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第1章 婚約破棄に至るまで
38.
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「さてと。邪魔者はいなくなったことだし」
ラークの背中を見送ったスカーは、くるりと振り返り、そのアクアマリンの瞳をリシュベルへと向けた。
「ねえ、リシュベル。僕はまどろっこしいことが嫌いだから、単刀直入に聞くね。君は今、幸せかい?」
「え⋯⋯」
「ごめんね、変なこと聞いて。もうすぐ結婚するって聞いたから。でも、その割にはちっとも幸せそうじゃないからさ」
スカーの澄んだ瞳に見つめられ、心の内を全て見透かされそうな気がしたリシュベルは、きゅっと唇を噛み締めた。
「⋯⋯」
そんなリシュベルを見てスカーは何を思ったのか、リシュベルから視線を外すと想いを馳せるかのようにどこか遠い目をした。
「⋯⋯僕たち精霊はね、永い永い時を生きるんだ。それこそ永遠に等しい時間を。その中で縁あって契約者という名の愛し子を見つけ、加護を授ける。あいつの父親も加護持ちでね。子供が生まれたって聞いたから、興味本位で見に行ったんだ。そしたら、まだ赤ん坊のあいつは、僕たちを見て笑ったんだ。とっても楽しそうにね。君も知っての通り、この世界で加護持ちは希少な存在。その性質は遺伝するわけではないから、親がそうだからといって、子までそうなるとは限らない。むしろ、そうならないほうが多いね。だから驚いた。昔ならいざ知れず、二代続けての加護持ちだったからね。でも、同時に嬉しかった。この世界に、まだ僕達を必要としてくれる存在がいたんだって。そのとき思ったんだ。この笑顔が曇らなければいいなって。⋯⋯まあ、僕たちの予想を斜め上にいったあいつは、どんどん可愛げのない捻くれた子供に育っていったけどね」
昔を懐かしむかのように自らの記憶を探っていたスカーは、そう言うとふふっと笑った。
リシュベルに向ける天使のように愛らしいその横顔は、どうしてだろう。
笑っているのにーーどこか寂しそう。
どうしてそんな顔をするのか。スカーの視線を辿るとそこには、仏頂面のアレクがいた。
ラークに一言二言声をかけたアレクは、さっさとやれと言わんばかりに、彼に向かって顎をしゃくっている。
彼らとは少し距離があるため、その会話がリシュベル達に届くことはない。
その逆も然りで、スカーのそれも彼らに聞き咎められることはない。
「⋯⋯成長するにつれ、あいつは泣くことはおろか、笑うこともしなくなった。あいつの立場や背負うもの、周りの大人がそうさせたんだけどね。でも、君といるときだけは本当に楽しそうに笑うんだ。本当に同じ人間かって疑いたくなるほどね。あいつを知る人間なら誰もが驚くんじゃないかな」
懐かしそうに昔語りをしていたスカーの瞳が、アレクからリシュベルへと移された。
リシュベルとそう変わらない背を持つ少年の瞳は、必然と、彼女の瞳を真正面から捉えることになった。
決して強い力ではないのに、スカーの澄んだ瞳から目を逸らすことが出来なかった。
瞳には、一切の揶揄いも愉悦もない。
在るのはただ、怖いくらい真剣な眼差しだけだ。
「⋯⋯僕はあいつには幸せになって欲しいんだ。幸せに、笑っていて欲しいんだよ。あいつには、辛いことが多すぎた。だから、あいつが大切に想う君にも、幸せになってほしいんだ。君が笑えばあいつも笑ってくれる。⋯⋯だから、もう一度聞くよ。君は今、幸せかい?」
「私は」
幸せよ。
そう言うつもりだった。
そう言うべきだった。
なのに、その一言は、音にすることもなく。まるで、外に出ることを拒むかのように喉に張り付いてしまった。
幸せだ。幸せなはずだ。
だって、想ってくれる人と結婚するのだから。
たとえそれが今、消えて失くなってしまいそうだとしても。
愛のない結婚が当たり前の貴族世界で。大切に愛しんでくれる人と人生を共にすることがどれほどの奇跡か。それを幸せと呼ばずして、何と呼ぶのか。これ以上を望むというのならきっと、罰が下される。
それなのにどうして、こんなに苦しいのだろう。
どうして、こんなに、泣きたくなるのだろう。
リシュベルは、さらにきつく唇を噛み締めた。
そうでもしないと、今まで耐えてきたものが堰を切ったかのように溢れ出てしまいそうだったから。
リシュベルの答えをじっと待っていたスカーは、彼女から答えを引き出すことを諦めたのか。はたまた、それ以上苦悩する彼女の姿を見ていられなかったのか、徐にその口を開いた。
「ねえ、リシュベ——」
「ラークっ!!!」
何を言おうとしたのか。スカーの言葉は、辺りに響き渡った怒声によってかき消されてしまった。
びくっと肩を震わせたリシュベルは、弾かれたように、その声が発せられた方角へと顔を向けた。
「何やってんだ、お前はっ!! 俺ごと燃やすつもりか、このやろうっ! 殺すぞっ」
見ると、肩を怒らせたアレクが、じりじりとラークに詰め寄る姿が見えた。
「ひぃっ、す、すまなっ。どうも加減が分からなくてっ。そ、その決してわざとじゃっ」
二人の会話からすると、服を乾かそうとしたラークが、どうやらミスをし、アレクごと燃やそうとしたらしい。
よく見ると、アレクの白いシャツには所々、穴が開いていて黒く煤けている。少し離れた場所にいるリシュベル達にも、アレクの身体からもくもくと上がる煙?が見て取れた。いや、あれはアレクの怒りからくる湯気だろうか。それほどアレクは顔を真っ赤にして怒っていた。風に乗って、焦げた匂いがここまで漂ってくる。
「えっと、あの、その、ちまちま乾かすのが面倒くさくてだな。火力を上げれば一気に乾くかなと思ってっ」
ラークは、しどろもどろになりながらも、必死に言い訳を並べ立てる。
だが、そんな言い訳で到底赦せるわけもなく。アレクはなおもラークとの距離を詰める。
一歩一歩ゆっくりと近づいてくるアレクに反して、ラークは一歩、また一歩と後ずさっていく。縮まることのないその距離こそが、二人の安全圏であると言わんばかりに。
「面倒くさい? ほう? そんなに死にたいらしいな、ラーク」
ヒクヒクと頬を引き攣らせているアレクは、笑っているつもりなのだろうか。その黒の瞳を細め、口端を吊り上げているアレクの笑顔が、ラークにとっては、とんでもなく凶悪犯に見える。それもそのはず。アレクの瞳の奥は、全く笑っていないのだから。
一向に縮まらない距離に焦れたのか。チッと舌打ちをしたアレクは、スッと右手を持ち上げると、ラークに向かってその掌を向けた。
「ま、待て。待て待て待てっ。その物騒な手は下ろせっ。やめろっ! 謝るから、なっ!? この通りだっ」
一気にそう捲し立てたラークは、アレクの目の前で、ペコペコと土下座した。
「あーあ、言わんこっちゃない。あのバカめ、アレクごと燃やそうとしたな。まあ、脳筋バカに、繊細な術を使えというほうが無理があったか。まったく、つくづくアレクを怒らせるのが得意なやつだなあ。もういっそのこと感心するね。あれはあいつの特技だな。ま、何の役にも立たないけどね」
呆れ顔で苦笑するスカーの視線の先には、ラークの土下座を目にしても一向に手を下ろす気配のないアレクが、静かな怒りを全身に纏わせていた。
これは本気でヤバいと悟ったラークは、すぐさま立ち上がると、アレクに背を向けて一気に駆け出した。
がしかし、そんなラークを逃すつもりのないアレクは、すぐさま後を追いかけた。
「⋯⋯ふっ、ふふ」
おや。と言いたげに眉を上げたスカーの隣には、込み上げてくる笑いを噛み殺そうとしているリシュベルがいた。
余程、二人の追いかけっこ(ラークにしてみればそんな可愛いらしいものではない)がツボに入ったのか。口と腹を手で押さえているリシュベルは、もう限界というように、プッと吹き出すと、声を上げて笑い出した。
本来ならば、貴族の令嬢が声を上げて笑うことなど無作法だと窘められて然るべきだが、ここには人一倍マナーにうるさい父親も継母もいない。
そうやって笑うリシュベルの顔が眩しく感じたスカーは、そのアクアマリンの瞳を細め、ふっと微笑んだ。
「そうだね。僕は、僕たちは、君のその笑顔が大好きだったんだよ」
昔からね。
「え? 何か言った?」
ぽつりと呟いたスカーの言葉は、楽しそうに笑うリシュベルの耳には届かなかったようで、不思議そうにこちらを見てくる。
「ううん、何でもないよ。⋯⋯ねえ、リシュベル。願わくば、そんな君にあいつの傍にいてほしいと思うよ。ずっと、ね。⋯君は、アレクが好き?」
「へ?」
気の緩んでいたリシュベルは、脈絡のない、突然のスカーの問いかけに不意を突かれ、ぽかんと口を開けた。
ーーえっ、好き? 誰が? 誰を?
頭の中で、スカーの言葉を何度も繰り返したリシュベルは、今度は顔を真っ赤にして狼狽え始めた。
ーー⋯⋯私が? アレクを? 好き!?
「う、ぇぇえええ!? す、すす好きーー!?」
そんなリシュベルの反応に、少し意地悪だったかなと反省したスカーだったが、どうしても彼女の口から聞きたいことがあった。
ごめんね。と心の中で謝りつつも、なおもスカーの追求は続く。
「ねえ、リシュベルは、アレクのことをどう思っているの? 君にとってのアレクはどんな存在?」
ーー私にとってのアレク⋯⋯
彼との出会いから今日までを思い出してみる。決して長い時間ではないが、彼の存在は、確実に自分の中で大きく育っていっている。
「アレクは、その⋯⋯」
ラークの背中を見送ったスカーは、くるりと振り返り、そのアクアマリンの瞳をリシュベルへと向けた。
「ねえ、リシュベル。僕はまどろっこしいことが嫌いだから、単刀直入に聞くね。君は今、幸せかい?」
「え⋯⋯」
「ごめんね、変なこと聞いて。もうすぐ結婚するって聞いたから。でも、その割にはちっとも幸せそうじゃないからさ」
スカーの澄んだ瞳に見つめられ、心の内を全て見透かされそうな気がしたリシュベルは、きゅっと唇を噛み締めた。
「⋯⋯」
そんなリシュベルを見てスカーは何を思ったのか、リシュベルから視線を外すと想いを馳せるかのようにどこか遠い目をした。
「⋯⋯僕たち精霊はね、永い永い時を生きるんだ。それこそ永遠に等しい時間を。その中で縁あって契約者という名の愛し子を見つけ、加護を授ける。あいつの父親も加護持ちでね。子供が生まれたって聞いたから、興味本位で見に行ったんだ。そしたら、まだ赤ん坊のあいつは、僕たちを見て笑ったんだ。とっても楽しそうにね。君も知っての通り、この世界で加護持ちは希少な存在。その性質は遺伝するわけではないから、親がそうだからといって、子までそうなるとは限らない。むしろ、そうならないほうが多いね。だから驚いた。昔ならいざ知れず、二代続けての加護持ちだったからね。でも、同時に嬉しかった。この世界に、まだ僕達を必要としてくれる存在がいたんだって。そのとき思ったんだ。この笑顔が曇らなければいいなって。⋯⋯まあ、僕たちの予想を斜め上にいったあいつは、どんどん可愛げのない捻くれた子供に育っていったけどね」
昔を懐かしむかのように自らの記憶を探っていたスカーは、そう言うとふふっと笑った。
リシュベルに向ける天使のように愛らしいその横顔は、どうしてだろう。
