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特別なキスと初めてのキス
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夜はあっという間に更けてしまった。
ルディアーナは食事を済ませ、少し前に入浴を終えた所である。
王太子殿下の侍女は下級使用人だった時ほど浴場に気を遣わなくても良いのがありがたい。
下級使用人の浴場は狭く、人も多くて密になりやすい。いつも早朝か、夜更けの人がいない時間帯に手早く済ませていたが、侍女になってからは広く綺麗な浴室を使うことができる。いくつかある浴室を少ない人数で時間を決めて使用するので人を会うことがない。
肌を見られることがないので安心して入浴できるのはありがたいことだった。
部屋も広く、寝台や机も質の良いものが置かれている。
寝台の傍に置かれた小さいテーブルにランプの灯りと眺めながら心を落ち着かせようとするが難しい。
するとコンコンと扉が叩かれる。
「ルディア」
扉の向こうから声がする。
開ければシェリルに扮したレイドが籠を腕にぶら下げてやって来た。
「お、お疲れ様です」
「うん。お疲れ様」
レイドを招き入れてルディアーナは言う。
「これ、一緒にどうかと思って」
ベッドに腰を降ろしたレイドはそう言って、籠から一本のボトルを取り出す。
「何?」
「ジュースだよ。君、お酒が飲めるか分からなかったから」
一緒に持って来たグラスにオレンジの液体を注ぐ。爽やかなオレンジの香りが鼻に広がった。
「ありがとう」
手渡されたグラスを受け取り、二人はグラスを合わせた。
「美味しいわ」
「そうでしょ? うちの領地で採れた早摘みのオレンジを絞ったものだよ」
爽やかな香りと酸味が心地良い。後味はすっきりとした甘さを残し、またすぐに飲みたくなる。
「お酒は飲めるの?」
「あんまり飲んだことないの。自分がどれだけ飲めるのかも分からないわ」
「そう。でも人前で無理に飲まないことを勧めるよ」
「どうして?」
「ウィルモートは王妃に似て下戸だし、ソールフレント王も宴でもあまり酒を飲まないからね」
王妃はソールフレント国王の妹だ。ルディアーナにとっては叔母に当たる人である。
「彼らがお酒に弱いなら、私も強くないかもね」
ルディアーナはオレンジの香を楽しみながら言う。
とても美味しくてあっという間に飲み干してしまった。
「ご馳走様。美味しかったわ」
「それは良かった」
空になった二つのグラスをベッド脇のテーブルに置き、レイドは隣に来るように言う。
一瞬躊躇うがルディアーナはレイドの隣に腰を降ろすと、早速レイドの腕が腰に回され、引き寄せられた。
当然のように大きな手が頭を撫で、長い指が髪を梳き、頬に触れる。
「んっ」
小さい声を零しながら、レイドの指や手の動きに耐える。
すると少しだけ身体を離したレイドは言った。
「少し慣れたみたいだから一先ずは合格にしようか」
「本当に⁉」
合格と言われ、すぐに『特訓』のことだと察する。
この心臓に悪い特訓から解放される!
