チューベローズ

コスモス

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第1章

運命の交わり

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  俺たち人類はその多くが、森の奥深くや辺境の地に住んでいる。そのため仲良し3人組は村の生計を少しでも支えるために、積んできた薬草を売ったり、そこら辺に落ちてる機械ゴミから部品や鉄または電気回路を回収し、現金と交換してもらう仕事をしていた。村のみんなには危険だからやめろとは言われたが、この仕事は貴重な外貨を得るための方法として、1番多く収入が見込める事と人との接触が少ないため、誰も強く止めることが出来なかった。

「なぁ、れん。昨日大人の仲間入りしたんだろ?」

「なっ!バカ!前に百合がいるのに堂々と聞くか普通」

「別に平気だよ。百合ゆりは探すのに夢中だし」

「それはそうだけど…」

  俺た人間は多くの女性が狩られ絶滅の危機に瀕した時、どうにか母体数を増やすために男でも妊娠できる体に進化していった。最初その事を知らなかった異星人たちだったがここ数十年前から知られるようになり、今はまたどんどん数を減らしている。昨日の夜俺は肉体の成人の合図として夢精した。夢の内容はハッキリとは覚えてはいない。

「それで、蓮は誰と婚約するつもりなんだ?」

「あぁ、ひいばあちゃんが言うには百合か幸樹ゆうきになるって言ってた。それか仲良く3人で婚約でもいいって」

「はぁ?お前はそれについてなんも思わないのかよ」

「いや、うーん。2人とは小さい頃から仲良かったし、なんとなく2人とはそういう関係になるのかなとか思ったし」

「はぁ…お前なぁ。俺は…っ!百合!」

  俺はそう大きな声を上げる幸樹に驚き百合の方を見ると、二足歩行のワニの異星人が百合がぶつかってきたと難癖つけているようだった。

「おい!お前!百合を離せ!」

「なんだ坊主?お前もこの俺に相手して欲しいのか?」

「はぁ?そんなわけないだろうクズ!」

「なんだとこのクソガキ!」

「おい、蓮何も考え無しに挑発するな!」

「大丈夫俺に任せて!」

  そう言って俺は捕まえてこようとして相手が伸ばした腕を受け流し、相手の懐に潜り込み首元に強力なスタンガンを当ててやった。そして俺は自慢げに百合の方を見るとパッと明るい顔になって俺の元に駆け寄ってきた。

「助けてくれてありがとう蓮!怪我はない?」

  そう百合は聞いてきたが急に顔色が悪くなり、俺の後ろを指さした。そして幸樹がまた突然大きな声を出して俺に「危ない!」と言ってきた。俺はとっさの判断で後ろを振り返り状況を確認しようとしたが、俺の髪を相手に掴まれて身動きが取れなくなってしまった。

「何かと思ってきてみたが…こんなガキにしてやられるとはな」

「イッ!その手を離せクソ!」

  そう言って暴れていると、いきなりグイッと引っ張られてソイツのつけている銀仮面の間から、ジッと目と目があった。そいつのキラキラと輝く琥珀色の瞳は無償に俺の中の何かが駆り立てられ、その瞳よもっとよく見たいとさえ思ってしまった。俺は今考えてしまったことが気持ち悪くて無理やり思考を切り替えると、こいつがこの地球の実権を握る天使の一族である事を理解た。天使の一族とはその名の通り天使のような真っ白い大きな羽、そして金色の長い髪が特徴の一族だ。しかも容姿は整っているやつしかいないらしく、一族の中でも特に優れているやつは特殊な能力を持っているらしい。そいつらの名称は

「7大天使…」

「ほう、よくわかったなガキ」

「な!俺は「ガブリエル様こちらにおられましたか」

  そう言って大通りの方から黒髪の鋭い耳の形をした男が駆け寄ってきた。

「あぁ、少し気になることがあってな」

「そうでしたか。ガブリエル様そいつら人間はどうなさいますか?奴隷商人にでも売り飛ばしますか?」

「いや、いい。見逃す」

「は、はぁ…?かしこまりました。では私は大通りに車を付けてきます」

  そう言って男は足早にその場から去っていった。

「いい加減その手を離せ!」

  そう言って髪を掴んでいた腕を振り払いキッと睨みつけると、男は特になんとも思っていないような無表情で俺を見た。

「なぁ、あんたなんで俺たちを売らないんだ?人間って高く売れるんだろ?」

「私はあいにく金には困っていないからな。たかだか3人いちいち手続きをしている方が面倒だ。しかもこんなガキ3人あっという間に死んで利益もほとんど出ないだろう。あと2、3年は必要だな」