笑っているのにーーどこか寂しそう。
どうしてそんな顔をするのか。スカーの視線を辿るとそこには、仏頂面のアレクがいた。
ラークに一言二言声をかけたアレクは、さっさとやれと言わんばかりに、彼に向かって顎をしゃくっている。
彼らとは少し距離があるため、その会話がリシュベル達に届くことはない。
その逆も然りで、スカーのそれも彼らに聞き咎められることはない。
「⋯⋯成長するにつれ、あいつは泣くことはおろか、笑うこともしなくなった。あいつの立場や背負うもの、周りの大人がそうさせたんだけどね。でも、君といるときだけは本当に楽しそうに笑うんだ。本当に同じ人間かって疑いたくなるほどね。あいつを知る人間なら誰もが驚くんじゃないかな」
懐かしそうに昔語りをしていたスカーの瞳が、アレクからリシュベルへと移された。
リシュベルとそう変わらない背を持つ少年の瞳は、必然と、彼女の瞳を真正面から捉えることになった。
決して強い力ではないのに、スカーの澄んだ瞳から目を逸らすことが出来なかった。
瞳には、一切の揶揄いも愉悦もない。
在るのはただ、怖いくらい真剣な眼差しだけだ。
「⋯⋯僕はあいつには幸せになって欲しいんだ。幸せに、笑っていて欲しいんだよ。あいつには、辛いことが多すぎた。だから、あいつが大切に想う君にも、幸せになってほしいんだ。君が笑えばあいつも笑ってくれる。⋯⋯だから、もう一度聞くよ。君は今、幸せかい?」
「私は」
幸せよ。
そう言うつもりだった。
そう言うべきだった。
なのに、その一言は、音にすることもなく。まるで、外に出ることを拒むかのように喉に張り付いてしまった。
幸せだ。幸せなはずだ。
だって、想ってくれる人と結婚するのだから。
たとえそれが今、消えて失くなってしまいそうだとしても。
愛のない結婚が当たり前の貴族世界で。大切に愛しんでくれる人と人生を共にすることがどれほどの奇跡か。それを幸せと呼ばずして、何と呼ぶのか。これ以上を望むというのならきっと、罰が下される。
それなのにどうして、こんなに苦しいのだろう。
どうして、こんなに、泣きたくなるのだろう。
リシュベルは、さらにきつく唇を噛み締めた。
そうでもしないと、今まで耐えてきたものが堰を切ったかのように溢れ出てしまいそうだったから。
リシュベルの答えをじっと待っていたスカーは、彼女から答えを引き出すことを諦めたのか。はたまた、それ以上苦悩する彼女の姿を見ていられなかったのか、徐にその口を開いた。
「ねえ、リシュベ——」
「ラークっ!!!」
何を言おうとしたのか。スカーの言葉は、辺りに響き渡った怒声によってかき消されてしまった。
びくっと肩を震わせたリシュベルは、弾かれたように、その声が発せられた方角へと顔を向けた。
「何やってんだ、お前はっ!! 俺ごと燃やすつもりか、このやろうっ! 殺すぞっ」
見ると、肩を怒らせたアレクが、じりじりとラークに詰め寄る姿が見えた。
「ひぃっ、す、すまなっ。どうも加減が分からなくてっ。そ、その決してわざとじゃっ」
二人の会話からすると、服を乾かそうとしたラークが、どうやらミスをし、アレクごと燃やそうとしたらしい。
よく見ると、アレクの白いシャツには所々、穴が開いていて黒く煤けている。少し離れた場所にいるリシュベル達にも、アレクの身体からもくもくと上がる煙?が見て取れた。いや、あれはアレクの怒りからくる湯気だろうか。それほどアレクは顔を真っ赤にして怒っていた。風に乗って、焦げた匂いがここまで漂ってくる。
「えっと、あの、その、ちまちま乾かすのが面倒くさくてだな。火力を上げれば一気に乾くかなと思ってっ」
ラークは、しどろもどろになりながらも、必死に言い訳を並べ立てる。
