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Chapter Twenty Six
しおりを挟む凍てつくような寒さは最初から覚悟の上だった。
それでも、外套も着ていない、帽子もかぶっていない格好で勢いよく外に飛び出したネルは、いきなり襲いかかってきた寒気に激しく全身を震わせた。
「ローナン! ロチェスター! 二人ともここにいるの? なにがあったの!?」
玄関の先には、石の階段が四段あるのを覚えている。
怯える足を必死に前へ進めながら、ネルは泳ぐように両手を動かし、何度も叫んだ。
「返事をして! いったいなにが起こったの? 発砲したのは誰? 誰か怪我をしているの?」
矢継ぎ早にいくつも質問を投げかけても、聞こえるのは北風が横なぶりに吹きつけるびゅうびゅうという音ばかりで、人の声は一切しなかった。
ネルの心臓が凍てつく。
ローナンは女性に名前を呼ばれて黙っているような人ではない。つまり、ネルが聞いたローナンの声は幻聴だったのか、ネルがまったく見当違いな場所に向かって叫んでいるか、返事もできないような状態でいるかのどれかだ。
「ローナン!!」
ネルはもう一度、声の限りに愛しい名前を呼んだ。
雪を含んだ強烈な風が吹きつけ、ネルの体を揺らし、叫びを天に飲み込んでいった。
涙が溢れそうになる。しかし目尻に溜まった水滴も、この過酷な天候の前にはすぐに凍りつき、ほおを伝い落ちることはなかった。
なんとか階段を下りきったところで、ネルは絶望に崩れ落ち、雪の積もった地面に膝をついた。
寒さに飲み込まれるように、手足の感覚がなくなっていく。
同じように、心の痛みも感じなくなっていけばいいのに。
ネルは夢の中にいるのだろうか? 悪夢の中に。
銃声は二発あった。そして誰もネルの叫びに答えない。もしかしたら誰か……誰かではない、ローナンが! 撃たれて瀕死でネルに助けを求めているかもしれないのに、見えないだなんて!
盲目となって、数え切れないほど悔しい思いをしてきた。希望を失い、いっそ死んでしまいたいとさえ思ったこともあった。それでも、今の無念さに比べればなんでもない。
ローナン……ああ、どうか無事でいて。
でも、どうして答えてくれないの。
お願い……お願い……一言でいいから。一瞬でいいから。声を聞かせて。
「雪の上に座り込んでいたら、風邪をひくよ、ネル」
突然、正面を少し右へ行った遠いところから、落ち着いた男性の声が風に乗って響いてきた。
夢?
違う。確かに聞こえた。
「ローナン?」
ネルの声はかすれて、驚愕と寒さに喉が震えていたから、どこまで届いたかは分からない。「あなたなの? 怪我は……怪我はしていないの?」
たっぷりの沈黙ののち、ローナンはまた落ち着き払った声で答えた。「どうかな」
「ローナン! ふざけないで!」
「ふざけてなんかいないよ。もしかしたら僕は、あちこちを撃たれて雪を真っ赤に染めて、死にかけているのかもしれない。僕の最期の願いを聞いてくれる?」
「お願い、どうしているのか教えて……わたしには見えないのよ! そんなこととっくに知っているでしょう?」
ネルが懇願すると、雪の中でなにかが動き、進んでくる気配がした。
「まったくその通りだ」
普段のローナンでは考えられないほどの、怒りがこもった沈んだ声だった。
「僕はそんなこととっくに知っていた……。知っていて君に僕の想いを預けたんだ。僕の心を、未来を、すべて。それを君は、腐った果物の皮かなにかのようにポイと捨てて、他の男の手を取って逃げてしまった」
ローナンはこちらに向かってゆっくりと近づいてくる、ような気がした。
喜びと恐怖と戸惑いが同時に溢れて、ネルは、嫌々をするように首を右左に振った。
「後生だから、先に、あなたが怪我をしていないかだけでも教えて。お願い、気が変になってしまいそうなの」
ざくりと雪を踏み沈める音が聞こえる。
しかし、それは必ずしもネルにまっすぐ近づいてきている訳ではなさそうだった。まさかローナンは、この期に及んでネルから遠ざかろうとしているのだろうか?
