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第三幕 『誤解』

30.

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 ゴードンがいなくなった後、オフェーリアは主寝室に戻り、窓辺に座ってひとりきりで無心に空を眺めていた。
 ──ゴードンが、舞踏会にオフェーリアを招待してくれた。
 それについて、どう思えばいいのだろう?
 どんな意味があるのだろう?
 ふたりはまだ体面上は夫婦であると、ゴードンは言った。『まだ』。では、未来は?

 オフェーリアは空を見たまま涙を流した。
 もし本当にオフェーリアが間違いを起こして、そのせいで別れを切り出されるなら納得できる。でも、真実は違う。
 極寒の冬に備えた渡り鳥たちが、東南に進路を取って飛び立っていく。紅葉は終わり、木々は寒々としていた。
 ひとりぼっちの主寝室で、オフェーリアは肩を縮めて震えた。
 暖炉には火がある。それでもこんなに部屋が冷え切っているような気がするのは、どうしてだろう。風邪をひいたのだろうか? こんな時に……。

 多分、チョーサーに頼んで医者を呼んでもらうべきなのかもしれない。
 でも、呼び鈴を鳴らすことさえ億劫だった。寒い。頭が痛い。体がだるい。どうしよう……。

 そんな時だった。
 主寝室の入り口の扉が数回、上品にノックされた。ノックの音がするまで、オフェーリアは人の気配にまったく気がつかなかった。
「ウィンドハースト伯爵夫人? こちらにいらっしゃいますか?」
「え……は、はい」
 扉の後ろから発せられたのは、知らない男性の声だった。オフェーリアはびくりとして立ち上がる……すると、立ちくらみに襲われ、とっさに支えにしようと手を伸ばしたナイトテーブルの上の、金鍍金の燭台を床に落としてしまった。
 金属が床にぶつかる乾いた音が響いた。
「大丈夫ですか? 今の音はなんです? こちらから、扉を開けてもよろしいでしょうか……あ!」
 質問に答えるどころか、崩れた体勢を立て直すこともできないうちに、勢いよく扉が開いた。現れたのは声の主とは違う人物だった。
 ゴードン……ウィンドハースト伯爵。
「ゴ、ゴード……」
 並々ならない大股で一瞬にしてオフェーリアの前へ躍り出たゴードンは、彼女の二の腕を掴んで真っ直ぐに立ち上がらせた。
 ドレスの布越しでではあったが、二ヶ月ぶりにゴードンがにオフェーリアに触れた瞬間だった。
 すぐに体の芯が切なくうずく。
「あ、あの……どうして、ここに……」
 かすむ視線をゴードンに向けて、オフェーリアは息を呑んだ。
 彼の顔色は蒼白を通り越して土色だった。ここ二ヶ月ですっかりお馴染みになった深い皺を眉間に寄せて、傷ついた瞳でオフェーリアを見下ろしている。
 ──傷ついた瞳?
 ゴードンの声は怒りに震えていた。
「わたしがここに来るのが……そんなに不思議か? ここはわたしの寝室でもあると思っていたが……君にとっては違うようだ。わたしが留守にしている間に、ここは君とハロルドの寝室になっていたらしい」
「ち、違っ、違います……!」
 ああ、どうして。
 どうして、オフェーリアがなにを言っても、なにをしても、ゴードンは悪い方に取ってしまうのだろう。
 ゴードンに二の腕を掴まれて向き合ったまま、ふたりは見つめ合った。

 意思と意思。真実と偽り。疑いと確信。夫と妻。

 そういったものが、視線を通じてふたりの間でぶつかり合い、どちらも一歩も引かなかった。
 ゴードンの顎は、歯ぎしりの音が聞こえてきそうなほどきつく閉じられている。
「違います……。あなたがずっと、わたしを避けていたから……」
 オフェーリアがそう伝えても、ゴードンの表情は柔らがなかった。それどころか、かえってさらに険しいものになったような気さえした。
 ゴードンはなにか言いたげに唇を引き結んだが、声にはならず。
 いつまでも見つめ合うふたりを前に──眼鏡をかけた痩身の男が、わざとらしくごほんと咳払いをした。
「伯爵、早く診察を……した方がよろしいのでは……」
「え?」
 驚いて扉の方を見ると、重苦しい黒の外套を羽織った男が、ゆっくりと遠慮がちに主寝室へ入ってくるところだった。見たことのない男だったが、不審な感じはしない、落ち着いた風貌の人物だ。
「はじめまして、でしょうか、ウィンドハースト伯爵夫人? 僕はウィリアム・ハートル医師と申します。ウィンドハースト伯爵に、至急あなたを診るよう頼まれたのですが……」
 ハートル医師と名乗った眼鏡の痩身男性が、医療関係者独特の賢く鋭い視線でオフェーリアの全身を一瞥した。
「……きちんと食事を摂っていらっしゃいますか? 何日も肉を食べていない顔色ですね」
「それは……あまり……」
 肉食の有無で顔色に変化が出るというのは初耳だったが、多分、核心はそこではないのだろう。もしかしたら、伯爵夫人相手に失礼がないように、そんな遠まわしな物言いをしただけなのかもしれない。
 つまり……オフェーリアの顔色は褒められたものではないということだ。
「あまり食欲がなくて……」
 オフェーリアがうつむくと、ハートル医師は片手に掲げていた黒い革カバンを床に置いた。
「わかりますよ。時々、そういうことがあります」
 そしてハートル医師は再度、「伯爵?」と呼んでゴードンに指示を求めた。
「伯爵もご同席なさいますか? ご婦人の中には、男性がいると素直に症状を言えない方もおりまして……」
「わたしはここから動かない」
 ゴードンは即答した。
「わたしは彼女の夫だ……一応、ではあるが。心配しなくても彼女は……素直に症状を言えないどころか、やすやすと足を開いてしまう可能性もある」