ルディアーナは頬を緩めた。
「一先ず、だよ。第一段階はってこと」
「第一段階……?」
緩めた頬がそのまま引き攣って固まる。
「そうだよ。これで次の段階に進めるね」
普段、黄色い声を上げる女性達に見せるような笑みを浮かべて言う。
この顔の裏でレイドは女性をハエのように思っているのを自分は知っている。
作った笑みを向けられ、ルディアーナは凍りつく。
「あの、この特訓って……何段階まであるの?」
「うーん……全部で五段階ぐらいかな」
指折り数えるレイドにルディアーナは涙目になる。
「そ、そんなに? これ以上する必要ある? ってか、他に何するのよ⁉」
手を握られたり、手や額、頬などの挨拶程度のキスにも慣れたし、抱擁にも耐えられる。
ルディアーナが接待をする上で想定できることは一通り行ったはずだ。
これ以上って何⁉
半泣きで訴えるルディアーナにレイドは薄く笑う。
「それをこれから教えてあげるんじゃない」
その笑みが絶妙に色っぽいものだから、背筋がぞわぞわした。
「け、結構ですっ!」
「あれ、憧れのお姉さまの役に立つんじゃなかったけ?」
その言葉に弱いのを知ってレイドはワザと言うのだ。
「君って絶対に『出来ない』とは言わないよね。優等生って感じ」
そう言ってルディアーナの眼鏡を取り上げる。
「ちょっと、返してよっ」
「どうせ度なんて入ってないんだから、なくても同じでしょ」
取り上げた眼鏡をグラスの側に置き、レイドはルディア―ナを強く引き寄せる。顔が近付き、夕方に薔薇を見た時のことを思い出す。
レイドはルディアーナの小さい顔を手で優しく包み込み、頬を撫でる。頬から顎のラインを辿り、指先は唇に向かう。
レイドがこれから何をしようとしているのか察し、ルディアーナは尻込みする。
親指の腹で赤い唇を擽るように撫でられれば肌が粟立つ。
「ほら、目閉じて」
妖しさを秘めたエメラルドの瞳がルディアーナを見つめる。
そんな風に言われて素直に目を閉じるルディアーナではない。
「む、無理! だって……私……」
「何?」
「き、キス……したことないんだものっ!」
ルディアーナは勢いで言ってしまう。
自分で申告しておいてなんだが、凄く恥ずかしい。
それをキョトンとした顔でレイドは見ていた。
「唇へのキスは……好きな人とするものよね?」
「まぁ……そうだね……」
そう言われればそうとしか言えないが、本来はこういう男女の触れ合いが夫婦になるもの同士しか許されない行為であるとことを彼女は失念しているのだろうか。
望まない結婚をした者は望まずこういった行為をするし、行為の過程で好きでなくてもキスをする。ルディアーナの中では最愛の人とのみ、キスは許されるらしい。
まるで少女のような可愛らしい思考回路である。
「貴方はしたことあるの?」
キスの経験はあるのか、とルディアーナに問われるとレイドは考え込む。
「……思い返せば……されたことはあっても、自分からしたことはないかな」
その言葉にルディアーナは目を見開いて驚きの表情を浮かべる。
「された……? 無理やりってこと……?」
「まぁ、そういうこともあったね」
ルディアーナは胸が苦しくなり、表情を曇らせた。
レイドの女性不信の理由を聞いてしまったため、望まぬ行為を無理やり迫られてしまったのだろうと解釈した。
「女性不信にもなるわね……辛かったわよね」
まだ幼いレイドが女性に迫られ、無理やり行為に及ばれそうになる
場面を想像してしまい、ルディアーナは涙ぐむ。
「何で君が泣くのさ」
ぶっきらぼうに言って、指の腹でルディアーナの涙を払う。
呆れ声に反してルディアーナに触れる指先はとても優しく、心が
ざわつく。
「ねぇ、提案なんだけど」
「提案?」
突然のレイドの言葉にルディアーナは首を傾げる。
「本当のキス、一緒に試してみない?」
「は? はい?」
ルディアーナは目をパチパチと大きく瞬きして、間の抜けた声を出す。
「今思えば、僕は自分からキスしたいと思ったことないんだよね」
「う、うん……で?」
女性不信なのだから、そう思ってもおかしくないが、それが何故『一緒に試す』に繋がるのだろうか。
「どうせ君はこの特訓で遅かれ早かれ相手が誰でもファーストキスは済ませなきゃならないんだし」
「うっ」
そもそも普通ならもっと早い段階で済ませているとレイドは付け加えた。
「僕も、君とならいいよ」
君とならキスしたい、と言われているようだった。
他の女性であれば、女嫌いの男が自分には惚れていると勘違いしてしまう発言だ。
「好きな相手とのキスは特別な味、なんてよくいうけど。僕はそんな特別なキスってしたことない。そんな風に思った相手もいなかったから」
レイドはルディアーナの顔を覗き込む。
エメラルドの瞳がルディアーナを見つめていた。
瞳の色が濃く、深い色に染まったように見える。
「君は初めてなんでしょ? なら、僕とキスがどんなものか、試してみようよ」
濃い色の奥で熱情が揺れていた。
熱っぽい瞳で見つめられ、ルディアーナの胸がどくんと跳ねる。
「ま、待って! そのっ、あの……少し、心の準備が…っ!」
「準備は良いよ。しなくても」
どういうこと⁉
話を聞けよ!
