5 / 10
第4話 清明学園
しおりを挟むお昼過ぎ。
母さんに呼ばれてリビングへと向かうと、テーブルには何かの雑誌が広げられていた。
「母さん? これは? 」
「――あっ! はーくん! これはね! はーくんが通うことになった高校のパンフレットよ!」
「パンフレット?」
そう言われ俺は母さんからパンフレットを手渡される。
見てみると、そこには清明学園という名前とともに綺麗で立派な建物が写っていた。
「凄い大きい学園だね。俺は此処に通うのか……。」
……楽しみだな。俺の理想の学園生活の舞台となる場所だ。妄想が膨らんでしまう。
「そうよ! それと――」
「うん?」
「――はい! これがさっき届いたのよ!」
そう言って母さんは、茶封筒らしき物を渡してきた。
中を見ると、そこには清明学園の合格証明書と入学式の案内状が同封されていた。
「……合格証明書。それと……入学式、か。」
合格証明書には、清明学園入学おめでとうの言葉とともに学園長の祝いの言葉が長々と綴られていた。
…………いや長いな、原稿用紙一枚分以上はあるんじゃないか?
若干引きつつも、お祝いの言葉という事なので読んでみることにした。
……………
…………
………
……
――ふむふむ……なるほど。文面から学園長の俺に対する感謝の気持ちが溢れ出ていた。
学園の経営者からすれば、男性の入学は経営上極めて肝要なのだろう。 ……世知辛い世の中だ。
文章を要約すると、「私立の学園を作り生徒を集め、学園として運営することには成功したものの、一向に男子の入学者が現れず困っていた。学園長自ら中学校に説明会を開いて男子生徒が学園生活を送りやすいことをアピールするも撃沈。学園の生徒からは目安箱に「男子の生徒がいませんが?」と言われる始末。学園の維持そして更なる発展には男子を入学させる必要がありとても困っていた。……その時、俺からこの学園に入学を希望するという連絡が入った。それはまさに我々の危機を救う神様のようであり――――」と書かれていた。……大丈夫だろうかこの学園。
それ以降は、「学園の教職員もまさか男子生徒が入学を希望してくれるとは夢にも思って無く、望外の喜びと共に合格通知の連絡が遅くなってしまって大変申し訳ありませんでした! これ以降はこのようなことがないように――――――(略)――――ですので是非とも清明学園をよろしくお願い致します!」と、学園長が生徒にしないだろう謙った様子で書かれいた。……文面からわかる通り本気で困っていたようだ。
実はこれは仕方がなかったりする。何せこの世界では男性が少ないのだ。そして高校は出会いの場。
学校を運営するなら男子の存在は不可欠と言ってもいい。
しかしこの世界にも男子を独占している学校がある。――そう、男子校だ。
男子校は男子が少ないこの世界にも存在している。
不思議に思うかもしれないが、逆にこの世界の男子にとっては男子校こそが理想なのだ。
男子校に行きさえすれば、生徒から教員までもが一人残さず男子だからだ。
よって余計に男子の数が減り、共学高なのに男子がいない何てことがよく発生してしまう。
では何故男子校があるのに共学高に行く男子がいるのか?
その答えは、大きく分けて2パターン存在する。
1つ目は、家庭環境によるものだ。
自分の家の方針で共学に行かされ、良い所の娘と結婚させられるパターン。
もしくはお金がないため、共学の給付金目当てで共学に行くパターン。……意外にもこのパターンは多いらしい。
2つ目は、男子校に入れなかったからだ。
このパターンは共学に行く男子の大部分を占めている。
何故なら男子校が少ないからだ。先にも述べたが男子校は生徒と教員全てが男子である。
――つまり学園長も男性である必要がある。
この世界の男性は結婚すると、大抵前世で言う専業主婦になる。……もしくはニート。
そのため、男性が教師を務めることはほぼ無い。ゆえにそれに比例して男性学園長も少ない。
なので男子校は少なく、毎年100倍はくだらないと言われている。
よって共学高には、男子校からの生徒が流れてくる。
しかし、この世界の男子なら共学高に行くことになれば、なるべく男子の多いところや給付金が多いところに行くだろう。そしてそういう所は偏差値が非常に高く学費も高いため、親が社長などのお嬢様が大多数を占めることになり、男子はどうせ結婚するならお金のある女性としたいので、男子がお金持ちや貴族などの上流階級の家に独占され、一般家庭では結婚することが非常に難しくなっている。
……どこの世界も生まれが大事ということだ。不平等だが。
……という事で、何故学園長が、こんなにも長い祝いの言葉を書いたのかが伝わったかと思う。
それほどに男子をめぐる情勢は共学高には不利なのだ。
そして既に察してしまった人がいるかもしれないが、清明学園は共学高の中でも所謂高偏差値の学校ではない。
どちらかと言えば平均より少し上の部類だ。なので文面で察せられるように、これまで男子が入学したことは無く俺が初の男子生徒という事になる。
……都合がいい気がするのは気のせいだろうか?
16
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国
てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』
女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
異世界に転生したと思ったら、男女比がバグった地球っぽい!?
ぱふ
恋愛
ある仕事終わりの帰り道、主人公前田世一は連勤の疲れが祟って車に轢かれてしまった。朦朧とする意識の中、家族や今世での未練に悔見ながら気を失ってしまった。そして、目が覚めると知らない天井でいつもと違う場所でにいて、さらに調べると男女比がバグっていた!?これで前世の未練や夢を叶えることができる!そう思って様々なことに挑戦していこうと思った矢先、ある少女と出会った。ぱっとみは可憐な少女だったが中身はドMでやばいやつだった!?そんな、やばめな少女から逃げようと別の子に話しかけたら次はドSなやばい少女がいて、愛が重い少女に監禁されかけて、ドロドロに甘やかしてくれるお姉さんに溶かされて、この世界の洗礼を受けていく。「助けて〜!この世界やばい人しかいないんだけど!」そんな悲痛な叫びが鳴り止まない過激なラブコメが始まる。*カクヨム様ハーメルン様にも掲載しています*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる