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第21話 デート①
しおりを挟むワックスで軽く髪を整え、粘着クリーナーで埃を一つ残さず取り除く。
22℃という暖かな春の陽気に合った薄手の服装で着飾った俺は、待ち合わせ場所である駅前の広場で壁により掛かりながらイヤホンを付け音楽を聴いていた。
「ちょ……やば」
「うそぉ……格好いい……」
「声かけたい……でもレベルが高すぎる」
「せ、せめて写真だけ……カシャ」
「カシャ」「カシャ」「カシャカシャ」
閉じていた瞼を開き辺りを眺める。
今日は休日であることに加え半袖でもいいくらい暖かいため、スカートやホットパンツを履いた女性達が沢山この駅を利用しているようだった。
この駅の目の前には、スポーツやカラオケ、ファッションセンターや飲食店と様々な店舗が並ぶ大型ショッピングモールがある。
女性達は友人や家族と休暇を満喫するべく続々と吸い込まれるように入っていった。
一応男連れの女性もおり、その人は周りから明らかに視線を集めてしまうため遠くからでも居場所がわかってしまう。しかし、視線に居心地悪そうな表情を作る男性に比べ、女性の方は慣れているのか、または注目を集めることが嬉しいのか、それとも自慢したいのか、視線が集まりだした所で男性と腕を組み始め何のためらいも無く堂々と闊歩していた。
……確認せずとも周囲の羨む表情が目に浮ぶ。
「――玉城先生!お待たせしましたっ!」
待つこと数分。
駅のエントランスから、緑っぽい色の服に膝下のホワイトスカート、肩から白の小さめのショルダーバッグ、靴は白のスニーカーという清楚系のコーディネートで統一されたファッションを身に纏った七海がこちらに向かって来た。
「来たばっかりだから気にしないで」
「よかったです! あっ……その、先生とてもオシャレで似合っていて、す、素敵です!」
「ありがとう。七海の方こそ制服姿も可愛かったけど……今日は一段と可愛いよ」
「……っ!! あ、ありがとうございます!頑張って選んで良かったです!」
七海は褒められて照れたのか顔を少し赤らめる。
俺はそんな恥ずかしがる七海に近づくと横に並び、手を握る。
「えっ……せ、先生……?!」
「デートなんだし手くらい繋ぐだろ? 嫌なら外――――」
「い、嫌じゃ無いです!ビックリしただけですから!――はっ!」
周囲の視線に気付きますます顔を火照らせた七海は、周囲から隠れるように俺の背中に顔を隠す。……可愛すぎかよ。
このままだと一向にデートが進みそうに無かったので、俺は七海の手を引っ張るようにショッピングモールに足を進める。
七海の手は白く、細く、スベスベしていて、お互いの握り合う手のコントラストが俺に強く七海の女性らしさを意識させた。
「待ち合わせはあの子?!」
「確かに可愛いけど……」
「キィー!!手なんか握っちゃって!」
「羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい……」
外野から怨念のようなものが聞こえたがきっと気のせいだろう。
成仏してクレメンス。
しばらく経って落ち着いた様子の七海に声をかける。
「落ち着いた?」
「あ、は、はい!手を握るのは恥ずかしいですけど……幸せです」
「それなら良かった。……映画楽しみだね」
「は、はい!私あの映画の原作小説が大好きで……先生と見れるなんて楽しみすぎます!」
今日は最初に映画館で七海一押しのラブロマンス系の映画を見る予定だ。
七海によるとこの映画は現在女性達に大ヒットしていて、内容的に男性との恋愛の話なので、女性は愛する男性とこの映画を見るのが夢なんだそう。
俺も映画は好きなので今から楽しみだ。
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