「ローナン!」
手袋をしていなかったせいで、ネルの指はすでに感覚を失いはじめていた。風が強くて、おまけに雪が混じっていて、いつもよりずっと方向が掴みづらい。呆然としていると、遠くからよく響く声が届いた。
「僕のところに来てごらん、ネル! 君ならできる……僕を救えるのは君だけだ!」
「す、救う?」
やはり、ローナンは怪我をしているのだろうか。
ネルはとにかく闇雲に前へ進もうとした。もしローナンが救いを求めているなら、たとえ全身が氷漬けになってでも彼を助けなければ。
しかし、自分がどこへ進もうとしているのか、ネルにはさっぱり分からなかった。終わりもはじまりもない、冷たくて白い雲の中で迷子になっているような気がした。
「こっちだ!」
ローナンが叫んだ。ネルに道筋を示そうとしてくれている。
ネルは声のした方へ顔を向け、なんとか腰を浮かせながら雪の中を進んだ。
「早くおいで……僕は待ってる……そう、上手だ。もうちょっと右へ!」
ローナンは器用に道を示し、励ましや賞賛の言葉をかけながら、次第にネルを導いていった。ネルは夢中になって彼の声に引き寄せられていった。距離は近づいてきていたが、まだ半分を少し超えたくらいでしかない気がする。
「教えてくれ、ネル。君はどうして僕を捨てて出て行ったのか」
急に、ローナンの声色が変わった。
聞こえるのがやっとの、もっと真剣な声に。
「あ……あなたは知らなくていいのよ。お願いだから、怪我の具合を聞かせて」
「いやだ」ローナンはあっさりと返した。「理由も知らずに君に捨てられるくらいなら、このまま雪に埋もれて大量出血で死んだ方がずっといい」
正直なところ、ローナンの声は死にかけている人間のものにしては明瞭としすぎていた。しかし、だからといって安心はできない。もしかしたら無理をしているのかも……。
なんといってもネルには見えないのだ。
「オリヴィアが倒れたことと関係しているんだね? そこの青白い豚……失礼、君の従兄弟に、脅されたんだろう?」
「そこの? ロチェスターもここにいるの?」
「気を失って倒れているけどね」
ネルはひとまず安心した……。
そして無意識に下唇を噛み、雪の中で首を横に振った。
「それだけじゃないの。わたしには……分かったのよ。あなたと結婚するべきじゃないって。だからお願い、わたしのことは忘れて……」
「僕が嫌になったの?」
「違うわ……いいえ……そう、そうよ! あなたのことが嫌いになったの! それでいいでしょ!」
再び、ネルの目に涙が浮かんで、ほおに流れる前に目尻で結晶を作った。肌が痛い。いや、違う。心が。心が痛い。
今この瞬間にも、ネルのローナンへの愛情は膨れ上がっていく。
──なんて素晴らしい、特別な人なの。
優しくて、たくましくて、愛情深い。こんな時でさえユーモアや賢さを失わないのに、真摯にネルを愛してくれる。
「あなたが嫌い……よ。嫌いだから……」
ネルの嘘は、むなしく足元の雪片に吸い込まれていった。ずっと饒舌だったローナンが、しばらく静かになる。
このまま心臓が氷のように砕けて、粉々になってもこんなには痛まなかったはずだ。
それでもネルは前へ進もうとした。
もしかしたらローナンは怪我をしているのかもしれない。治療が必要なのかもしれない。寒さをしのげる部屋や、温かいスープや、優しい看護人がいるのかもしれない。
そのためなら、どんな努力だって惜しまないつもりだった。
突然、ローナンの叫びが沈黙を破った。
「嘘をつくなよ! だったら、さっさと屋敷の中に戻って、僕のことなんか野垂れ死させておけばいい。誰も君を責めやしないさ!」
「そういう問題じゃないのよ!」
また雪を踏みしめる音がして、ローナンの位置が動いた気がする。
彼は本当に怪我をしているのだろうか? 寒くて、もどかしくて、悲しくて、ネルはもう自分がなにをしようとしていたのか見失い、混乱してきた。
「こんな馬鹿げたゲームはやめにしてちょうだい! 怪我の様子を教えて。わたしに看病させて……」
急に足がもつれて、ネルは顔ごと雪の中に倒れた。すぐに立ち上がって頭を振り、雪の粉を落とす。
「早く僕のところにおいで。君ならできる。君はなんだってできることを、僕が証明してあげる。その薄汚い犬のような男になにかされたからって、僕が君を愛し、尊敬していることが変わったりはしない。おいで!」
