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図書館で二人、秘密と取引
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パーティーから一夜明けて、城内は落ち着きを取り戻しつつあった。
ルディアは客室からシーツなどのリネン類を回収し、洗濯をしていた。何せ大きいシーツは洗うのに時間が掛かり、水を吸って重くなるので体力がいる。一枚、二枚ではないので半日は掛かる大仕事だ。
ルディアと数名の使用人達で行い、後は干すだけだ。
雲一つない青空で日も長く、気温も高いため、夕方には乾くだろう。
「みんなお疲れ様」
「ルディアもお疲れ」
「いやー、大変だったね」
「いや、本当に。宴がつつがなく終わったのは良かったけどね」
ルディアと事情を知るニアはその言葉に苦笑いだ。
みんなの宴はつつがなく終わったようで何よりだ。
昨晩の出来事を思い返してルディアは気が重くなる。
一晩明けて、冷静さを取り戻した今であれば、あの時レイドが助けてくれなかったらと思うとゾッとする。
もう考えないようにしよう。
ルディアは頭を振り、思考を掻き消す。
「みんな、あとお願いしますね。私とニアは上がりますから」
ルディアはここ数日働き詰めだったので今から休暇に入る。
「良いよ、お疲れ様ー!」
「二人共、ゆっくり休んでね」
「あーん、私も一緒に休みたい」
ルディアとニアは残りの三人に任せて引き上げた。
「疲れたね。私、シーツの洗濯が一番嫌い」
廊下を歩きながらニアは凝った肩や腕を回しながら言う。
「私は適当にサボれるから嫌いじゃないわ」
「それはあるわね。長時間拘束されるから早めに終わらせてサボるのは好きかも」
ルディアとニアは笑い合いながら使用人宿舎に戻る。
「ルディアは角部屋で良いなぁ」
ルディアの部屋は奥の角部屋で隣の部屋は先日までメイドが使っていたが、辞めてしまったので空室だ。
ニアはその空室の隣部屋である。
「部屋交換しても良いよって言ってるじゃない」
「面倒で無理~」
そう言ってニアは自室の扉を開けた。
「相変わらずね……ちょっと整理した方が良いと思う」
使用人部屋は決して広くはない。簡素なベッドに簡素な机と椅子と狭いクローゼットは備え付けで置いてあるのでそれだけで狭く感じる。
しかし、ニアの私物はクローゼットには収まりきらずに溢れている。
おしゃれが好きな彼女は服や帽子、アクセサリー、化粧品も多く、机の上に置ききれていない。
「そうなんだけどね……捨てられないのよね。苦手なのよ、整理整頓が」
ニアが苦笑いで頬を掻く。
「……引っ越し準備が出来たらいつでも言って」
ルディアは部屋の場所に拘りはない。ここにいる使用人達はみんな控えめで他人に配慮出来る人達がほとんどだからだ。
ニアと部屋を交換しても問題はない。
「気長に待ってて頂戴」
遠い目をしてニアは答える。
「ルディアは午後から何をするの?」
「図書館で翻訳の作業をするわ」
「ちょっと休みなよ。本当に倒れちゃうわよ?」
「好きでやってることだからね。ニアは何をする予定なの? あ、聞いたらマズいかしら?」
ルディアが言うと、ニアは首を横に振る。
「全然。聞いてくれても大丈夫よ、ただの買い物だから」
「今から?」
「今日は街の友人のお家に泊めてもらうから大丈夫よ」
「そうなの。良かったわ。楽しんできてね」
「ありがとう! じゃあ、またね」
ニアが扉の向こうに消えたのでルディアも自室に戻る。
何だか先程のニアお部屋を見た後だと自分の部屋がやけに広く感じるのはきっと気のせいだ。
服だけを着替えて、鏡で自分の顔を覗き込む。
長い髪を編んで二つに分けただけで、飾り気のない髪型に、丸い大きな眼鏡は地味で可愛げも色気も微塵も感じられない。
「よし」
男の恋愛対象から徹底的に外れたいルディアは可愛らしい服も髪飾りやアクセサリーも身に着けない。
地味で良い。
そうすればルディアを性的な対象に見る者も減る。
男に嫌悪感を持つルディアは男に好意を持たれる事も苦手だった。
男の様な格好をするつもりはない。けれども他の女性のように男性の視線を惹き付けるような装いをあえてする必要はない。
