を使い、繰り返し洗脳するような人気の取り方を、冬も直輝も望んではいなかった。
ただ、他の思惑の何にも染まらないで、自由に自分たちの思いと感性が望む方向と方法で、世界を創り出したかった。
どんな事が待ち受けているのか、予想もつかないが、非常に楽しみでもある。
行きたい未来を思い描き、なるように成るだけ。
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