心の準備がしたいと言ったルディアーナの気持ちを完全に無視したレイドにルディアーナは反発する。
レイドの腕の中で抵抗するがそんな抵抗を物ともせずに、レイドはルディアーナの赤い唇に喰らい付く。
「んんっ⁉」
柔らかい唇の感触にルディアーナは驚いて飛び上がる。
これが……キス?
レイドに唇を強く押し付けられたまま頭を押さえ付けられ、身動きが取れない。
唇から感じるレイドの熱がルディアーナに伝わって来る。
息苦しさを感じて、背中を叩けば、ようやく息をすることを許される。
「はあ、はぁ……」
「息は鼻でして」
肩で息をするルディアーナにレイドは諭すようにそれだけ言うと再び唇を重ねて来る。レイドの唇がルディアーナの上唇や下唇を食み、背中にぞくぞくと何かが走り抜ける。
「んっ⁉ ふっ……んんっ!」
何度も啄むように口付けられ、ルディアーナの口から籠るような息が漏れる。
鼻で呼吸をしてもやはり息苦しかった。苦しくて、身体が熱い。
身体が熱でうかされているような状態になり、頭がくらくらする。
「上手だね」
よしよしと大きな手が頭を撫でられれば、息苦しさと緊張から少しだけ解放される。しかし、それでは終わらなかった。
「少し口を開けて」
レイドの指示はまだ続く。
「んんっ⁉」
再びレイドが唇を押し付けてきたかと思うと、舌を強引にねじ込んで来る。ルディアーナの唇を割り、入り込んで来た肉厚の舌が口腔内を探り始めた。
「確かに、君とのキスは甘いかもしれない」
もっと確かめさせて? 艶のある声で囁かれ、ルディアーナの肌は一層熱を持った。
ルディアーナは食事を済ませ、少し前に入浴を終えた所である。
王太子殿下の侍女は下級使用人だった時ほど浴場に気を遣わなくても良いのがありがたい。
下級使用人の浴場は狭く、人も多くて密になりやすい。いつも早朝か、夜更けの人がいない時間帯に手早く済ませていたが、侍女になってからは広く綺麗な浴室を使うことができる。いくつかある浴室を少ない人数で時間を決めて使用するので人を会うことがない。
肌を見られることがないので安心して入浴できるのはありがたいことだった。
部屋も広く、寝台や机も質の良いものが置かれている。
寝台の傍に置かれた小さいテーブルにランプの灯りと眺めながら心を落ち着かせようとするが難しい。
するとコンコンと扉が叩かれる。
「ルディア」
扉の向こうから声がする。
開ければシェリルに扮したレイドが籠を腕にぶら下げてやって来た。
「お、お疲れ様です」
「うん。お疲れ様」
レイドを招き入れてルディアーナは言う。
「これ、一緒にどうかと思って」
ベッドに腰を降ろしたレイドはそう言って、籠から一本のボトルを取り出す。
「何?」
「ジュースだよ。君、お酒が飲めるか分からなかったから」
一緒に持って来たグラスにオレンジの液体を注ぐ。爽やかなオレンジの香りが鼻に広がった。
「ありがとう」
手渡されたグラスを受け取り、二人はグラスを合わせた。
「美味しいわ」
「そうでしょ? うちの領地で採れた早摘みのオレンジを絞ったものだよ」
爽やかな香りと酸味が心地良い。後味はすっきりとした甘さを残し、またすぐに飲みたくなる。
「お酒は飲めるの?」
「あんまり飲んだことないの。自分がどれだけ飲めるのかも分からないわ」
「そう。でも人前で無理に飲まないことを勧めるよ」
「どうして?」
「ウィルモートは王妃に似て下戸だし、ソールフレント王も宴でもあまり酒を飲まないからね」
王妃はソールフレント国王の妹だ。ルディアーナにとっては叔母に当たる人である。
「彼らがお酒に弱いなら、私も強くないかもね」
ルディアーナはオレンジの香を楽しみながら言う。
とても美味しくてあっという間に飲み干してしまった。
「ご馳走様。美味しかったわ」
「それは良かった」
空になった二つのグラスをベッド脇のテーブルに置き、レイドは隣に来るように言う。
一瞬躊躇うがルディアーナはレイドの隣に腰を降ろすと、早速レイドの腕が腰に回され、引き寄せられた。
当然のように大きな手が頭を撫で、長い指が髪を梳き、頬に触れる。
「んっ」
小さい声を零しながら、レイドの指や手の動きに耐える。
すると少しだけ身体を離したレイドは言った。
「少し慣れたみたいだから一先ずは合格にしようか」
「本当に⁉」
合格と言われ、すぐに『特訓』のことだと察する。
この心臓に悪い特訓から解放される!