ルディアは食堂で簡単に食事を済ませて王宮の中にある図書館に向かった。
ルディアは使用人の仕事以外にも本を翻訳する仕事をしている。
隣国ソールフレントがこのシェイスリン国の属国になり二十五年が経過した。それ以前の二国間は和平を結ぶ対等な関係にあったが、ソールフレントの先代国王が軍事侵略を目論み、国境付近に侵攻を始めたがソールフレント現王とシェイスリン国現王が手を組んで食い止めた。
ソールフレント現王は属国になることと妹姫をシェイスリン国に嫁がせることを条件に戦争賠償を減らして、民と国を守った。
故にシェイスリン国現王妃はルディアの叔母に当たる人だ。
まぁ、会ったことはないし、お目に掛かれる立場でもない。
シェイスリン国の言語をソールフレントは公用語として広まりつつあるが、既にソールフレント語が染みついた民はなかなか新しい言語を習得するのは困難だ。逆にシェイスリン国の者はソールフレントの文字で書かれた資料や本の翻訳に手間取っている。
ルディアに任された仕事は国家機密に触れないような、当たり障りのない文書の翻訳である。
辞書は必要ないが、念の為に辞書や資料が揃っている図書館で作業をする。
作業が終わればそのまま政務室の資料係に直行して翻訳文書を渡せばいい。
ルディアは作業を開始し、人の気配がない図書館でペンを走らせた。
今回は分量が少ないから、一時間ぐらいで終わりそうね。
ペンは止まることなく、文字を書き連ねていく。
「終わったー」
しっかり一時間が経過した。ルディアはペンを置いて身体を伸ばす。
大した文量でなくてもずっと同じ姿勢で作業をしていると身体が凝る。
すぐに図書室を出ようと思ったが、ふと沢山の本が並ぶ棚達に視線が行く。高い壁にぎっしりと隙間なく設置された棚に本が詰まっている。四方を本棚に囲まれた空間は本好きのルディアにとって最高の場所だ。
ルディアは翻訳した文書を腕に抱き、本棚を眺めた。森の中に入り込んだ子供のように好奇心を膨らませて奥へと進む。
部屋の中心には国の歴史や法律に関する本が並び、奥へと進むにつれて俗物的な読み物が増える。
「ん?」
目に入ったのは赤い背表紙が綺麗な本だ。
『美しい百合の恋人達』と記されている。
背表紙の下には貸し出し可の印がある。
どんな内容か気になり、手に取る。面白そうだったら借りて行こう。
ルディアは下級使用人であるが、翻訳の仕事にも従事しているため、自由に図書館を利用する許可が下りている。
小説を手にして、始めの項に目を通す。
「ん? 少女達の秘密……の恋愛?」
ルディアは思わず本を閉じて辺りを見渡し、人の気配がないことを確認した。
「ど、どういうこと……?」
内容はヒロインが年上の女性に恋をし、秘密の関係を築くという衝撃的な内容だった。実際にそういう同性同士の恋愛があることは知っている。男色という言葉もあるし、たまに耳にする。しかし、女性同士の恋愛はあまり聞いたことがない。そしてそういった読み物があることにも衝撃を受けた。
「彼女達はどうなるの……?」
お互いを思い合う少女達。だが、ヒロインの想い人である女性は好きでもない男性の元へと嫁ぐことになる。避けられない結婚に悲しむ二人の少女達。一夜の思い出として肌を重ね―――。
「君、そういうのが趣味なの?」
「きゃあっ」
ルディアは驚いて声を上げる。
急に背後に現れた気配に心臓が跳ね、本を放り投げてしまう。
「うるさいよ」
そう言いながらルディアが落とした本を拾い上げたのはあろうことか、レイド・フォンスティカである。
相変わらず、無駄に美しい顔と立ち姿だ。
シェリルと同じ顔なのだから美しいのは当たり前だが男のクセにこんなに綺麗だなんて意味が分からない。
気怠そうな雰囲気も不機嫌そうな顔も色っぽく見えるのはルディアが疲れているからだろう。
ニアの忠告通り、部屋で休んでいれば良かった。
「『美しい百合の恋人達』……?」
「か、返してっ!」
はっとルディアは腕を伸ばすが、レイドはひょいっと本を高々と上に掲げて、小説の中身を探る。
ルディアよりも頭一つ分以上に背の高いレイドに腕の長さもとう全叶うわけもない。懸命に伸ばした腕も空振りだ。
「女性同士の恋愛もの? 君、こういうのが趣味なの?」
「違います……たまたま手に取ったものがそれで……」
