雨と制服とジャージ

室生沙良

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雨と制服とジャージ

4.雨の日の・・・

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せ、迫っ……!
迫ってなんか!

「ち、ちが……ちがいますっ、全然っ」
「お前なー。男にこんな体を押し付けるようなこと、無意識にやんなよ。罪深い奴だな」
「え、でも私……モテないし」
「……そんなことねえだろ。結構かわ……いや、何でもねえ」
「え」
「何でもねえよ!」

世にも恐ろしい顔で否定されてしまったけれど、え、え、今、かわいいって……。
先生は私の肩を持って、ぐいっと押しやり立ち上がった。

「あーもう、早く復旧しねえのかよ。ブレーカー見てくる」
「先生、待って」
「ちょっと離れろ、今はやべーから」

やだ。
だって今、先生の素顔を見せてくれた。
でも、先生に怒られるのも怖くて、もう近づけない。

……ピカッ
ドドドドッ、バリバリドドーン!

「きゃああああ~っ!」

頭を抱えて床にへたり込む。膝が震えて千鳥足だ。
すると、先生がぐっと手を握り、力強く抱きしめてくれた。
外からは、雷雨の音が途切れない。

「……マジで、なんて日だ。今日は……」

私の髪に指を差しこみ、先生は悩ましげに憂う。



先生に連れられて、よちよち歩いてリビングのソファまでたどり着いた。
ブランケットを二人で被り、先生はスマホで気象情報を調べている。

「……停電は、徐々に復旧して行ってるらしい。電車はこのせいで今、どこも止まってるそうだ。お前の沿線もだめだな」
「え……」
「まあ、夜までならなんとか帰れるだろう。しかし、こんな時期に珍しいな、雷なんて」

さっきから私、先生の胸にひっついたままなんだけど……いいのかな、こんな……。
しかも毛布で二人包まって、ちょっといけない気分になったり……。
先生の足の間に座ってるんだけど、なんか……さっき、から。

「おい。聞いてんのか」
「き、聞いてますっ」
「……ったく、元々はお前が目の前ですっ転ぶから……」

はあっと溜息をつかれて、返す言葉がありません。



リビングはしん、と静まり返り、電池が入った時計の針がチクチク聞こえている。
それと……少しだけ速い、先生の鼓動も。

そして、先生よりずっと速い、私の鼓動も知られているんじゃないかと思うと。

「……濱崎」
「はっ、はい」
「お母さんとか、心配してるんじゃないのか」

あ、ああ。
そうかもしれない。

「あ、じゃあラインします……」
「ほう。お前はこの俺の前で堂々とスマホを出すのか。許せんな」

しまった!
うちの学校は携帯類の所持禁止。他の先生は見逃してくれるが、この氷上先生は、鬼の生徒指導!

キャメル色の鞄に片手を突っ込んだまま固まっていると、先生は「嘘だよ」と笑った。

「え……」
「連絡しろ。心配だろうし。俺が話してやろうか」
「あっ、いえっ……大丈夫です。わかってくれると思うので」

居残りで、
雨で帰れないけど、
先生がいてくれてるから、大丈夫。

って送れば、わかってくれると思う……。


「まあ……お前は普段からちゃんとしてるしな」

先生はそう言って、ソファに肘を掛けて、私がラインを送り終えるまで見守っていてくれた。
たまに頬に掛かる先生の息に、ドキドキしながら。

すぐにお母さんから了解のスタンプが送られてきて、ほっとスマホを鞄に入れた。
先生の家 とは言わない、ずるい娘です。

ピカッ、……ゴロゴロ…
雨足は強まっているし、雷の音はまだ鳴っているけれど、少し遠のいたように感じる。

「先生、雷はもう大丈夫みたいですね」
「ああ。後は電気が戻れば」
「ブレーカー見に行くんでしたっけ。暗いけど目も慣れてきましたね!」

先生に後ろから抱きしめられていたような格好から、すっと立ち上がって振り返る。
すると、先生が私の手首を引っ張り座らせた。

「わっ、危ない」

先生の胸の中に背中から着地した。
さっきより、バクバクと強い鼓動が伝わってくる。

「な。何ですか……」
「何ですかじゃねえよ。無邪気に炊きつけやがって」

耳元で甘く毒付かれて、ぎゅっと抱きしめられ、先生の手が……胸に当たってる。

「……あ……先生」
「どうしてくれんの。……お前」

先生の熱い吐息に、体も熱くなる。
体の中が熱くて、熱くて、心臓が忙しく鼓動を打つ。

どうしてくれんのって……。
先生、誘ってる……?


私は、一息置くと、先生の前で大きなスウェットを引き上げ、ばさりと脱ぎ捨てた。
この暗闇でははっきりとは見えていないと思うが、何も纏ってはいない。

「……おい、濱崎」

圧倒されている先生を逃さないように、裸でそのまま大きな体を抱きしめる。

さっきから続いていた、先生の昂りだって知っている。何度も私のお尻に当たっては避けてくれていたことも。
あれで……私も、焚きつけられたんだから。
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