ルディアーナは頬を緩めた。
「一先ず、だよ。第一段階はってこと」
「第一段階……?」
緩めた頬がそのまま引き攣って固まる。
「そうだよ。これで次の段階に進めるね」
普段、黄色い声を上げる女性達に見せるような笑みを浮かべて言う。
この顔の裏でレイドは女性をハエのように思っているのを自分は知っている。
作った笑みを向けられ、ルディアーナは凍りつく。
「あの、この特訓って……何段階まであるの?」
「うーん……全部で五段階ぐらいかな」
指折り数えるレイドにルディアーナは涙目になる。
「そ、そんなに? これ以上する必要ある? ってか、他に何するのよ⁉」
手を握られたり、手や額、頬などの挨拶程度のキスにも慣れたし、抱擁にも耐えられる。
ルディアーナが接待をする上で想定できることは一通り行ったはずだ。
これ以上って何⁉
半泣きで訴えるルディアーナにレイドは薄く笑う。
「それをこれから教えてあげるんじゃない」
その笑みが絶妙に色っぽいものだから、背筋がぞわぞわした。
「け、結構ですっ!」
「あれ、憧れのお姉さまの役に立つんじゃなかったけ?」
その言葉に弱いのを知ってレイドはワザと言うのだ。
「君って絶対に『出来ない』とは言わないよね。優等生って感じ」
そう言ってルディアーナの眼鏡を取り上げる。
「ちょっと、返してよっ」
「どうせ度なんて入ってないんだから、なくても同じでしょ」
取り上げた眼鏡をグラスの側に置き、レイドはルディア―ナを強く引き寄せる。顔が近付き、夕方に薔薇を見た時のことを思い出す。
レイドはルディアーナの小さい顔を手で優しく包み込み、頬を撫でる。頬から顎のラインを辿り、指先は唇に向かう。
レイドがこれから何をしようとしているのか察し、ルディアーナは尻込みする。
親指の腹で赤い唇を擽るように撫でられれば肌が粟立つ。
「ほら、目閉じて」
妖しさを秘めたエメラルドの瞳がルディアーナを見つめる。
そんな風に言われて素直に目を閉じるルディアーナではない。
「む、無理! だって……私……」
「何?」
「き、キス……したことないんだものっ!」
ルディアーナは勢いで言ってしまう。
自分で申告しておいてなんだが、凄く恥ずかしい。
それをキョトンとした顔でレイドは見ていた。
「唇へのキスは……好きな人とするものよね?」
「まぁ……そうだね……」
そう言われればそうとしか言えないが、本来はこういう男女の触れ合いが夫婦になるもの同士しか許されない行為であるとことを彼女は失念しているのだろうか。
望まない結婚をした者は望まずこういった行為をするし、行為の過程で好きでなくてもキスをする。ルディアーナの中では最愛の人とのみ、キスは許されるらしい。
まるで少女のような可愛らしい思考回路である。
「貴方はしたことあるの?」
キスの経験はあるのか、とルディアーナに問われるとレイドは考え込む。
「……思い返せば……されたことはあっても、自分からしたことはないかな」
その言葉にルディアーナは目を見開いて驚きの表情を浮かべる。
「された……? 無理やりってこと……?」
「まぁ、そういうこともあったね」
ルディアーナは胸が苦しくなり、表情を曇らせた。
レイドの女性不信の理由を聞いてしまったため、望まぬ行為を無理やり迫られてしまったのだろうと解釈した。
「女性不信にもなるわね……辛かったわよね」
まだ幼いレイドが女性に迫られ、無理やり行為に及ばれそうになる