「ふーん。そう」
あまり見ない内容だったから続きが気になっただけだとルディアが言うと興味なさげにレイドは言う。
「君の恋愛嗜好とは関係ないんだ?」
「ありません」
「そう」
きっぱりと言い切るルディアにレイドはまたもや興味なさげな言葉を返す。
「借りるの?」
「借りません」
ルディアは正直内容が気になる小説を棚に戻す。
では、これで。
失礼しようとするルディアは棚に縫い留めた。
「昨日はよくもやってくれたね?」
レイドが低い声で囁くように言う。
「何のことでしょうか?」
素知らぬ顔でルディアは言う。
逃げようとしても棚を背にしたルディアは正面にいるレイドの腕が檻のようになっていて逃げられない。
この腕をへし折って逃げてしまいたい。
感情を封印して、顔の側に置かれた手をルディアは睨む。
「僕が女嫌いなの知っていてああいうことするの? 本当に腹立つからやめてくれる?」
低い声でレイドは言う。その声には苛立ちと憤りが含まれている。
眉根を寄せて不機嫌顔で迫るレイドにルディアは驚く。
「え? 女嫌いなんですか?」
「知らなかったの?」
嫌そうな顔をして一層不機嫌になるレイドを前にルディアは戸惑う。
そんな話は初耳だ。
そもそも、女性には基本的に愛想の良い男だ。
色めき立つ女性達に微笑み、給仕の者達にだってそれを忘れない。
そうすると女性達は身分に関係なく彼の虜になる。
自ら進んで女性に好かれるようなことをしているというのに、どの口が『女嫌い』だというのか。
「男色の噂は聞きましたが」
「え、何それ? 初耳なんだけど」
今度は引き気味でレイドは言う。
自身でも知らなかった自分の噂にショックを受けている。
気分を害することを言ってしまったかもしれない。
「申し訳ありませんでした」
「それは他の女に給仕を任せて逃げたことへの謝罪?」
「男色の噂をお耳に入れてしまったことについての謝罪です」
ルディアの言葉にレイドは苦虫を噛み潰したような表情をする。
本当に、この男のどこが良いのだろうか。
顔はシェリルに似て美しく、手足も長くてスタイルも良い。
しかし、愛想を振りまいておきながら、鬱陶しから嫌いだと言う腹黒だ。
今の顔を見れば千年の恋も一瞬で……冷めないな。
不機嫌な表情ですらどこか色っぽいこの男だ。新たな一面を見せてくれたと逆に恋が盛り上がる可能性が高い。
「昨晩の件につきましても申し訳ありませんでした」
「……ちなみに、どうして他の女に任せたわけ?」
「…………疲れておりました。あのままでは粗相をしそうでしたので」
ルディアは視線を逸らして言い訳をする。
「……嘘つき」
急に近くなった声にルディアは身体を強張らせる。
「ひっ」
伸ばしていた腕を折り、ぐっとルディアとの距離を縮めてきた。
悪戯っぽい表情は彼の色気を増幅させているようでルディアは反射的に逃げようとするが、レイドの長い手足が檻となりルディアを閉じ込める。
「どうせ僕から逃げる口実でしょ。そう言えば誰も君を責めないし、僕への給仕をしたい者はいくらでも捕まるしね」
バレてる……。
しかも自分の男としての評価が高いことをしっかりと自覚している。
ルディアは視線を泳がせながらどうやってこの場をやり過ごすか思考を巡らす。
ここは素直に謝るのが吉かしら?
相手は侯爵の地位を約束された人だ。王太子の信頼も厚い。誰かの耳に入る前にここで因縁は断ち切った方が良さそうだ。流石にこの男もいくら私のことが嫌いだからといっても殺しはしないはずだ。
生きてさえいればどうにかなる。
「も、申し訳ありませんでした」
ルディアは謝罪の言葉を口にする。
これで気が収まればいいと思っていたが、考えが甘かった。
「それで終わり? 許すわけないでしょ」
こいつ! 何なの? 土下座でもしろってこと⁉
しかし土下座したところで、君の土下座に価値なんてないよ、とか言われそうだ。いや、そうに違いない。
ルディアは拳を握り締めて怒りを抑える。
「……ではどうしろと?」
マズい。怒りで顔が引きつっているのが分かる。落ち着け、私。
「僕のこと、二度と裏切らないってここで誓って」
じゃなきゃ許さない。
レイドは鋭い眼差しでそう言った。
「裏切る? 誓うって……」
どういうことよ?
一体何故、何の誓いを立てろと言うのだろうか。
ルディアは意味が理解できずに、怪訝な顔をする。
「そのままの意味だよ。まぁ、一方的だと不公平だから条件を付けようか」
「条件?」
「そう。条件。君が今後、僕を裏切らないのであれば、僕も君の秘密を守ってあげる」
ますます、意味が分からない。ルディアは割と人に対してオープンな性格だし、好き嫌いも普通に話す。汚点といえば家門の没落ぐらいだ。しかし、それを隠したことはない。仕事仲間達も周知の事実だ。
「私に周囲に黙っていて欲しいほどの大きな秘密なんてありません」
周囲に隠したい秘密などない。ただ一つを除けば。
しかし、その秘密をこの男が知るはずがないのだ。
ルディアの言葉にレイドは楽しそうに目を細める。
悪戯っぽいその表情にルディアの背筋がいやに冷えた。
「あるでしょ。絶対に知られたくない秘密」
艶っぽい声でレイドは言うと、ルディアの左胸の膨らみを指さす。
鎖骨の下からなだらかに膨らむ場所にふにっとレイドの指が食い込むとルディアは細い肩を揺らす。
「きゃあっ、何を……⁉」
レイドがルディアの左胸を優しく撫でる。
揃えた指の腹で撫でられた場所にはルディアが誰にも言わずに隠してきた秘密がある。
「大丈夫だよ、僕以外は誰も知らないはずだから。君が変らず男嫌いを貫いてくれているのであればだけど」
話している間もレイドの悪戯な手は止まらない。
ルディアの秘密のある場所を指の腹で優しく擽られれば、何だか身体の中心が疼くような感覚に襲われる。
「ねぇ、ルディア。僕が知っている君の秘密知りたくない?」
耳元で囁く甘い声は艶めいていて、続々と耳朶を震わす。
「ひゃっ!」
息が直接ルディアの耳朶にかかり、思わず甘い声が上がる。
「ふふ、知りたいでしょ?」
嘘よ、知っているはずがないわ。
嫌な汗が背筋を伝って流れ落ちる。
誰にも話したことはない。モリオンド夫妻ですら知り得ないことだ。
ルディアは人前で着替えることはほとんどないし、細心の注意を払う。パーティーでも胸元の開くドレスは着たことがないのだ。
落ち着け、大丈夫よ。知るはずないわ。
自分で自分を落ち着けるために、言い聞かせる。
レイドの顔が少しずつ離れて行く。
その顔を睨み付ければ勝ち誇ったような笑みが返ってくる。
「さっきから、一体、何が言いたいのですか?」
精一杯の虚勢を張り、ルディアは言う。
すると一度離れた再びぐっと近づいて来る。
ルディアは反射的に後ろへ後退しようとするが、背には本棚があり、これ以上は距離を広げられない。
エメラルドの瞳がルディアを見つめる。
その瞳に映るのは嗜虐心だ。獲物を追い詰め、弄り、食い散らかす獣ように見えた。
「ルディアーナ・フィル・ソールフレント」
その言葉を聞いた瞬間に全身が凍りついた。
どくんどくんと心臓が大きく跳ね、頭の中が真っ白になった。
「そうでしょ? 属国の姫君?」
ルディアーナ・フィル・ソールフレント。
ルディアの本名である。
形の良い唇が紡ぐ言葉にルディアーナの身体から一瞬にして血の気が引いた。
愕然とするルディアーナにレイドは続ける。
「君のここに、赤い花の印があるでしょ。シェイスリンの属国となった王族には必ずある」
何か言い返さないといけないのに身体も唇も震えて仕方がないのだ。
何で? どうしてバレたの? どうやって知ったの? それもよりによって何でこいつ?
この男は自分の秘密を知り、秘密を公にしないことを条件に私に何をさせる気なの?
そう考えると急に怖くなった。下賎な貴族に売られたり、劣悪な環境で死ぬまでこき使われるのだろうか。
嫌な想像ばかりが頭の中を瞬時に巡り、ルディアーナは顔面から完全に血色を失い、眦に薄らと涙が滲み、立っている気力すらも失いふらふらと床に座り込む。
「ちょっと……あぁ、もう……」
レイドはへたり込んだルディアーナの顔を上に向かせる。
悪戯っぽい笑みは消え、どこか狼狽えたようなレイドは言葉を続ける。
「泣かないでよ。何もしてないでしょ」
レイドはルディアーナの涙を優しく指で拭う。
この男が怖いと思う。それなのに、涙を拭う指先はとても優しくて温かい。
色んな感情が押し寄せてルディアーナは戸惑ってしまう。
「君が僕に協力してくれたら誰にも言わないし、墓場まで持って行ってあげるよって言ってるだけじゃない」
「言ってないじゃんか! そんなこと!」
