愛しのタイムトラベルガール

夢

　友恵は明日この家を出ていく。



朝に役所が開くとともに婚姻届けを提出し、教会で結婚式を挙げ、結婚披露宴を開き、こことは別の家に帰るのだ。

　いわゆるマリッジブルーというやつだろうか。ここ数週間にわたってなんとなく気持ちが沈み、仕事も手につかなかった。



　仕事というのは小説家である。父と同じ道を選んだ。偉大なる専業作家の父親とは異なり、友恵は企業勤めもしていた。



　全く持って筆が乗らず、今夜も原稿用紙一枚分書いたところでパソコンの電源を落とした。明日に結婚式が控えているんだから今日くらいはとも思ったが、毎日書くと自分で決めたのだ。そこは譲らなかった。



　父の執筆スタイルは真逆で気分が乗った時だけ書くというものだ。ただしムラがあり１ページも埋めずに遊び始めるということもしばしばだった。

　作家として尊敬しながらも、そこは真似しなかった。



　友恵はブルーライトカット眼鏡をデスクに放り投げ、ベッドに眠り込んだ。



　そして夢を見た。