  そう俺を見ながらバカにした口調で言ってきた。ムカついて言い返そうとしたが、男はバサッとマントのようにカズラをなびかせ、大通りの方に向かって歩き出したので、俺は慌ててそいつに向かって言った。

「俺はもう16歳だから子供じゃない!」

  歩みを一瞬ピタッと止めてフッと鼻で笑いそして言われた。

「そもそもそうやって声を荒らげている時点でガキだ」

「お、俺は…クソ!」

  俺は言い返す言葉かなくて悔しく思い、近くにあった空き缶を蹴飛ばした。そしてまるでふたりだけ切り取られたかのような、不思議な時間は幸樹が俺に話しかけてきた事で終了した。

「蓮!このバカが!普通考え無しで突っ走るな!たまたま今回は見逃されたけど普通はありえないからな!」

「わかってる。ごめん」

「2人ともとにかく落ち着いて、多分さっきの騒ぎのせいで人がよってきてると思うからとにかく逃げよ?」

「そうだな。ごめん」

  そうして俺たちは足早にその場を去っていった。


「て事があったんだよひいばあ様」

  そう俺はひいばあちゃんに報告された。ひいばあちゃんは普段開かないシワのせいで重そうな瞼をカッ!と見開いて、その手に持っている硬い木でできた杖で俺の頭を叩いてきた。

「イッて!」

「バカもん!当たり前じゃ、痛くしておるんだからな。なぜお前は馬鹿では無いのに、どうしてそう子供なんじゃ」

「もう俺は子供じゃない」

「何を言っておる。冷静な判断を下せないならまだまだ子供じゃ」

「うっ…」

「もっと強く言ってやってひいばあ様」

「はぁ…幸樹に感謝するんじゃな」

「うっ、わかってる」

「とにかくしばらくはあちらに行くな」

「わかってるよ」

  そう言って俺はひいばあちゃんのいるゲルから出た。俺と幸樹は従兄弟同士で俺の方が一応本家筋らしいけど、儀式や会議の時くらいしか特に重要では無いため、仲のいい兄弟同然に育った。俺たちのそれなりに大きい村は、主に極東の国と言われていた日本人の血が7割とその他周辺諸国からなる村だ。他にも似たような村が点在しているらしいが、村は基本的に何年かに1回移動するので場所を正確に特定できるとは限らない。しかし村長たちだけは動物を使って手紙のやり取りをしているらしく、それが村同士の交流になっているらしい。元々は俺の父親が村長を次ぐ予定だったらしいが、俺を逃がすために両親ともに奴隷商人に捕まってしまったため、父親の弟である優介ゆうすけ母さんが村長をしている。この人は子供が出来ない体らしく、俺を養子として迎え入れてくれた。だから俺にとっては写真の中の父と母よりは叔父である優介母さんとその旦那である武尊たける父さんが俺にとっての親だ。