両手を広げて待ってくれているローナンを、ネルはさまざまと思い浮かべることができた。声はすぐ近くだった。
愛しい声のする方向へ、ネルは走り、身を投げ出すように飛び込んでいく。
すぐにローナンの大きな腕がネルを抱き上げた。
額に、ほおに、首筋に。ローナンの白い吐息がネルの肌にかかった。ネルは思わずローナンのたくましい胸にすがり、つかの間の至福に溺れて両腕を彼の背中に回した。
分厚い外套が、すっかり雪に覆われて凍りつき、寒さで固くなっているのが分かる。
「ほら」
ローナンの優しい声が耳元でささやかれると、ネルは涙を抑えることができなくなった。体の芯まで、彼の低い声が響く。
「こんな雪の中でも、君は僕を見つけられる」
「当たり前よ」と、ネルは鼻をすすりながら答えた。「さあ、白状して。怪我をしているの? どこか……撃たれたの?」
素手でローナンのほおに触れると、ざらりとした無精髭があるのが分かった。彼のような男性は、きっといつも綺麗に剃っているはずだ。つまりローナンは、ネルを追うために、それほど急いで来てくれたということなのだろう。
「美人に心配してもらえるのは嬉しいな」
ローナンは茶目っ気たっぷりの口調で言った。
「ローナン……」
「でも、正直に告白すると、凍え死にそうなくらい寒いのをのぞけば、僕はいたって健康でぴんぴんしてる。君の従兄弟の射撃の腕前は、あまり褒められたものではないようだね」
「銃声を二発聞いたわ。二発も撃たれて、どちらもかすりもしなかったということ?」
ローナンのため息がネルの鎖骨のあたりに降りかかった。
「いや……最初の一発は奴だったけど、貸し馬車の車輪の近くをかすっただけだった。二発目は僕が威嚇に撃ち返したんだ。奴の足元ぎりぎりをね。そうしたら気絶してしまった」
「じゃあ……あなたは無事なのね。よかった」
やっと、ネルは心から安心することができた。ローナンの無事を神に感謝した。
しかし……。
「でも、お願いだから、帰って。私はあなたと結婚できないの……するべきじゃ、ないのよ」
ネルは両腕を使って、ローナンの胸元をぐっと押した。
最初、ローナンはそれに反抗するようにネルを強く抱きしめたが、ネルが諦めないで押し返し続けていると、やがてゆっくりと拘束を緩めた。
「どうして? 本当のことを教えてくれ。真実だけを。僕には、それを知る権利があるだろう?」
ローナンのような人が、こんな切ない声を出せるなんて思わなかった。
胸に突き刺さるような、かすれて震えた声。
彼の顔を見ることができないのが、ネルのせめてもの救いだった。彼の瞳を見つめながら、こんなことを言わなければならなかったら、きっと耐えられない。
──もちろん、そもそもネルに目が見えていれば、別れる必要もなかったけれど。でも、出会うこともなかった。
真実を……確かに、ローナンは知る権利がある。
ネルは覚悟を決めて、あの時の恐怖を思い出しながら、ごくりと唾を呑んだ。
「イザベラが……急に、寝返りをしてはじめて這いだしたの……。周りには誰も人がいなくて、わたしはあの子がどこにいるのか分からなくなった。暖炉の目の前だったわ」
ローナンは短く息を吸った。
彼の体がこわばる。ネルは打ちひしがれてまぶたを伏せた。
「わたしは……赤ん坊の身を守ってあげることもできないの。すぐ近くに、目の前にいたのに。こんなんじゃ、あなたの子供を育てることもできないわ。だから……」
だから。
ここから先は辛すぎて、ネルの口から言うことはできなかった。ローナンのような勘のいい人に、みなまで言う必要もないだろう。
案の定、ローナンはそれ以上なにも口を挟まなかった。ただ、ふたりの間に長い沈黙が落ちて、細かい雪の混じった風だけが強く吹雪いていた。
「分かった」
と、ローナンが硬質な声で短く告げるのに、ネルははっとして顔を上げた。
ばさりとなにかを脱ぎ払う重い音がしたと思うと、ネルの肩にローナンが着ていた外套が掛けられていた。温もりと彼の香りに包まれて、ネルの胸はぎゅっと切なく締め付けられる。
「分かったよ、ネル。僕は……いつまでも君の幸せを願っている。君が夢を叶えて、愛を見つけて、毎朝、願いをかけながら朝日を眺めることができるように、祈っている」
