異世界の花婿になりまして

コスモス

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第1章

レオさんと街散策 3

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   レオさんに連れられて着いたのが、レオさんの行きつけだという酒場だ。その酒場は男臭さがあるカッコイイ感じの店だった。

そして俺達が店の中に入ると、屈強な男達がギロッとこちらを一斉に見た。ビビった俺はヒッと声に出してしまった。
するとレオさんより体格がよく、左目に傷があるヤバそうな男が俺に近づいてきた。俺はビビりすぎて顔を引きずらせてその人を見上げていると、急にその人が俺の目線に合わせてきた優しそうな顔になって、俺の頭を優しく撫でてきた。

   「ダメだぞ僕。こんな所に来たら。おい、レオこんな小さい子供何でここに連れて来た?」

   そう男の人が少し叱るような口調でレオさんに言うと、レオさんは腹を抱えて大笑いしながら、俺の背中をバンバン叩いてきた。

   「はははっ!!はぁーあ、笑った笑った」

   「い、痛いですよ!」

   「悪い悪い。まさか僕扱いされるとは思って無かったからな」
 
   「う・・・あ、あの。俺はこれでも27歳です」

   「27そうか、やっと20過ぎたってところか。だとしても選ぶ場所間違えてないか?まだ20過ぎたばかりの子供が来る場所じゃないぞ」

   その人は優しく俺を諭してくれているようだったが、俺からすると逆にプライドが傷つくし、とても恥ずかしいのでやめて欲しいなと思った。

するとレオさんが急に俺の年齢をこの国の数え方で訂正してくれたので俺はとりあえず、子供扱いされないで済むのかな?と思った。

   「ちげぇーよマヨア。こいつは一応270歳だ」

   「え?・・・え!?こ、この幼い見た目でか?」

   「おう、可愛いだろ?」

   「な、からかわないでくださいよ!」

   「レオお前趣味変えたのか?」

   「ち、違いますよ!俺とレオさんはそんな関係じゃありません」

   「そうか?さっき店で俺に抱きついてきたじゃねぇーか」

   「はい!?あれはだって仕方がなかったじゃないですか」

   そう俺が慌てて訂正しようとしていると、何故かマヨアさんの後ろから物凄い殺気が俺に向かって来ているような気がして、チラッと間から覗くと、兎の耳に白い髪の綺麗な顔の人が、鬼の形相でこちらを睨みつけていたので、あまりの恐怖に固まってしまった。

