貞操逆転の世界で、俺は理想の青春を歩む。

第１話 転生の自覚

――これは何だろう。


体験したことの無い記憶が走馬灯のように流れ映し出されていく。



どこかの街？ だろうか。高層ビルが建ち並んでいて人通りもかなり多い。
そして俺はこの町に行ったことは無い。
――と、感じるとともにどこか違和感を感じる。



次は家？ だろうか。割と一般的な２階建て住居が見えてきた。
――もちろん俺はこの家のことを知らない。

家の中に入ると、誰かの話し声が聞こえてくる。
俺は直ぐさま声のする方に向かって歩き始めた。

リビングに入ると、そこには家族が居た。
母さん、妹、そして……父さん。
――ここでまた違和感を感じる。俺には父さんは居ない。しかし彼は俺の父さんだという認識がある。



また場面が変化する。
今度は学校らしき大きな建物の中に居た。

俺はどこかに向かって歩いていた。教室だろうか。
向かっている間、俺はすれ違う何人かと挨拶を交わしていた。
――しかしやはり違和感を感じる。それも明らかにおかしい。……挨拶をしたのは全員男子だったのだ。

おかしい。いつもなら俺が嫌がっても女子達が挨拶してくるのに。
――それに、男子の数が多いのも気になる。……やはり俺の知らない学校だ。

どうやらついに目的地に着いたようだ。 やはり教室だった。
俺は教室のドアを開けると、いつもは尻込みするはずが躊躇いなく入る。
するとどうだ。……教室の半分は男子だった。ざっと20人程だろうか。
――明らかにおかしい。……数もそうだが、彼等が女子と楽しそうに話している事がだ。

おかしい。……何処の世界に女子と楽しそうに話す男子が――それもこんなに沢山居るというのだ。
この異常な状態に頭が混乱してしまう。……にもかかわらず俺は女子の方に自ら近づいていく。

すると、一人の女子生徒と目が合った。　
彼女は俺に気が付くと、俺の方に向かって歩いてきた。
そして1ｍほどまで近づくと俺に話しかけてくる。――対して俺も嬉しそうに言葉を返す。



――しばらくすると、俺の精神の苦痛を感じ取ってくれたのか、俺にとって地獄のような場面はぼやけて曖昧になり始めた。……そしてそのまま跡形も無く崩れていった。






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「――夢、か……」

惜しかった。もっと女子と話したかったのに。夢はこれだから……。


「……え？ 惜しかった……？ 俺は今、残念に思ったのか……？」


不思議なことに、自分の感情と考えが背理していた。



「っ！ ……いや待て、そういうことか……！！」


暫くして俺は、あることを思いだしそして理解した。
……これはあまりにも巫山戯た話だ。自分でも信じられない。


――まさかこんな現象が実在していたなんてな……。


しかし現状を鑑みるにこれでしか説明が出来ない。
それはつまり―――


――――「転生」である。


それも、記憶を顧みていくと、転生は転生でも別の世界への転生だということがわかった。
どうやらこの世界は、男女の人口比率が1:30だというのだ。……あまりにも信じられない。

この世界ではそれが常識であり、それはこの世界の俺にとっても普遍の常識であった。
しかしこの世界の俺は、先ほど前世の記憶を取り戻したようだ。


「なるほどな……」


……で、これ、どうすれば良いんだ？
転生については、「よっしゃー！！！」とか「fooooooooo!!!!!」とでも思っていればいいが、実際に生活する俺にとってはそんな呑気に考えてられない。

――何故なら俺は、女性が好きだからだ！　別に変な意味では無い。前世の男性としてだ。


「転生したなら女子も嫌いになっているだろ普通」という意見もあるかも知れないが、実際問題俺は女子が好きだ。
　つまり、好き嫌いの感情は、遺伝子が関係していると言うのも否定しないが、心理面の影響の方が大きいって事だ。――少なくとも俺はそうだし。


それを踏まえると、問題は、この気持ちを表に出して良いのか――である。

普通に考えて、男子が女子を嫌っているのに俺だけ普通に話したりイチャついてたら明らかにおかしいだろう。
それに加えて、俺はどうやら今年から高校一年生らしいが、俺がいきなり女子が好きって言ったら、今まで関わりのあった同級生とか、何より家族が不審に思うだろう。それが原因で関係が拗れるかも知れない。

――出来ることならそれは避けたい。……だって、記憶にある女子は全員例外なく美少女と言って良いレベルなのだから！！　

この世界の男子(俺)は過去に「キモい」とか「ブス」とか言ってたみたいだけどね……。何様だよ……。
――前世のブスって言われる部類に入る女性を見たらどうなるんだ？　死ぬのか？


――と、まあそういうわけで、俺が何で呑気で居られないかをわかってくれたと思う。
此処で選択を謝れば死も同然だからだ。なるだけ慎重に行きたい。……失敗しないように。

――つまり実戦が一番だろう。(？)
考えても結局試さないとわからない。(これ真理)
ならばいくら考えてもこれ以上は無駄と言うことだ。


なので、実際に女性に好意的に接してみて反応を伺うことにした。
――そう。それはつまり…………家族だ。