手袋越しのローナンの手が、ネルのほおに触れた。
「君の涙が少ないように。次に君の見つける愛が、いつまでも続くように……そして、世界が、君の素晴らしさを見てくれるように」
そして、ローナンの手がネルを離れて、彼はそのまま後ずさりをした。
「ローナン……」
ネルはもう少しで、待って、と懇願してしまうところだった。
なんとかその言葉を飲み込むと、この極寒にもかかわらず、胸が焼けつけるほど熱く痛んだ。
彼はさらに後ずさっていく。
ネルはそれを感じることができた。北風にまぎれて、雪を踏みしめる音がして、それがどんどん遠ざかっていく。
彼は行ってしまう。
──そうよ、行って。わたしを忘れて幸せになって。
──嫌、行かないで! どうかふたりで幸せになれる道を探しましょう。いくらでも頑張るから。私を置いていかないで。
やがて、遠くで馬車が軋みながらゆっくりと進み出す音が聞こえた。
ああ……本当に、ローナンは本当に行ってしまうんだ。ネルは自ら諦めて投げ出した、ローナンとの未来を思って悲しみに打ちひしがれた。
まだ彼の温もりの残る外套を抱きしめて、ネルは雪の上にがくりと膝をついた。
そして下を向いて、嗚咽を上げながら泣いた。
ローナン。ローナン。嵐の夜の雷雲のように、真っ暗だったネルの世界に突然現れて、輝き、そして去っていったひと。
『君の涙が少ないように』
ええ、あなたの人生も、涙より喜びにあふれていますように。
『次に君の見つける愛が、いつまでも続くように』
そんなことありえないわ。
わたしの中でいつまでも続く愛は、あなたに対する想いだけ。でも、優しい言葉をありがとう。
そして、世界中があなたの素晴らしさを見てくれますように。盲目の娘にさえ見えたのだから、きっと難しいことではないはずね……。
さようなら、ローナン。
さようなら。
どれだけ泣きはらしただろう、全身が氷の柱になってしまったように凍てつきはじめたとき、ネルの頭上に穏やかな声が響いた。
「そんなに泣くなら、僕と来ればいいじゃないか」
ネルは目を開き、顔を上げた。
「ロ、ローナン……?」
悲しいほど声が震えた。「行ってしまったんじゃ……」
「貸し馬車の御者に、厩舎を見つけてそこへ馬を繋いでおいてくれと頼みに行ってきただけだよ。ねえ、ネル」
逆にローナンの声は、小憎たらしいほど落ち着いている。
「イザベラのことは、きっと君にはものすごい恐怖だっただろう。でもそれは、君が愛情深くて、責任感があることの裏返しだ。諦めることはないよ。子育てなんて誰にでも失敗があるものだ……。君が欲しくないなら、作らないことだってできる。まだ出来てなければの話だけど……」
ローナンはネルの前にひざまずいたようだった。
急に、彼の声が目の前に下りてくる。
「あのとき……僕は避妊しなかったからね」
この寒さでなければ、ネルの顔は真っ赤に茹で上がっていただろう。確かに、ふたりはあの夜、避妊をしなかったはずだ。
つまり、可能性としては……すでにネルの中にローナンとの愛の結晶がいることだってあり得るのだ。まったく考えつかなかったことだが、しかし、ローナンは正しい。
「ローナン」
たくさんの想いに胸が詰まりすぎて、ネルにはその名前を呼ぶことしかできなかった。
「君はイザベラを救ったんだね」
ローナンの口調には賞賛がにじみ出ていた。
「そうやって君がイザベラを救ったみたいに、バレット家のみんなが僕達の子供を助けてくれるよ。そのために家族がいるんじゃないか。忘れたのかい?」
ネルには見えなかった。
目の前は果てしない暗闇ばかりで、光はどこにもない。影も形も見ることができないのに、ネルは今、ローナンの瞳にうっすらと涙が浮かんでいるのが分かった。
もうこれ以上、意地をはることも、我慢することもできない。
ネルは両手を伸ばしてローナンに抱きついた。ローナンは、両手を広げてネルを受け止めた。
その時──ネルは知らなかったけれど──雪が弱まり、東の空に朝日が昇りはじめて、ふたりを白銀のきらめきで照らし出していた。
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