するとそれに気がついたレオさんがその男の人に話しかけた。

   「おい、ルカ。そんなにこいつを睨んでやるな」

   「レオさん。そんな乳臭いガキのどこがいいんですか」

   「んー・・・どこがいい。そうだなしいて言うならアホなところだな」

   「あ、アホって。俺そんなにアホじゃないですよ」

   「は?アホだろ。出会って2日しかたってない俺を信用してホイホイ着いてくるんだからな。もし俺がどこかに売ったり、お前を利用したりしようとしてたらどうするんだ?」

   「どうするんだって言うか、なんかレオさんはそういう卑怯な事とかする人に見えなかったので大丈夫だと思って」

   そう俺が言うと、俺の発言に皆が驚いて周りの人達は黙ってしまった。

するとその微妙な雰囲気を壊したのはマヨアさんだった。

   「へぇーここまで警戒心のない奴が今時いるんだな。あんた名前は?」

   「昴です」

   「そうか昴。確かにたまたまレオさんが良い人だったから良かったけど、ぶっちゃけこの国にはそんなに良い人は多くないぞ?次からは気おつけな」

   「は、はい。あの、教えてくれるのは良いんですが、子供扱いをやめて貰えませんか?恥ずかしいので」

   「ん?あぁ、悪い悪い。息子の幼い時くらいの顔立ちだからついな」

   「あはは・・・そ、そうでしたか」

   そう俺が苦笑いすると、カウンターの方から赤黒い長い髪を後ろで縛り、息を飲むような男の色気を放った、猫の耳と尻尾をした人が猫なで声で俺に話しかけてきた。

   「ねぇ、昴君。せっかくだからお兄さんと話そうよ?」
   
   そう言われたので俺はチラッとレオさんを見ると、レオさん顎でクイッと行っていいと行ってくれたので、俺はレオさんの元を離れて、カウンターの方に行った。

   「何か飲むかい?」

   「えっと、お酒じゃないものとかありますか?」

   「あるよ。でも酒場なのに飲まないのかい?」

   「さすがに昼からはちょっと」

   「大丈夫さ、別に怒る人だって居ないし。それに昴君は270なんだろ?」

   「う・・・じゃー弱いやつで」

   「かしこまりました」

   そう言ってお兄さんは木の実を甘いシロップでつけた、青い色のブループルメントというお酒を出してくれた。
そのお酒を一口飲むとフワッと甘い誘い込まれるような、独特の香りがしてとても飲みやすかった。

   「わぁ、美味しい」

   「だろ?強い酒が苦手な人達に人気なんだよね。と言ってもここにそんな人ほとんど来ないけど」

   「あはは、確かに来なそうですね」

   「で、気になってたんだけどさ。レオの家に居候してるってほんと?」

   「はい。とりあえず住まわせてもらっています」

   「ふーん。それは凄いね。あの家に寝泊まりしたことあるのって、他人だったら君くらいじゃないかな?」

   「え?だってなんか色んな人に手を出してるみたいだったし・・・」

   「まぁ、確かに取っかえ引っ変えしてるけど。そもそも別に無理に自分の家にお持ち帰りしなくても良いだろ?」

   「あ、確かに。でも俺の場合は帰る場所が無かっただけですから」

   そう俺が特にやましい事は無いと言うかのように平然と応えると、お兄さんは楽しそうにふふっと笑って言った。

   「なるほど。これはレオは苦労しそうだね」

   俺はその意味がわからずお兄さんに意味を聞こうとすると、レオさんが俺の隣にドカッと座って俺の飲んでいた、ブループルメントを飲み干してしまった。

   「あ、俺の酒!そ、そんなぁ・・・」

   「お前、酒そんなに強くないんだろ?無理して飲むな」

   「でもこのお酒なら大丈夫だって。それはこの店にしてみればな話だろ。現にお前もう顔少し赤いぞ」

   「え、じゃーこれ以上飲まないようにします」

   「そうしておけ」

   「おい、フランツこいつにもう酒は飲ませるな」

   「ふふふ、ごめん。つい可愛くていじめたくなっちゃったんだよ」

   「はぁー、あのなぁー」

   「ごめんごめん。もうやらないから怒らないでよ」

  するとレオさんと俺が話しているのが気に食わないのか、ルカがあからさまに不機嫌そうに、レオさんの隣にドカッと座った。

   そしてルカさんは俺を話に入れまいと、レオさんと軍事の事について話していると、フランツさんが何故かニコニコと楽しそうに俺達の事を見ていたので、どうかしたんですか?と聞くと、グイッと俺の方に顔を近づけてきて言った。

   「レオ、昴君に対してすごい過保護だなと思って」

   「そうですか?」

   「うん、いつものレオだったら酔わせてそのまま食べちゃうからね」

   「本当は昴君を酔い潰して俺がお持ち帰りしようかと思ったけど、レオが思ったより君を守ってるみたいだから無理そうだね」

   「え、本気で言ってます?」

   「うん、結構本気だよ?だって君面白そうだし、結構俺の好みだしね」

   俺はその言葉にまさか掘られるんじゃないかという恐怖で、鳥肌がゾワゾワっとなった。

するとその話を聞いていたのか、レオさんが俺の肩を抱き寄せて俺にフッ優しく笑いかけてフランツさんに言った。

   「おいフランツいくらなんでもおふざけが過ぎるぞ」

   「ふふふ、おぉー怖い。そんなに怒らないでよ。少しからかっただけだからさ。そもそもそんなに大事ならここに連れてこなければよかっただろ?」

   「・・・あぁ、まぁ、そうかもな。とにかく、こいつはそういうのに慣れてないんだからあまり遊んでやるな」

   「はい、はい。じゃーいじめ過ぎちゃったお詫びに昴君の知りたい事できる限り何でも教えるよ」

   「知りたい事ですか?」

   「そう、なんでもいいよ。この国でもいいし、レオについてでもいいし」

   「えっと、この国の年齢とかってどうなっているんですか?」

   「どうなってるって、普通に常識だと思うけど・・・まぁ、教えるね。俺達は生まれてから大人になるまでつまり20歳になるまでは1年ずつ歳をとってそのあとからは10年単位になるんだよ」

