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第6話 慰労会
しおりを挟む会議は紆余曲折ありながらも何とか終わった。
通常の職員会議では一時間から二時間で終了するのがスタンダードなのだが、途中休憩を挟んだり話が脱線したりした結果、時刻は既に18時をまわっていた。
現在俺は、理事長を含めた会議参加者全員と共に駅近郊にある居酒屋――人数が40人近くのため座敷を使用――にいる。
会議終了時に『皆で飲みに行きませんか?』と誘ってみたら全員喰い気味に乗ってくれたのだ。
教師生活は初めてだから分からないけど、普通こういう職場での飲み会は、行きたくないけど行かなければ後々面倒だから行く、と前世ではなっていたと思うが……全然そんなことなかった。よくネットで『近頃の新入社員は飲み会を断る』『飲みにケーションは大事なことだ』等と言った記事を見たから間違いない。
それなのにこの参加率の高さ。皆が男に飢えていることがわかる。先ほどからねっとりとした視線を感じるし。
席順は、権力を発動させようとした理事長に他の教師達が団結して反対したためくじ引きになり、結果は正面が二年二組担任の小林先生、右隣が三年三組担任の篠原先生、斜めが養護教諭兼スクールカウンセラーの山下先生になった。四人席である。ちなみに理事長は一番遠くの席。正当なるくじ引きの結果だ。しかし残念なことに今も『理不尽です~!』『わたしの玉城先生が~!』などと喚いている。本当に残念な人だ。
「玉城先生はお酒強い方ですか?」
俺が席に座ると、俺の正面に座る小林先生がそう声をかけてきた。
「結構いける口ですね。小林先生はどうですか?飲めます?」
「私は弱いのでサワーです!」
小林先生はどうやらお酒が弱いからサワーを飲むらしい。何とも先生のイメージに合っていた。小動物系というか。
しかし、俺としては酔った女性を見たいのでビールを勧めてみることにした。酔ったら素が出るはずだ。
「サワーいいですねー。ですが、今日はビールに挑戦してみませんか?私の少し分けますよ?」
「えぇ?! (……間接ってこと?!) え、えぇ……ぜひ……お願いします」
酔った後にどんな反応をするのか今から楽しみだ。
「玉城先生、何か食べたいものありますか?」
談笑しながらお酒を飲み進めたところで、不意に篠原先生が声をかけてきた。篠原先生の手にはオーダー用のタブレットがあった。
「えっと……では焼き鳥を。篠原先生、任せてしまって申し訳ないです」
「いえいえ!好きでやってることですから!」
言葉から、本心でそう思っているのが伝わってくる。
この人でも結婚できないんだから、この世界は本当に理不尽が過ぎると思う。
「ありがとうございます……そういう女性は素敵だと思います」
「…………え?(これって告白?!)」
率先して雑事を出来る篠原先生はとても素敵な女性だ間違いない。
将来は――出会いがあれば――良い奥さんになるだろう。
「今日は学校始まって初日でしたけど、玉城先生はどうでしたか?」
飲み会が中盤に差し掛かったところで、山下先生がそう声を掛けてきた。
「そうですね。始めて教師という物をしてみて、この職は結構自分に合ってると思いました」
「それは良かったです。突然理事長から『男性が教師をやる』と聞いたときは驚きましたが……玉城先生なら安心ですね」
理事長……。
そう思い視線を送ってみると、あの人は先ほどこっちに突撃して満足したのか、向こうでだらしない格好をしながら幸せそうに眠っていた。……本当残念な人だ。顔は良いのに。
「……山下先生にそう言って貰えて光栄です。ですが、むしろ先生の方が大変だったのでは? スクールカウンセラーでしたよね?」
「…………ええ、まぁ (私の方が光栄ですよ玉城先生と会話が出来て!だって私はメガネで背が低くて胸もお尻も大きくてブスだから……せめて同じ悩みを持つ生徒の心を軽くするためにカウンセラーを目指しただけですから)」
「……山下先生?」
「あ、すいません! えっと、そうですね、今日はカウンセリングというよりは生徒達の話を聞いていただけですよ!『目指せ!二年一組打倒!』みたいな! 」
「おお……担任としては何とも言えないですけどそれは先生が生徒に信頼されているということなので尊敬します」
「そ、そうだと嬉しいです!(私みたいなブスにも優しいし話を聞いてくれるなんて……玉城先生の方が尊敬します!!むしろ私よりカウンセラー向いてます!)」
俺が目指すべき教師像は山下先生かも知れない……話を聞いてそう思った。
生徒達と冗談を言い合うような、そんな慕われる先生に俺はなりたい。
…………親しみのあるエッチなお兄さん的ポジションで。
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