 もう、心は千々に散ってしまった後で、これ以上傷つくことなんてできないと思っていた。
 間違いだった。
 ゴードンの言葉はすでにぼろぼろだったオフェーリアの心をさらに踏みにじった。
 オフェーリアの中に残っていた希望が、音を立てて崩れていく。

 立っている力がなくなって、オフェーリアの膝はふにゃりと曲がった。
 幸い、すぐ後ろに寝台があったのと、ゴードンの手がオフェーリアの二の腕を握り続けていてくれたおかげで、倒れはしなかった。皺ひとつないシーツの上に座り込んだオフェーリアは、情けなくて、寂しくて、めまいがして……もう涙さえ流せなかった。

 ハートル医師は、眼鏡の奥に困惑をちらつかせながら、遠慮がちにオフェーリアに近づいていく。
「夫人の脈を診なければならないのですが、よろしいでしょうか」
 オフェーリアにではなくゴードンに向かって、ハートル医師はたずねた。
 ゴードンは喉の奥から絞り出すような不穏なうなり声を漏らしたが、ノーとは言わず、小さくうなずいた。ハートル医師はまた咳払いをすると、「失礼」と断ってオフェーリアの手を取った。
 医師の表情はすぐに変わった。
「少し熱がありますね。脈も乱れている」
 一歩後ろに下がっていたゴードンが、どうにも表現しようのない奇妙な顔をした。傷ついたような。怒ったような。憎しんでいるような。
 愛しくてたまらないような。
 でも、今のオフェーリアに、その意味を深く考える力は残っていなかった。
「そうですか……」
 とだけ、妙な立場に立たされて困惑しているかわいそうな医師を思って、答えた。

 しばらくの沈黙。

 ハートル医師は再三の咳払いをすると、やはりまた、オフェーリアにではなくゴードンに向かってお伺いを立てた。
「心音を確認する必要がありますが……よろしい……でしょうか。もちろん、夫人に触れるのは聴診器だけです」
 オフェーリアはもう疲れきっていて、うつむいていたので、ゴードンの反応を確認することはできなかった。
 ただ、ゴードンはいくばくかの沈黙の後、聞き取るのが難しいくらいの低い声で、
「どうしても必要なら、そうするがいい」
 と、つぶやいた。

 かわいそうなハートル医師が、かすかに震える手で革カバンから聴診器を取り出すのが見える。
「お召し物の前身頃を……少し緩めていただく必要があるのですが……」
 オフェーリアはやっと自分の置かれた状況に気づいて、びくりとした。
 幸い、今日のデイ・ドレスは前にリボンがあって自分で開けられる仕様になっている。ドレスの下にはシュミーズを着ている。
 多分、胸元だけリボンをほどいて、シュミーズを見せればいいのだ。
 素肌まで見られるわけではない。
 でも。
「い……いやです」
 オフェーリアは胸元を守るように手を当てて、弱々しく、しかし毅然と告げた。同室しているふたりの男が、石像のように固まる。
「オフェーリア……」
 説教をはじめようとするような口調で、ゴードンが妻の名前を呼んだ。
 ──だからなんだというのだろう?
 今のゴードンに、オフェーリアの体調を心配する資格なんてない。おとなしくシェミーズを見せれば、ほら見ろ、君は尻軽な女だとオフェーリアを侮蔑するに違いない。
 それに……オフェーリアはもう自分の体などどうでもよかった。
 もしこれが心臓の病かなにかで、すぐに死んでしまうというなら、もうそれでいい……。きっと楽になれる……。
「いやです。誰もわたしに触らないで……」
「オフェーリア、言うことを聞くんだ」
「いいえ、いやです! いやなものは、いやなの! どうせ怒るくせに! ドレスを開いたら、わたしを売女だって罵るくせに!」
 床板が割れなかったのが不思議なくらいの激しい一歩で、ゴードンはオフェーリアの目の前に舞い戻った。
 胸を隠していた両手首を掴まれる。
 痛いくらいに、きつく。ますます怒りが湧いてきた。
「離してください! 離して! もういやなの! こんな誤解が続くのはいや! わたしがこのまま熱病で死にでもすれば、あなたもせいせいするでしょう!?」
 その瞬間のゴードンの表情を、オフェーリアはきっと一生忘れられない。
 多分、彼はオフェーリアに手を上げる一歩寸前だった。
 怒り。
 怒り。怒り。そして、もっと、怒り。
 オフェーリアに対して。ハロルドに対して。彼自身に対して。戦争に対して。
 まるでゴードンはまだ普通の生活に順応していないようだった。戦争はもうとっくに終わっているのに、彼の心はまだ戦場にいて、いつまでも躍起になって敵を探している……ような。