裏切るなだの、誓えだの! 暴力的な、支配欲しか感じ取れない発言だった。
ルディアは目元に浮かんだ涙を拭いながら抗議する。
「まぁ、そう言うこと。だから誓って」
「もう一度聞くけど、何を誓えと?」
するとレイドはルディアーナの左手を取り、自身の口元へ導いた。
「いっ!」
柔らかい唇の感触が手の甲に感じたと思ったら中指を噛まれる。
びくりと肩が跳ねれば、レイドはくすりと小さく笑う。
「僕を絶対に裏切らないで。これから君が知る僕の秘密は侯爵家の沽券にかかわる。僕の人生を君に預けなきゃならないんだから」
真剣な声がルディアーナの心臓に刺さる。
「どういうこと?」
「君の出生の秘密と侯爵家の僕の秘密は天秤にかけても釣りあいがとれるってことだよ」
ルディアは客室からシーツなどのリネン類を回収し、洗濯をしていた。何せ大きいシーツは洗うのに時間が掛かり、水を吸って重くなるので体力がいる。一枚、二枚ではないので半日は掛かる大仕事だ。
ルディアと数名の使用人達で行い、後は干すだけだ。
雲一つない青空で日も長く、気温も高いため、夕方には乾くだろう。
「みんなお疲れ様」
「ルディアもお疲れ」
「いやー、大変だったね」
「いや、本当に。宴がつつがなく終わったのは良かったけどね」
ルディアと事情を知るニアはその言葉に苦笑いだ。
みんなの宴はつつがなく終わったようで何よりだ。
昨晩の出来事を思い返してルディアは気が重くなる。
一晩明けて、冷静さを取り戻した今であれば、あの時レイドが助けてくれなかったらと思うとゾッとする。
もう考えないようにしよう。
ルディアは頭を振り、思考を掻き消す。
「みんな、あとお願いしますね。私とニアは上がりますから」
ルディアはここ数日働き詰めだったので今から休暇に入る。
「良いよ、お疲れ様ー!」
「二人共、ゆっくり休んでね」
「あーん、私も一緒に休みたい」
ルディアとニアは残りの三人に任せて引き上げた。
「疲れたね。私、シーツの洗濯が一番嫌い」
廊下を歩きながらニアは凝った肩や腕を回しながら言う。
「私は適当にサボれるから嫌いじゃないわ」
「それはあるわね。長時間拘束されるから早めに終わらせてサボるのは好きかも」
ルディアとニアは笑い合いながら使用人宿舎に戻る。
「ルディアは角部屋で良いなぁ」
ルディアの部屋は奥の角部屋で隣の部屋は先日までメイドが使っていたが、辞めてしまったので空室だ。
ニアはその空室の隣部屋である。
「部屋交換しても良いよって言ってるじゃない」
「面倒で無理~」
そう言ってニアは自室の扉を開けた。
「相変わらずね……ちょっと整理した方が良いと思う」
使用人部屋は決して広くはない。簡素なベッドに簡素な机と椅子と狭いクローゼットは備え付けで置いてあるのでそれだけで狭く感じる。
しかし、ニアの私物はクローゼットには収まりきらずに溢れている。
おしゃれが好きな彼女は服や帽子、アクセサリー、化粧品も多く、机の上に置ききれていない。
「そうなんだけどね……捨てられないのよね。苦手なのよ、整理整頓が」
ニアが苦笑いで頬を掻く。
「……引っ越し準備が出来たらいつでも言って」
ルディアは部屋の場所に拘りはない。ここにいる使用人達はみんな控えめで他人に配慮出来る人達がほとんどだからだ。
ニアと部屋を交換しても問題はない。
「気長に待ってて頂戴」
遠い目をしてニアは答える。
「ルディアは午後から何をするの?」
「図書館で翻訳の作業をするわ」
「ちょっと休みなよ。本当に倒れちゃうわよ?」
「好きでやってることだからね。ニアは何をする予定なの? あ、聞いたらマズいかしら?」
ルディアが言うと、ニアは首を横に振る。
「全然。聞いてくれても大丈夫よ、ただの買い物だから」
「今から?」
「今日は街の友人のお家に泊めてもらうから大丈夫よ」
「そうなの。良かったわ。楽しんできてね」
「ありがとう! じゃあ、またね」
ニアが扉の向こうに消えたのでルディアも自室に戻る。
何だか先程のニアお部屋を見た後だと自分の部屋がやけに広く感じるのはきっと気のせいだ。
服だけを着替えて、鏡で自分の顔を覗き込む。
長い髪を編んで二つに分けただけで、飾り気のない髪型に、丸い大きな眼鏡は地味で可愛げも色気も微塵も感じられない。
「よし」
男の恋愛対象から徹底的に外れたいルディアは可愛らしい服も髪飾りやアクセサリーも身に着けない。
地味で良い。
