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幼馴染は不意打ちしてくる
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恋愛において、幼馴染が有利に立てることは少ない。俺と有栖川が幼馴染であると知っているのは、生徒会で一緒だった奴らだけだからだ。
「じゃあ……私は?」
「え? ああ……」
俺は少し考える素振りを見せてから、笑顔を浮かべて言った。
「友達」
「…………」
「いや、だってさ……お前とはずっと一緒にいるわけだし……幼馴染ってそういうもんだろ?」
「……そうね」
有栖川はどこか不満げな表情をしながらも、納得したように小さく呟いた。
それから俺たちは、他愛もない会話をしながら下校するのであった。
「お兄ちゃん! おっはよー!」
「うわっ!? びっくりしたぁ……」
翌朝、リビングへとやってきた俺に対して、元気よく挨拶してくる妹がいた。
妹の名は神木彩乃という。俺、神木誠二は、四人家族の長男だ。両親ともに海外出張中で家にはいないため、実質今この家に住んでいるのは二人ということになる。
「もう朝ごはんできてるよ~♪ はやく食べよう!」
「わかったわかった。だからそんなにはしゃぐなって」
俺はそう言ってテーブルにつく。
妹は俺の一つ下で高校一年生なのだが、とても落ち着きがなく、いつもテンションが高いのだ。
そして、近所に住んでいる有栖川。彼女は幼馴染だ。小さい頃から家が隣同士で、兄妹のように育ってきた。いわゆる腐れ縁ってやつだな。まぁ、あいつがどう思っているかなんて知らないけど……。
「いただきます!」
彩乃と一緒に朝食を食べ始める。今日のメニューはトーストとハムエッグらしい。うん、普通に美味しい。
ちなみにだが、うちでは家事全般を妹が担当している。両親はほとんど帰ってこないから仕方がないと言えばそれまでなんだが……。
「今日は学校終ったらバイトあるんでしょ?」
「うん」
俺は妹に返事をする。
だが、実はバイトの前に有栖川に呼び出されているのだ。
「明日の放課後、ちょっとだけ来てくれる?」
「いいけど」
「じゃあ決まりね。時間になったら迎えに行くから」
「おう」
そんなやり取りがあったのだが、まさか本当に来るとは思っていなかった。
しかし、一体何の用だろうか?
いざ学校に行っても彼女は目を合わせてこない。休み時間はずっと本を読んでいるし、昼休みになっても一人でご飯を食べていた。
(なんか避けられてる気がするんだよなぁ)
そして、約束の放課後となった。
「お待たせ。待った?」
「いや全然。」
有栖川が教室まで迎えに来てくれたので二人で昇降口を出る。
そのまま、特に言葉を交わすことなく歩き出した。
「ここなら誰もいないかな」
しばらく歩いたところで立ち止まり、周囲を見渡してから彼女が言った。
人気のない場所に着いたみたいだ。
「私たち、幼馴染じゃん?」
「うん。」
「誠二くんはさ、幼馴染を恋愛対象として見れると思う?」
唐突に投げかけられたその問いに俺は思わず黙り込んでしまう。
「ごめん。いきなりこんなこと聞いちゃって」
「いや、別に大丈夫だけど」
「そっか。でも、聞きたい。」
「う~ん難しいね。」
正直に言うと、俺は今まで誰かのことを好きになったことが無い。それはきっと、有栖川との距離感をうまく保ち続けているせいだろう。俺が彼女を意識すればするほど、幼馴染としての関係性が崩れてしまうような気がしてならない。
だから、俺は答えた。
「わからない」
すごくいい友達だから、疎遠にはなりたくなかった。
「私はっ!」
何故か力んで彼女は言う。
「私は誠二くんのことが好きだよ」
「え……?」
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。
だがすぐに、俺が告白されているという事実を理解した。
「ど、どういう意味の好きなんだ……?」
「もちろん、恋愛対象として好きだよ」
俺はますます混乱してしまう。何故急にそんなことを言い出すんだろう?
「私ってさ、昔から引っ込み思案な性格でさ、中学まではまともに男の子と話したことすらほとんど無かったんだよね」
有栖川は続ける。
「そんな時に前と変わらず声をかけてくれたのがあなただった」
「そ、そうだったかな…」
「ううん、本当はずっと前から好きだった。」
「そうなのか……」
「うん」
有栖川の表情は真剣そのものだったが、俺はどこか上の空になってしまう。彼女のことがそういう風に見られないからだ。
「誠二くんはどうなの?」
緊張した面持ちで聞いてくる。ちょっとかわいい。
「俺は……」
「俺は……?」
「……」
俺は無言のままうつむく。すると、有栖川は俺の手を取ってきた。
「お願い」
「……」
「教えて」
「俺は……」
心臓がバクバク鳴っている。俺は今、人生で初めての告白を受けているんだ。それも、長年一緒にいた女の子にだ。
「俺は……」
「うん」
「俺は……!」
「うん」
「俺は……!」
「……」
俺は―――
「俺は……お前と付き合いたい」
俺ははっきりとそう告げた。自分でも驚いたことに、俺は彼女と付き合うことを望んだのだ。
「ふふ、嬉しい」
有栖川はとても嬉しそうにはにかんでいた。
それから俺たちは恋人同士になった。と言ってもまだ手を繋ぐくらいしかできていないが……。
「ねえ、キスしたい」
有栖川が突然そんなことを言うものだからドキッとした。というか、俺の部屋に二人きりでいるという状況だけでドキドキしている。
(いやいや! ダメだろ!)
でももう俺の手は彼女の後頭部にあった。ゆっくりとソレが近づいていく。あと少し、ほんの数センチというところで、有栖川が俺の胸を押し返してきた。
「ごめんなさい。やっぱり無理」
「あ、ああ。そうだな。」
(よかったぁ~)
ほっと安心すると同時に、どこか残念な気持ちもあった。
「な~んて噓。」
、、、チュッ!、、、
「えっ!?」
完全なる不意打ちだ。これは喰らった。完全にやられた。
「あはっ。顔真っ赤にして可愛い」
「おま、ちょ、待ってくれよ。こういうのって男のほうからするもんじゃねぇの?」
「その価値観古いw。だって誠二くんヘタレだし。それに、今ので我慢できなくなった」有栖川が俺の肩に手を置いて顔を近づけてくる。そして、再び唇を重ねてきた。今度は先ほどよりも長く、情熱的なキスだ。
(ヤバい。頭がボーっとする)
「ふぅ、満足」
「あの、今度から名前で呼んでいい?」
「いいよ。いつも有栖川とか長いし。」
「ありがとう。流華」
彼女の耳が赤く染まった。
「じゃあ……私は?」
「え? ああ……」
俺は少し考える素振りを見せてから、笑顔を浮かべて言った。
「友達」
「…………」
「いや、だってさ……お前とはずっと一緒にいるわけだし……幼馴染ってそういうもんだろ?」
「……そうね」
有栖川はどこか不満げな表情をしながらも、納得したように小さく呟いた。
それから俺たちは、他愛もない会話をしながら下校するのであった。
「お兄ちゃん! おっはよー!」
「うわっ!? びっくりしたぁ……」
翌朝、リビングへとやってきた俺に対して、元気よく挨拶してくる妹がいた。
妹の名は神木彩乃という。俺、神木誠二は、四人家族の長男だ。両親ともに海外出張中で家にはいないため、実質今この家に住んでいるのは二人ということになる。
「もう朝ごはんできてるよ~♪ はやく食べよう!」
「わかったわかった。だからそんなにはしゃぐなって」
俺はそう言ってテーブルにつく。
妹は俺の一つ下で高校一年生なのだが、とても落ち着きがなく、いつもテンションが高いのだ。
そして、近所に住んでいる有栖川。彼女は幼馴染だ。小さい頃から家が隣同士で、兄妹のように育ってきた。いわゆる腐れ縁ってやつだな。まぁ、あいつがどう思っているかなんて知らないけど……。
「いただきます!」
彩乃と一緒に朝食を食べ始める。今日のメニューはトーストとハムエッグらしい。うん、普通に美味しい。
ちなみにだが、うちでは家事全般を妹が担当している。両親はほとんど帰ってこないから仕方がないと言えばそれまでなんだが……。
「今日は学校終ったらバイトあるんでしょ?」
「うん」
俺は妹に返事をする。
だが、実はバイトの前に有栖川に呼び出されているのだ。
「明日の放課後、ちょっとだけ来てくれる?」
「いいけど」
「じゃあ決まりね。時間になったら迎えに行くから」
「おう」
そんなやり取りがあったのだが、まさか本当に来るとは思っていなかった。
しかし、一体何の用だろうか?
