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6話
しおりを挟む『あのメイド衣装って自作だったんだ!凄い!』
「ありがとうございます! これでも私、結構長くコスプレイヤーやってますので!」
『おおー!』
――まあ一度も彼氏出来た事ないんですけど、はい。
喫茶店で美味しいと評判のパンケーキを嗜みながら気付けば既に13時過ぎ。
そう心でぼやく私kizunaは、今世間を賑わせている男性であるhajimeさんと談笑していました。
目の保養過ぎるイケメンフェイスと時々見え隠れする彼の小悪魔さが凄く心地よくて楽しくてニヤけてしまいます。――ああ、私生まれてきて良かった。
ところでそんな彼はと言うと、なんと私と同じコスプレイヤーになりたいようなのです。
常識的に考えれば「露出もあるし男性には……厳しいと思います」と伝えるべき所でしょう。女は狼ですから。
しかし彼は良い意味で普通ではありませんでした。
何せ彼はネットの海に自身の下着姿の自撮りを載せたのですから。
いやー……それを始めて見たときは多分五度見くらいしたと思います。それ程まで非常識なことでしたから、私たち女性にとっては。
多分今頃彼の自撮りが街行く人90%のスマホやPCに入っていることでしょう。その証拠に先ほどからチラチラと視線を感じますしトイレに駆け込む人が続出していますからね。いや唯イケメンに反応しているだけかも知れませんが。
――いや露骨過ぎでしょ!
「美味しいですね」
『うん』
対して目の前の彼はそれを知ってか知らずか気にした様子も見せずにパンケーキを食べ、ニコニコと笑顔を浮かべています。……あ、それを見た数人がトイレに行きました。
普通ならここで私に対して嫉妬の視線が送られても可笑しくないと思います。何せ男性しかもこんなにイケメンと話しているんですから。
しかし生憎彼の影響力(魅了)が強すぎた結果、誰もが彼に釘付けになっていました。
一方私は彼が”ネットで下着姿を晒したこと”と”今服を着て目の前にいること”でどうしようもなく興奮してしまいます。
例えるなら、グラビア写真集を出したアイドルの握手会に行くみたいな…。
……え?何言ってるんだろう私。
ま、まあ! つまり何が言いたいかといえば「めちゃめちゃ興奮します」ということです!
私だって健全な女子高生ですから!むふん!
――ただ、それは思ってもその事をおくびに出してはいけません。
何故か? それはもしそんなことをすれば引かれるのは義務教育で学んできたことですから。それに仮に男性側が苦痛を感じて訴えられたら多分勝てません。法律にもありますし、男性傷害罪。
だからさっきからトイレに駆け込んでいる人達は大変危険なのです。
彼が通報したら即現行犯で豚箱に入れられると思います。多分警察官も一緒にですけど……。笑えませんね。
あ、そういえば……過去に男性に性的欲求を感じた女性がそれを察知した男性に訴えられて逮捕されたことがありました。……嫌な事件でしたね。
「それで……コスプレイヤーになりたいって話ですけど」
『あ、そうだね。やってみたい』
いやいやそう考えると彼がコスプレイヤーになるのは大丈夫なのでしょうか。
コミケ参加者全員逮捕とかになるのでは??
……ほ、法の改正に期待しましょうか(震え声)
「正直に言えば男性のコスプレイヤーとか妄想の世界の話、それこそアニメとかの話です……もちろんこれまで居たこと無いです」
『そうなんだ アニメのヒロインが男なんだから男がコスプレとかやってても可笑しくないと思うけど』
「え、えっと……理屈ではそうですけど……残念ながら…」
彼はどこの世界の話をしているでしょうか。
男性が私たちの好むようなラッキースケベ満載でハーレムを築いているようなアニメを好きとは思えません。
確かに全部が全部そういったアニメではないので好む男性自体は居るかも知れませんが……。
「仮にいたとしてもコスプレはやらないと思います……女性に性的に見られてしまうので」
『あーなるほどね そういうものか』
そう言って紅茶に口に含む彼。
絵になるなぁ……
少し経ってから彼はカップを置いて話し始める。
『でも俺そういうの気にしないから大丈夫だよ むしろkizunaちゃんが着て欲しい衣装とかあれば着てみるけど』
「そうなんで……え?!…………いや、え?!本当ですか?!」
『うん』
いきなりの急展開です。ビックリして反射的に食いついてしまいました。決してR18なことは考えていませんはい。
しかし…目の前のイケメンを好きにして良いってどんなラノベですか!けしからん!!今時の流行は積極的なイケメンを好き放題する系のラノベなんですか!えぇ!?
そんなの――
「でも…ちょっとエッチなんですが……その」
期待しちゃうに決まってますよ……
『もちろんいいよ! ただ……俺だけだと恥ずかしいからkizunaちゃんも一緒にコスプレしよう』
「……おっおっおっ、お願いします!」
欲望を抑えきれずドモってしまいました。
ですが私は悪くありません。自分が作ったえちえちなコスプレ衣装をリアルの男性に着せる――それは私たちコスプレイヤーの最終目標であり決して叶えられない夢ですから。
何せそれが叶えば自分のフェチ薄着の男性相手にコスプレという名の不可抗りょ……ゲフンゲフン……何でもありません。
『じゃあ時間まだあるし、これからkizunaちゃんの家にお邪魔して良いかな』
「!! え、は、はい!もちろんです!」
初対面の男性を会って数時間で家に連れ込み?!
初男家連可?!
此処夢無天国私産来良私一生悔無!
しかし本当は向かった先が家では無くて刑務所…私の欲望を見抜いた彼が危険視してそうする可能性もある…むしろそっちの方が大きいです。だって私たち今日が初対面ですから。
でも…たとえそうだとしても私は立ち向かいます!
だって女の子ですから!
行きましょう!
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