そうすればルディアを性的な対象に見る者も減る。
男に嫌悪感を持つルディアは男に好意を持たれる事も苦手だった。
男の様な格好をするつもりはない。けれども他の女性のように男性の視線を惹き付けるような装いをあえてする必要はない。
ルディアは食堂で簡単に食事を済ませて王宮の中にある図書館に向かった。
ルディアは使用人の仕事以外にも本を翻訳する仕事をしている。
隣国ソールフレントがこのシェイスリン国の属国になり二十五年が経過した。それ以前の二国間は和平を結ぶ対等な関係にあったが、ソールフレントの先代国王が軍事侵略を目論み、国境付近に侵攻を始めたがソールフレント現王とシェイスリン国現王が手を組んで食い止めた。
ソールフレント現王は属国になることと妹姫をシェイスリン国に嫁がせることを条件に戦争賠償を減らして、民と国を守った。
故にシェイスリン国現王妃はルディアの叔母に当たる人だ。
まぁ、会ったことはないし、お目に掛かれる立場でもない。
シェイスリン国の言語をソールフレントは公用語として広まりつつあるが、既にソールフレント語が染みついた民はなかなか新しい言語を習得するのは困難だ。逆にシェイスリン国の者はソールフレントの文字で書かれた資料や本の翻訳に手間取っている。
ルディアに任された仕事は国家機密に触れないような、当たり障りのない文書の翻訳である。
辞書は必要ないが、念の為に辞書や資料が揃っている図書館で作業をする。
作業が終わればそのまま政務室の資料係に直行して翻訳文書を渡せばいい。
ルディアは作業を開始し、人の気配がない図書館でペンを走らせた。
今回は分量が少ないから、一時間ぐらいで終わりそうね。
ペンは止まることなく、文字を書き連ねていく。
「終わったー」
しっかり一時間が経過した。ルディアはペンを置いて身体を伸ばす。
大した文量でなくてもずっと同じ姿勢で作業をしていると身体が凝る。
すぐに図書室を出ようと思ったが、ふと沢山の本が並ぶ棚達に視線が行く。高い壁にぎっしりと隙間なく設置された棚に本が詰まっている。四方を本棚に囲まれた空間は本好きのルディアにとって最高の場所だ。
ルディアは翻訳した文書を腕に抱き、本棚を眺めた。森の中に入り込んだ子供のように好奇心を膨らませて奥へと進む。
部屋の中心には国の歴史や法律に関する本が並び、奥へと進むにつれて俗物的な読み物が増える。
「ん?」
目に入ったのは赤い背表紙が綺麗な本だ。
『美しい百合の恋人達』と記されている。
背表紙の下には貸し出し可の印がある。
どんな内容か気になり、手に取る。面白そうだったら借りて行こう。
ルディアは下級使用人であるが、翻訳の仕事にも従事しているため、自由に図書館を利用する許可が下りている。
小説を手にして、始めの項に目を通す。
「ん? 少女達の秘密……の恋愛?」
ルディアは思わず本を閉じて辺りを見渡し、人の気配がないことを確認した。
「ど、どういうこと……?」
内容はヒロインが年上の女性に恋をし、秘密の関係を築くという衝撃的な内容だった。実際にそういう同性同士の恋愛があることは知っている。男色という言葉もあるし、たまに耳にする。しかし、女性同士の恋愛はあまり聞いたことがない。そしてそういった読み物があることにも衝撃を受けた。
「彼女達はどうなるの……?」
お互いを思い合う少女達。だが、ヒロインの想い人である女性は好きでもない男性の元へと嫁ぐことになる。避けられない結婚に悲しむ二人の少女達。一夜の思い出として肌を重ね―――。
「君、そういうのが趣味なの?」
「きゃあっ」
ルディアは驚いて声を上げる。
急に背後に現れた気配に心臓が跳ね、本を放り投げてしまう。
「うるさいよ」
そう言いながらルディアが落とした本を拾い上げたのはあろうことか、レイド・フォンスティカである。
相変わらず、無駄に美しい顔と立ち姿だ。
シェリルと同じ顔なのだから美しいのは当たり前だが男のクセにこんなに綺麗だなんて意味が分からない。
気怠そうな雰囲気も不機嫌そうな顔も色っぽく見えるのはルディアが疲れているからだろう。
ニアの忠告通り、部屋で休んでいれば良かった。
「『美しい百合の恋人達』……?」
「か、返してっ!」
はっとルディアは腕を伸ばすが、レイドはひょいっと本を高々と上に掲げて、小説の中身を探る。
ルディアよりも頭一つ分以上に背の高いレイドに腕の長さもとう全叶うわけもない。懸命に伸ばした腕も空振りだ。