いざ学校に行っても彼女は目を合わせてこない。休み時間はずっと本を読んでいるし、昼休みになっても一人でご飯を食べていた。
(なんか避けられてる気がするんだよなぁ)
そして、約束の放課後となった。
「お待たせ。待った?」
「いや全然。」
有栖川が教室まで迎えに来てくれたので二人で昇降口を出る。
そのまま、特に言葉を交わすことなく歩き出した。
「ここなら誰もいないかな」
しばらく歩いたところで立ち止まり、周囲を見渡してから彼女が言った。
人気のない場所に着いたみたいだ。
「私たち、幼馴染じゃん?」
「うん。」
「誠二くんはさ、幼馴染を恋愛対象として見れると思う?」
唐突に投げかけられたその問いに俺は思わず黙り込んでしまう。
「ごめん。いきなりこんなこと聞いちゃって」
「いや、別に大丈夫だけど」
「そっか。でも、聞きたい。」
「う~ん難しいね。」
正直に言うと、俺は今まで誰かのことを好きになったことが無い。それはきっと、有栖川との距離感をうまく保ち続けているせいだろう。俺が彼女を意識すればするほど、幼馴染としての関係性が崩れてしまうような気がしてならない。
だから、俺は答えた。
「わからない」
すごくいい友達だから、疎遠にはなりたくなかった。
「私はっ!」
何故か力んで彼女は言う。
「私は誠二くんのことが好きだよ」
「え……?」
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。
だがすぐに、俺が告白されているという事実を理解した。
「ど、どういう意味の好きなんだ……?」
「もちろん、恋愛対象として好きだよ」
俺はますます混乱してしまう。何故急にそんなことを言い出すんだろう?
「私ってさ、昔から引っ込み思案な性格でさ、中学まではまともに男の子と話したことすらほとんど無かったんだよね」
有栖川は続ける。
「そんな時に前と変わらず声をかけてくれたのがあなただった」
「そ、そうだったかな…」
「ううん、本当はずっと前から好きだった。」
「そうなのか……」
「うん」
有栖川の表情は真剣そのものだったが、俺はどこか上の空になってしまう。彼女のことがそういう風に見られないからだ。
「誠二くんはどうなの?」
緊張した面持ちで聞いてくる。ちょっとかわいい。
「俺は……」
「俺は……?」
「……」
俺は無言のままうつむく。すると、有栖川は俺の手を取ってきた。
「お願い」
「……」
「教えて」
「俺は……」
心臓がバクバク鳴っている。俺は今、人生で初めての告白を受けているんだ。それも、長年一緒にいた女の子にだ。
「俺は……」
「うん」
「俺は……!」
「うん」
「俺は……!」
「……」
俺は―――
「俺は……お前と付き合いたい」
俺ははっきりとそう告げた。自分でも驚いたことに、俺は彼女と付き合うことを望んだのだ。
「ふふ、嬉しい」
有栖川はとても嬉しそうにはにかんでいた。
それから俺たちは恋人同士になった。と言ってもまだ手を繋ぐくらいしかできていないが……。
「ねえ、キスしたい」
有栖川が突然そんなことを言うものだからドキッとした。というか、俺の部屋に二人きりでいるという状況だけでドキドキしている。
(いやいや! ダメだろ!)
でももう俺の手は彼女の後頭部にあった。ゆっくりとソレが近づいていく。あと少し、ほんの数センチというところで、有栖川が俺の胸を押し返してきた。
「ごめんなさい。やっぱり無理」
「あ、ああ。そうだな。」
(よかったぁ~)
ほっと安心すると同時に、どこか残念な気持ちもあった。
「な~んて噓。」
、、、チュッ!、、、
「えっ!?」
完全なる不意打ちだ。これは喰らった。完全にやられた。
「あはっ。顔真っ赤にして可愛い」
「おま、ちょ、待ってくれよ。こういうのって男のほうからするもんじゃねぇの?」
「その価値観古いw。だって誠二くんヘタレだし。それに、今ので我慢できなくなった」有栖川が俺の肩に手を置いて顔を近づけてくる。そして、再び唇を重ねてきた。今度は先ほどよりも長く、情熱的なキスだ。
(ヤバい。頭がボーっとする)
「ふぅ、満足」
「あの、今度から名前で呼んでいい?」
「いいよ。いつも有栖川とか長いし。」
「ありがとう。流華」
彼女の耳が赤く染まった。
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