「あ!蓮、なんかヤバいやつに捕まりかけたって聞いたけど大丈夫だったの?」

  そう幸樹の姉のはなが聞いてきた。彼女はサッパリとした性格で、男の俺も特に気を使わなくて済むので、何かあるとよく頼る姉のような人だ。

「うん、7大天使に捕まりかけた」

「え?そんなエリートそこら辺にいる訳ないじゃない。見間違えじゃないの?」

「違うよちゃんと確認したし本人も認めてた。だってカズラに金の刺繍糸で7大天使の名を表す模様と絵が書かれてたもん」

「へー、あんたたち運がいいんだか悪いんだか分からないわね」

「俺だって好きで遭遇したんじゃないよ」

「はいはい、気をつけなよ?」

  そう言って姉ちゃんは俺の肩をポンポンと軽く叩くと、少し先にいる姉ちゃんの旦那さんと3歳になる息子の方に走って行った。


「蓮話は聞いたけど大丈夫だったのか?」

「うん、大丈夫だよ父さん」

「後で優介とちゃんと話をするんだぞ。かなり心配してたからな」

「うん、わかってるよ。とりあえず3人で話し合って3ヶ月はあっちに行かないって話になったから」

「そうか、ならいい」

  そう言って父さんは外にいる狩猟用の鷹を見に行った。

  それから1時間くらいで母さんが帰ってきて、俺が作った煮魚と味噌汁とご飯を皆で食べながら今日のことを話した。

「とにかく気おつけなさい蓮」

「うん、わかってる。俺もあの時は良くなかったって思ってるし。でも、なんか少し変だったんだよね。あの時は特にいつも以上に負けたくない気がして、なんか逃げるっていう言葉が頭に無くって」

「それは…」

「他にはどう思った」

「え?うん…あぁ、あいつの瞳が綺麗でずっと見ていたいって…何言ってんだろ俺。あぁー…気にしないで父さんたち」

「…そう。とにかくもう二度と会ってはいけないよ」

  そうしてなんとも言えないような重苦しい空気で夕食を終えた。


  あれから3ヶ月が経ち今日は珍しく風邪を引いた幸樹をおいて、俺と百合だけで前回拾ってきた部品と薬草を売りに行くために、あの時とは違う別の町に売りに出た。

「今日は結構いい感じに売れたな」

「うん、そうだね。これで直したいって言ってた通信機の部品が買えるね」

  そう俺たちは満足そうに帰っていると、突然ニヤニヤしたように笑いながら、3、4人の半魚人みたいな奴らが俺たちの道を塞いだ。

「おいおい、お前らいいもん持ってんじゃねか」

「俺たちに寄越しな」

  と、よく王道のザコ敵がいいそうな台詞を吐いてて襲ってきた。俺は反対方向に百合を逃がし軽く相手をあしらってから走り出した瞬間、ドンッと硬いなにかに激突した。

「イッ!」

「また会ったようだなガキ」

「は?なんでお前」

「居たぞ!こっちだ!」

「おい貴様らこいつに手を出すな」

「な!何言って「おいやめろ!こいつは天使だぜ、俺たちには荷が重すぎる」

  そう言ってさっきまでの威勢はどうしたのか、大人しくすごすごと帰っていった。

 「あぁ…助かった、ありがとう」

  そう素直に小さい声で礼を言うと、奴は俺の腕を掴んで引きずるように大通りの方へと連れて行こうとした。

「は?急に何するんだよ!」

「私は次も見逃すといった覚えは無い」

「は、はぁ!?だって俺はガキだから売ってもそょうがないって」

「気が変わった」

「嫌だ!離せ!クソ!」

  そう一死に抵抗するがビクともせず、俺はあっという間に車に乗せられ、両手足に手錠をつけられた。この手錠はかなり頑丈で、何をしても外れないと言われているものだ。そして7大天使たちの住むエデンと呼ばれる7つの塔の左から三番目の塔の入口に着き、奴が細かい装飾が施された大きな扉の前に立つと、ホログラムがやつの肉体を読み取り承認を確認したらしく、大きな音を立ててドアが開いた。そこにはずらりと使いのもの達が並び1番先頭にあの黒髪の男がいた。

「お帰りなさいませガブリエル様」

「あぁ、ルミエールこいつをペットにする」

「そ、それは誠にございますか?しかしなぜ人間などという、奴隷を交配させるためだけの低俗な種族をペットになさるのですか?ガブリエル様でしたらいくらでもいらっしゃるではありませんか。それにほかの大天使様方に知られれば大変な事になります」

「…私の地位と名誉はたかだかペットごときで地に落ちるものか?」

  普段凶暴なモンスターから感じる殺気になれている俺でも、震えるほどの強い殺気を放ちながら男に言い放った。すると男も言葉をつまらせながらいいえと言った。

「とにかくこれは決定だ。ジェノこいつを部屋に連れて行け」

「はい、かしこまりました」

  そう言って出てきたのは人間の見た目に羊の角と白いフワフワした髪を持った1、2歳位年下の少年が出てきた。

「それではこちらに」

  そうして俺はジェノという少年に部屋を案内された。


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