「女性同士の恋愛もの? 君、こういうのが趣味なの?」
「違います……たまたま手に取ったものがそれで……」
「ふーん。そう」
あまり見ない内容だったから続きが気になっただけだとルディアが言うと興味なさげにレイドは言う。
「君の恋愛嗜好とは関係ないんだ?」
「ありません」
「そう」
きっぱりと言い切るルディアにレイドはまたもや興味なさげな言葉を返す。
「借りるの?」
「借りません」
ルディアは正直内容が気になる小説を棚に戻す。
では、これで。
失礼しようとするルディアは棚に縫い留めた。
「昨日はよくもやってくれたね?」
レイドが低い声で囁くように言う。
「何のことでしょうか?」
素知らぬ顔でルディアは言う。
逃げようとしても棚を背にしたルディアは正面にいるレイドの腕が檻のようになっていて逃げられない。
この腕をへし折って逃げてしまいたい。
感情を封印して、顔の側に置かれた手をルディアは睨む。
「僕が女嫌いなの知っていてああいうことするの? 本当に腹立つからやめてくれる?」
低い声でレイドは言う。その声には苛立ちと憤りが含まれている。
眉根を寄せて不機嫌顔で迫るレイドにルディアは驚く。
「え? 女嫌いなんですか?」
「知らなかったの?」
嫌そうな顔をして一層不機嫌になるレイドを前にルディアは戸惑う。
そんな話は初耳だ。
そもそも、女性には基本的に愛想の良い男だ。
色めき立つ女性達に微笑み、給仕の者達にだってそれを忘れない。
そうすると女性達は身分に関係なく彼の虜になる。
自ら進んで女性に好かれるようなことをしているというのに、どの口が『女嫌い』だというのか。
「男色の噂は聞きましたが」
「え、何それ? 初耳なんだけど」
今度は引き気味でレイドは言う。
自身でも知らなかった自分の噂にショックを受けている。
気分を害することを言ってしまったかもしれない。
「申し訳ありませんでした」
「それは他の女に給仕を任せて逃げたことへの謝罪?」
「男色の噂をお耳に入れてしまったことについての謝罪です」
ルディアの言葉にレイドは苦虫を噛み潰したような表情をする。
本当に、この男のどこが良いのだろうか。
顔はシェリルに似て美しく、手足も長くてスタイルも良い。
しかし、愛想を振りまいておきながら、鬱陶しから嫌いだと言う腹黒だ。
今の顔を見れば千年の恋も一瞬で……冷めないな。
不機嫌な表情ですらどこか色っぽいこの男だ。新たな一面を見せてくれたと逆に恋が盛り上がる可能性が高い。
「昨晩の件につきましても申し訳ありませんでした」
「……ちなみに、どうして他の女に任せたわけ?」
「…………疲れておりました。あのままでは粗相をしそうでしたので」
ルディアは視線を逸らして言い訳をする。
「……嘘つき」
急に近くなった声にルディアは身体を強張らせる。
「ひっ」
伸ばしていた腕を折り、ぐっとルディアとの距離を縮めてきた。
悪戯っぽい表情は彼の色気を増幅させているようでルディアは反射的に逃げようとするが、レイドの長い手足が檻となりルディアを閉じ込める。
「どうせ僕から逃げる口実でしょ。そう言えば誰も君を責めないし、僕への給仕をしたい者はいくらでも捕まるしね」
バレてる……。
しかも自分の男としての評価が高いことをしっかりと自覚している。
ルディアは視線を泳がせながらどうやってこの場をやり過ごすか思考を巡らす。
ここは素直に謝るのが吉かしら?
相手は侯爵の地位を約束された人だ。王太子の信頼も厚い。誰かの耳に入る前にここで因縁は断ち切った方が良さそうだ。流石にこの男もいくら私のことが嫌いだからといっても殺しはしないはずだ。
生きてさえいればどうにかなる。
「も、申し訳ありませんでした」
ルディアは謝罪の言葉を口にする。
これで気が収まればいいと思っていたが、考えが甘かった。
「それで終わり? 許すわけないでしょ」
こいつ! 何なの? 土下座でもしろってこと⁉
しかし土下座したところで、君の土下座に価値なんてないよ、とか言われそうだ。いや、そうに違いない。
ルディアは拳を握り締めて怒りを抑える。
「……ではどうしろと?」
マズい。怒りで顔が引きつっているのが分かる。落ち着け、私。
「僕のこと、二度と裏切らないってここで誓って」
じゃなきゃ許さない。
レイドは鋭い眼差しでそう言った。
「裏切る? 誓うって……」
どういうことよ?