場面を想像してしまい、ルディアーナは涙ぐむ。
「何で君が泣くのさ」
ぶっきらぼうに言って、指の腹でルディアーナの涙を払う。
呆れ声に反してルディアーナに触れる指先はとても優しく、心が
ざわつく。
「ねぇ、提案なんだけど」
「提案?」
突然のレイドの言葉にルディアーナは首を傾げる。
「本当のキス、一緒に試してみない?」
「は? はい?」
ルディアーナは目をパチパチと大きく瞬きして、間の抜けた声を出す。
「今思えば、僕は自分からキスしたいと思ったことないんだよね」
「う、うん……で?」
女性不信なのだから、そう思ってもおかしくないが、それが何故『一緒に試す』に繋がるのだろうか。
「どうせ君はこの特訓で遅かれ早かれ相手が誰でもファーストキスは済ませなきゃならないんだし」
「うっ」
そもそも普通ならもっと早い段階で済ませているとレイドは付け加えた。
「僕も、君とならいいよ」
君とならキスしたい、と言われているようだった。
他の女性であれば、女嫌いの男が自分には惚れていると勘違いしてしまう発言だ。
「好きな相手とのキスは特別な味、なんてよくいうけど。僕はそんな特別なキスってしたことない。そんな風に思った相手もいなかったから」
レイドはルディアーナの顔を覗き込む。
エメラルドの瞳がルディアーナを見つめていた。
瞳の色が濃く、深い色に染まったように見える。
「君は初めてなんでしょ? なら、僕とキスがどんなものか、試してみようよ」
濃い色の奥で熱情が揺れていた。
熱っぽい瞳で見つめられ、ルディアーナの胸がどくんと跳ねる。
「ま、待って! そのっ、あの……少し、心の準備が…っ!」
「準備は良いよ。しなくても」
どういうこと⁉
話を聞けよ!
心の準備がしたいと言ったルディアーナの気持ちを完全に無視したレイドにルディアーナは反発する。
レイドの腕の中で抵抗するがそんな抵抗を物ともせずに、レイドはルディアーナの赤い唇に喰らい付く。
「んんっ⁉」
柔らかい唇の感触にルディアーナは驚いて飛び上がる。
これが……キス?
レイドに唇を強く押し付けられたまま頭を押さえ付けられ、身動きが取れない。
唇から感じるレイドの熱がルディアーナに伝わって来る。
息苦しさを感じて、背中を叩けば、ようやく息をすることを許される。
「はあ、はぁ……」
「息は鼻でして」
肩で息をするルディアーナにレイドは諭すようにそれだけ言うと再び唇を重ねて来る。レイドの唇がルディアーナの上唇や下唇を食み、背中にぞくぞくと何かが走り抜ける。
「んっ⁉ ふっ……んんっ!」
何度も啄むように口付けられ、ルディアーナの口から籠るような息が漏れる。
鼻で呼吸をしてもやはり息苦しかった。苦しくて、身体が熱い。
身体が熱でうかされているような状態になり、頭がくらくらする。
「上手だね」
よしよしと大きな手が頭を撫でられれば、息苦しさと緊張から少しだけ解放される。しかし、それでは終わらなかった。
「少し口を開けて」
レイドの指示はまだ続く。
「んんっ⁉」
再びレイドが唇を押し付けてきたかと思うと、舌を強引にねじ込んで来る。ルディアーナの唇を割り、入り込んで来た肉厚の舌が口腔内を探り始めた。
「確かに、君とのキスは甘いかもしれない」
もっと確かめさせて? 艶のある声で囁かれ、ルディアーナの肌は一層熱を持った。
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