だが、そんな言い訳で到底赦せるわけもなく。アレクはなおもラークとの距離を詰める。
一歩一歩ゆっくりと近づいてくるアレクに反して、ラークは一歩、また一歩と後ずさっていく。縮まることのないその距離こそが、二人の安全圏であると言わんばかりに。
「面倒くさい? ほう? そんなに死にたいらしいな、ラーク」
ヒクヒクと頬を引き攣らせているアレクは、笑っているつもりなのだろうか。その黒の瞳を細め、口端を吊り上げているアレクの笑顔が、ラークにとっては、とんでもなく凶悪犯に見える。それもそのはず。アレクの瞳の奥は、全く笑っていないのだから。
一向に縮まらない距離に焦れたのか。チッと舌打ちをしたアレクは、スッと右手を持ち上げると、ラークに向かってその掌を向けた。
「ま、待て。待て待て待てっ。その物騒な手は下ろせっ。やめろっ! 謝るから、なっ!? この通りだっ」
一気にそう捲し立てたラークは、アレクの目の前で、ペコペコと土下座した。
「あーあ、言わんこっちゃない。あのバカめ、アレクごと燃やそうとしたな。まあ、脳筋バカに、繊細な術を使えというほうが無理があったか。まったく、つくづくアレクを怒らせるのが得意なやつだなあ。もういっそのこと感心するね。あれはあいつの特技だな。ま、何の役にも立たないけどね」
呆れ顔で苦笑するスカーの視線の先には、ラークの土下座を目にしても一向に手を下ろす気配のないアレクが、静かな怒りを全身に纏わせていた。
これは本気でヤバいと悟ったラークは、すぐさま立ち上がると、アレクに背を向けて一気に駆け出した。
がしかし、そんなラークを逃すつもりのないアレクは、すぐさま後を追いかけた。
「⋯⋯ふっ、ふふ」
おや。と言いたげに眉を上げたスカーの隣には、込み上げてくる笑いを噛み殺そうとしているリシュベルがいた。
余程、二人の追いかけっこ(ラークにしてみればそんな可愛いらしいものではない)がツボに入ったのか。口と腹を手で押さえているリシュベルは、もう限界というように、プッと吹き出すと、声を上げて笑い出した。
本来ならば、貴族の令嬢が声を上げて笑うことなど無作法だと窘められて然るべきだが、ここには人一倍マナーにうるさい父親も継母もいない。
そうやって笑うリシュベルの顔が眩しく感じたスカーは、そのアクアマリンの瞳を細め、ふっと微笑んだ。
「そうだね。僕は、僕たちは、君のその笑顔が大好きだったんだよ」
昔からね。
「え? 何か言った?」
ぽつりと呟いたスカーの言葉は、楽しそうに笑うリシュベルの耳には届かなかったようで、不思議そうにこちらを見てくる。
「ううん、何でもないよ。⋯⋯ねえ、リシュベル。願わくば、そんな君にあいつの傍にいてほしいと思うよ。ずっと、ね。⋯君は、アレクが好き?」
「へ?」
気の緩んでいたリシュベルは、脈絡のない、突然のスカーの問いかけに不意を突かれ、ぽかんと口を開けた。
ーーえっ、好き? 誰が? 誰を?
頭の中で、スカーの言葉を何度も繰り返したリシュベルは、今度は顔を真っ赤にして狼狽え始めた。
ーー⋯⋯私が? アレクを? 好き!?
「う、ぇぇえええ!? す、すす好きーー!?」
そんなリシュベルの反応に、少し意地悪だったかなと反省したスカーだったが、どうしても彼女の口から聞きたいことがあった。
ごめんね。と心の中で謝りつつも、なおもスカーの追求は続く。
「ねえ、リシュベルは、アレクのことをどう思っているの? 君にとってのアレクはどんな存在?」
ーー私にとってのアレク⋯⋯
彼との出会いから今日までを思い出してみる。決して長い時間ではないが、彼の存在は、確実に自分の中で大きく育っていっている。
「アレクは、その⋯⋯」
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