上 下
8 / 35

裏話 女の闘い① 舞依vs萌花

しおりを挟む


side舞依

私とひろ君が幸せな時間を過ごしているとき、アイツ――賀谷萌花《かがやほのか》が現れた。彼女の顔は、もともと子供会で知っていたので、第一印象は「人見知りなのかな?」程度で、可愛らしいとは言えど、特別目を引く存在ではなかった。

しかし、気がつくと、彼女はひろ君に付きまとい始め、ひろ君もそれを拒否しなかったため、私たちが遊んでいる時にも平然と加わるようになっていた。私の心中は複雑だ。

ひろ君は本当に優しくてモテる。長年彼と一緒にいる私には、そんなことはよくわかっている。学校でも、彼の下駄箱にはラブレターが忍ばせられているのを見たことがある。返事のために体育館に行くと、「好きな人がいるから」と断る姿を見ても、その好きな人が私だと知っている。

これは自信過剰でも勘違いでもなく、事実なのだ。男子たちとの恋バナでは、ひろ君が好きな人のイニシャルが私と一致しているし、授業中に私が手を振ると、真っ赤になって目を逸らしていた。私がホットパンツを履いた日の視線も、バレないようにチラチラと感じていた。

だけど、そんな確信を持ちながらも、振られる可能性がわずか0.00001%でもあるのなら、その一歩を踏み出す勇気がなかなか出せない。今の関係が無くなるくらいなら、このままがいいと思ってしまうのだ。

――そんな私の苦悩は、ある日突然解決された。お互いに一歩を踏み出せずにいたその日、ひろ君が突然告白してきた。そして、彼は私にキスをした。

…えっ?舌…?! ちょっと、ひゃっ……ひろ君!?!?

流石に文句を言ったけれど、いきなりこんな場所でキスなんて!誰が見ているかわからないのに、どうしてこんなことをするの!?

…まあ、嫌とは言っていないけれど。

あのままの関係も悪くはなかったけれど、恋人同士になった方が嬉しいに決まっている。やっとひろ君も勇気を出して告白してくれたし、それに好きな人とキスまでしちゃったのだから、嬉しくないわけがない。

これから二人で色んなことをしたいなぁ…もちろん、エッチなことも、ひろ君なら…。

――そんな幸せなことを考えていると、目の前でアイツがひろ君に告白し、私にしたのと同じキスをしているのを見てしまった。

……あの雌犬。ぶち殺す。




☆☆☆

side萌花

萌花がひろ君と知り合ったとき、既にアイツ――鮎川舞依《あゆかわまい》がいた。子供会で顔を知っていたものの、彼女の第一印象は、いつもひろ君と一緒に遊んでいる女の子という程度だった。可愛いとは思ったが、特別な存在には見えなかった。

しかし、アイツは萌花がひろ君と遊ぶときには必ず一緒にいて、ひろ君もそれが当たり前のように受け入れているため、萌花は聞くことができなかった。ひろ君は優しいし、モテる。それを一番知っているのは萌花だ。彼女がひろ君を好きになったのも、その優しさに触れたからだ。

しかし、彼には既に他に好きな人がいて、それがアイツだということも知っていた。悔しいけれど、その事実を受け入れるしかなかった。

ひろ君はよく女の子と話しているが、特にアイツに向ける視線は優しく、授業中にイチャイチャしている姿も目撃したことがある。そのときのひろ君の視線は誰よりもアイツに向けられていた。

だけど、まだ二人は恋人同士ではないから、萌花が一緒にいても問題ないと思っていた。ひろ君が見ていないところでアイツに睨まれることがあっても、ひろ君と一緒にいられることには変えられない。ひろ君の一番はアイツだということを一番理解していたから、萌花は近づきすぎないように遠くから眺め、学校で時々声をかけ、放課後は一緒に遊ぶ程度にしていた。

――そんな萌花の想定は、ある日突然崩れた。いつも通りの朝、ひろ君とアイツを視界に入れて歩いていると、突然ひろ君が告白し、アイツがそれを受け入れ、二人はそのままキスを交わしたのだ。

その瞬間、萌花の心は嫉妬心でいっぱいになった。もう一生ひろ君とはそういう関係にはなれないと、突きつけられたのだから。無理だとは思っていても、可能性が0.00001%あるのとないのでは希望が全く違った。

……アイツが萌花の視線に気づき、わざと見せつけるようにキスをするのは辛かった。

前に告白して振られたことを覚えているが、その時に諦めなかった萌花が悪いと言われれば、確かにその通りだ。しかし、恋愛というのは感情のものであり、どうしようもなかった。私だってひろ君とあんなことをしてみたかった。

ひろ君が求めてくれるなら、どんなことでもしてあげたいのに。

――そんなことを考えていた萌花は、遊びの内容がかくれんぼだと知り、ダメもとである仕掛けを施した。運良く上手くいき、ひろ君と二人だけの空間を作り出すことができた。そんな状況では、抑えていた感情が溢れ出てしまう。ひろ君はそんな私を受け入れてくれた。萌花はもうひろ君からは離れられないと悟った。

アイツが入口から私を睨んでいるのに気づいた。

……ひろ君に恋人がいようと関係ない。ひろ君は私のものだよ。





★★★
あとがき

次回!舞依が萌花を呼び出してオ・ハ・ナ・シを決行!お楽しみに!(不謹慎)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

【掲示板形式】気付いたら貞操逆転世界にいたんだがどうすればいい

やまいし
ファンタジー
掲示板にハマった…… 掲示板形式+αです。※掲示板は元の世界(現代日本)と繋がっています。

貞操逆転の世界で、俺は理想の青春を歩む。

やまいし
ファンタジー
気が付くと、男性の数が著しく少ない歪な世界へ転生してしまう。 彼は持ち前の容姿と才能を使って、やりたいことをやっていく。 彼は何を志し、どんなことを成していくのか。 これはそんな彼――鳴瀬隼人(なるせはやと)の青春サクセスストーリー……withハーレム。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

処理中です...