一体何故、何の誓いを立てろと言うのだろうか。
ルディアは意味が理解できずに、怪訝な顔をする。
「そのままの意味だよ。まぁ、一方的だと不公平だから条件を付けようか」
「条件?」
「そう。条件。君が今後、僕を裏切らないのであれば、僕も君の秘密を守ってあげる」
ますます、意味が分からない。ルディアは割と人に対してオープンな性格だし、好き嫌いも普通に話す。汚点といえば家門の没落ぐらいだ。しかし、それを隠したことはない。仕事仲間達も周知の事実だ。
「私に周囲に黙っていて欲しいほどの大きな秘密なんてありません」
周囲に隠したい秘密などない。ただ一つを除けば。
しかし、その秘密をこの男が知るはずがないのだ。
ルディアの言葉にレイドは楽しそうに目を細める。
悪戯っぽいその表情にルディアの背筋がいやに冷えた。
「あるでしょ。絶対に知られたくない秘密」
艶っぽい声でレイドは言うと、ルディアの左胸の膨らみを指さす。
鎖骨の下からなだらかに膨らむ場所にふにっとレイドの指が食い込むとルディアは細い肩を揺らす。
「きゃあっ、何を……⁉」
レイドがルディアの左胸を優しく撫でる。
揃えた指の腹で撫でられた場所にはルディアが誰にも言わずに隠してきた秘密がある。
「大丈夫だよ、僕以外は誰も知らないはずだから。君が変らず男嫌いを貫いてくれているのであればだけど」
話している間もレイドの悪戯な手は止まらない。
ルディアの秘密のある場所を指の腹で優しく擽られれば、何だか身体の中心が疼くような感覚に襲われる。
「ねぇ、ルディア。僕が知っている君の秘密知りたくない?」
耳元で囁く甘い声は艶めいていて、続々と耳朶を震わす。
「ひゃっ!」
息が直接ルディアの耳朶にかかり、思わず甘い声が上がる。
「ふふ、知りたいでしょ?」
嘘よ、知っているはずがないわ。
嫌な汗が背筋を伝って流れ落ちる。
誰にも話したことはない。モリオンド夫妻ですら知り得ないことだ。
ルディアは人前で着替えることはほとんどないし、細心の注意を払う。パーティーでも胸元の開くドレスは着たことがないのだ。
落ち着け、大丈夫よ。知るはずないわ。
自分で自分を落ち着けるために、言い聞かせる。
レイドの顔が少しずつ離れて行く。
その顔を睨み付ければ勝ち誇ったような笑みが返ってくる。
「さっきから、一体、何が言いたいのですか?」
精一杯の虚勢を張り、ルディアは言う。
すると一度離れた再びぐっと近づいて来る。
ルディアは反射的に後ろへ後退しようとするが、背には本棚があり、これ以上は距離を広げられない。
エメラルドの瞳がルディアを見つめる。
その瞳に映るのは嗜虐心だ。獲物を追い詰め、弄り、食い散らかす獣ように見えた。
「ルディアーナ・フィル・ソールフレント」
その言葉を聞いた瞬間に全身が凍りついた。
どくんどくんと心臓が大きく跳ね、頭の中が真っ白になった。
「そうでしょ? 属国の姫君?」
ルディアーナ・フィル・ソールフレント。
ルディアの本名である。
形の良い唇が紡ぐ言葉にルディアーナの身体から一瞬にして血の気が引いた。
愕然とするルディアーナにレイドは続ける。
「君のここに、赤い花の印があるでしょ。シェイスリンの属国となった王族には必ずある」
何か言い返さないといけないのに身体も唇も震えて仕方がないのだ。
何で? どうしてバレたの? どうやって知ったの? それもよりによって何でこいつ?
この男は自分の秘密を知り、秘密を公にしないことを条件に私に何をさせる気なの?
そう考えると急に怖くなった。下賎な貴族に売られたり、劣悪な環境で死ぬまでこき使われるのだろうか。
嫌な想像ばかりが頭の中を瞬時に巡り、ルディアーナは顔面から完全に血色を失い、眦に薄らと涙が滲み、立っている気力すらも失いふらふらと床に座り込む。
「ちょっと……あぁ、もう……」
レイドはへたり込んだルディアーナの顔を上に向かせる。
悪戯っぽい笑みは消え、どこか狼狽えたようなレイドは言葉を続ける。
「泣かないでよ。何もしてないでしょ」
レイドはルディアーナの涙を優しく指で拭う。
この男が怖いと思う。それなのに、涙を拭う指先はとても優しくて温かい。
色んな感情が押し寄せてルディアーナは戸惑ってしまう。
「君が僕に協力してくれたら誰にも言わないし、墓場まで持って行ってあげるよって言ってるだけじゃない」
「言ってないじゃんか! そんなこと!」
裏切るなだの、誓えだの! 暴力的な、支配欲しか感じ取れない発言だった。
ルディアは目元に浮かんだ涙を拭いながら抗議する。
「まぁ、そう言うこと。だから誓って」
「もう一度聞くけど、何を誓えと?」
するとレイドはルディアーナの左手を取り、自身の口元へ導いた。
「いっ!」
柔らかい唇の感触が手の甲に感じたと思ったら中指を噛まれる。
びくりと肩が跳ねれば、レイドはくすりと小さく笑う。
「僕を絶対に裏切らないで。これから君が知る僕の秘密は侯爵家の沽券にかかわる。僕の人生を君に預けなきゃならないんだから」
真剣な声がルディアーナの心臓に刺さる。
「どういうこと?」
「君の出生の秘密と侯爵家の僕の秘密は天秤にかけても釣りあいがとれるってことだよ」
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