「もう一度……」
 ゴードンは不穏につぶやいた。
「もう一度、そんなことを言ってみろ……わたしは……」
 ゴードンは?
 オフェーリアは続きを待ったが、ゴードンはなにも言わなかった。多分、彼も答えを知らなかったのだろうと思う。
「ボタンを……外すんだ……」
「いや……」
「くそ、さっさとこのいまいましいリボンをほどいて、医師に診てもらうんだ。早く」
「いや、いや……」
 もちろん、力で争うことになればオフェーリアがゴードンに敵うはずがない。
 熱でぼうっとするオフェーリアの体をどうこうするなど、彼にとっては造作もないことだ。抵抗するオフェーリアを険しい顔で制したゴードンは、ドレスの胸元にあるリボンをゆっくりとほどいていった。
 シェミーズ一枚になったオフェーリアの胸元があらわになる。
「ゴードン……」
 ゴードンの息は、まるで行為の最中のように荒ぶっていた。オフェーリアの肌は微熱に火照っていて、自分でもわかるくらいの奇妙な甘い香りを放っている。
 ゴードンは肩越しに振り返り、ハートル医師を睨んだ。
「そのふざけた聴診器をよこせ。妻に触れるのは、わたしだけだ」
「し、しかし……心音は僕が直接聞かせていただかないと……」
「くそ! その馬鹿馬鹿しい吸盤の先端だけよこせ! お前は後ろを向いて音だけ聞いていろ!」
 かくして、ゴードンが聴診器の吸盤をオフェーリアの胸の下に当て、ハートル医師はそのそばで背中を向けて縮こまりながら心音を確認する世にも奇妙な図が誕生した。
「ゴードン……」
 オフェーリアはもう一度ささやいた。
「しっ……静かにするんだ……」
 ゴードンは必要以上に強く吸盤をオフェーリアの肌に当てていた。
 聴診器などなくても、オフェーリアの鼓動は部屋中にこだましているはずだ。オフェーリアが逃げないように、背中もがっしりと大きな手で押さえられている。まるでゴードンに包まれているようだった。
 ふたりはまた見つめ合った。
「最近の君は……痩せすぎている」
 ゴードンは寂しげにそう指摘して、視線をオフェーリアの目から彼女の胸の上にずらした。ゴードンは知っているのだ。オフェーリアが痩せていく理由を。だから彼女の目を見ない。
 なんと答えていいのかわからなくて、
「ごめんなさい……」
 と、オフェーリアはささやいた。
 ゴードンは返事をしなかった。

 やがてハートル医師は、オフェーリアの症状を『心労が原因による免疫力の低下で起きた発熱』と結論づけ、『安静にしていれば数日でよくなる』とし、処せん方を細かく言い渡すと主寝室を後にした。

 ハートル医師がいなくなった後、主寝室に残ったのはゴードンとオフェーリアのふたりだけだったが、会話はほとんどなかった。
 オフェーリアには話す気力がなかったし、
 ゴードンには話すべきことがなかった。
 ただ、ウィンドハースト伯爵ゴードン・ランチェスターは妻を寝台に横たえると、寝ていろ……とだけぶっきらぼうにつぶやいて、部屋から出ていった。


 それから数日は、女王でもこれほどの贅沢はできないだろうというほどの細やかな手当てを、オフェーリアは使用人から受けた。
 その指示を出したのは……間違いなくゴードンのはずだ。でも彼は姿を現さなかった。
 そして確かに、オフェーリアの熱は数日後にはよくなった。

 そして、次にオフェーリアがゴードンを見たのは、一週間後……舞踏会の朝だった。

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