   「だから子供が大人の人数の割に少なかったんですね」

   「そういう事。みんな一気に大人になっちゃうからね。他には何かある?」

   「あと、皆さんと違って完全に動物の格好なのに普通に喋っている人達って、皆さんと同じ種族なんですか?」

   「うん、同じだよ。むしろ元々同じ姿だったんだけど、歳を重ねるにつれて人間の部分が無くなって来たんだと思うよ。人間の部分が全く無くなってるんだったらもしかしたら寿命も近いのかもね」

   「そ、そうなんですか・・・」

   「でも例外もいるよ」

   「え?そうなんですか?」

   「うん、森に住んでるんだけど、完全に亀になってるけど2000年近く生きてる人もいるし」

   「す、凄い」

   「まぁ、俺はそこまで生きたくは無いけどね」

   「え?何でですか?」

   「そりゃー皆に置いていかれるの嫌だもんそれに、完全に猫の姿になったら色んな子と遊べないだろ?」

   「あはは、確かに。でも寂しいなら子供とか作るとか」

   「んーまぁ、その手もあるけど親子の縁ってそんなに何百年も続くほど固いものでもないよ」

   「そうなんですか。なんか悲しいですね」

   「あぁ、ごめんごめん。別に悲しませるために言った訳じゃないから」

   「はい、分かってます」

   
 
   そして俺はフランツさんと話し込んでいると、いつの間にか日が落ち夜の7時頃になってしまっていた。
その頃レオさんは皆の中心で盛り上がり、大きな声で楽しそうに笑っていた。

俺はさすがに帰らないとマルクが心配すると思い、レオさんに話しかけようとレオさんの方に向かった。

すると周りの人達はレオさんも含めて俺より10センチ以上は高いので、俺の事が視界に入っていなかったらしく、俺はドンッと弾き出され尻もちを着いてしまった。
すると何処からか知らないが、大量の酒が俺の上に降ってきた。

   「うわぁ!?」

    すると俺の声に気がついたマヨアさんが、皆にストップをかけてくれた。

そしてそれを見たレオさんがドジだなと、少し馬鹿にしながら話しかけてきた。

   「おい大丈夫か昴?」

   俺はレオさんに話しかけられているのにもかかわらず、ボーッとしてしまい、レオさんに揺さぶられながらもう一度大丈夫か?と聞かれると、俺はベロベロに酔っ払って上手く呂律が回らない状態で応えた。

  「・・・このぉ、この状況でぇー。んっ、はぁ・・・だいじょーぶ、だとぉ、思ってるんですかぁ!?」
   
   するとレオさんは少し困ったような顔をして、右の頬を指で軽く引っ掻いていた。

  「・・・やべぇーなこれは。すげぇー酔ってるうえになんか若干エロくなってるな」

   俺はマルクに心配をかけるので早く帰りたいと思ってはいたが、何故かは俺にも分からないが、レオさんに甘えた口調で抱っこをせがんだ。

   「責任取ってぇ、レオさんは抱っこして帰ってくださぁーい」

   「・・・ははは、昴君なかなかやるね。だってどうするレオ?」

   「はぁー、仕方ねぇーな。そんなこと平気で俺に言ってくるのお前くらいだぞ」

   「えへへぇー。レオさんにだから言うんですよぉ」

   「分かった分かった」

   そう言ってレオさんはヒョイッと簡単に俺をお姫様抱っこをして、連れて帰ってきてくれた。
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