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眠る君の横で
しおりを挟む「ありえないんだけど」
寝息を立て始めたルディアーナに文句を言うのはレイドである。
声は勿論、地声である。
その声は全く届いていないようで規則正しい呼吸音のみが返って来る。
何が、お姉さまだ。
本当に、どこまで妄信してるの。
レイドは溜め息をつく。
本当に、君の慕うお姉さまは腹黒くて悪戯好きで、女神とは無縁な性格なんだよと言ってやりたい。
でなければ王太子妃の座なんて狙わない。
残虐性も人を好んで傷つける趣味はないが、人の感情を引っ掻き回すのが大好きで、気に入らない恋人達を引き裂いたり、ちょっとした悪戯をして傍観するのが大好きな性格の悪い姉である。
そんな性格の悪い姉の姿を借りてルディアーナに近付く自分も相当だとは思うが。
レイドはルディアーナのあどけない寝顔を見つめる。
「ギャップがあり過ぎるんだよね」
普段はつんっと澄まして笑顔すら見せない彼女が自分の下できゃんきゃんと啼きながら頬を赤くして悶える姿にレイドは堪らない気持ちになった。
肌はどこも滑らかでしっとりと手の平に吸い付くようで、柔らかく気持ちが良かった。じんわりと汗ばんで匂い立つ彼女の匂いと石鹸の匂いが混ざり合い、欲情を煽った。初めての刺激に震える彼女の身体は魚みたいにびくびくと跳ねてどうすればもっと身体が跳ねるのか試したくなってしまう。双丘に咲く愛らしい蕾を口に含み、しこって弾力を得た蕾を舌先で転がすのはとても気持ち良くて興奮した。ずっと口に含んでおきたいぐらいだった。
『怖いの』
涙ぐみながら言われて腰にキた。
ただでさえ、艶っぽく乱れているのに嗜虐心と征服欲を誘う文句に食い散らかしてやろうかと思ったほどだが、よく堪えた。
そもそも、女を前に欲望を抑え込むなんてことを今までしたことがなかったレイドもこの状況に戸惑っていた。
今も下腹部の熱が収まらず、主張したまま燻っている。
幼少期から今まで女性に嫌悪感しか抱かなかったレイドは自分から女性に触れたことがない。無理やり腕を掴まれて豊満な胸を押し付けられたり、顔を埋めさせられたことはあるが、興奮することはなかった。女と好んで触れ合う男にも呆れて嫌悪感を持つぐらいだったが、今日でその考えは払拭できたと感じる。
二人っきりで過ごせると思うとそれだけで胸が弾む。
腕の中に閉じ込めれば甘い香りと、柔らかさに心が震える。
自分にはないルディアーナの膨らみに触れれば、その心地良さにもっと貪欲になり、情欲に火が付いた。
もっと近くに行きたい、もっと深いところで弄り合いたいと無意識に身体が動くのだ。
これが自分に眠っていた雄の本能なのだと思い知らされた。
しかし、ここで自分勝手に動くわけにはいかない。
ただでさえ、男に嫌悪感を持っているルディアーナだ。方法を間違えればそこで彼女からの信頼は二度と得ることは出来なくなるだろう。
だから今夜は彼女の望み通り、あそこで特訓は止めた。最もらしい理由で添い寝の機会も得たことだし、上出来だろう。
ふと視線を落とすとルディアーナの可愛らしい唇が視界に入った。それだけで、涎を垂らして喘ぐ彼女を思い出してしまう。
レイドは脳裏に焼き付いたルディアーナの姿を掻き消し、眠るルディアーナを優しく抱き締める。
「女なんて嫌いだよ」
でも相手が君であるだけでこんなにも違うんだね。
レイドは心の中で呟く。
すーっと深く鼻から息を吸い込めばルディアーナのほのかに甘い香りが胸の中を満たす。
規則正しい呼吸音に耳を澄ましながらレイドは目を閉じた。
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