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第三フェーズ ②
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とりあえず、キズナのアドバイス通りに突っ込んでみた真司は困っていた。
「前後左右全部敵じゃん!? どうしろっての!?」
魔法で胸辺りの高さまで土壁を作って自分の身を守りながら杖を指輪でこすり、氷の散弾を連発してディーヴァを面で押しのけているが……キリがない。
確かに味方同士でつっかえてて真司に迫るディーヴァがわかりやすく、見てから撃つ。で十分間に合う。高速移動で攪乱する事ができない真司には確実で堅実な戦い方にできていた。
「お、落ち着かないぃぃ!!」
まだまだ魔力には余裕があるし、桜花の手が加わった新しい杖は前より効率が良く魔法が放てた。が……さすがに実戦経験が足りないのですでに余裕はない。
「ひぁっ!? 後ろ!!」
ジャッ! と独特な音を立てて指輪と杖をこすり何度目かの全方位衝撃。
その威力は至近距離と言う事もあってバラバラに吹っ飛ぶディーヴァの四肢をそこら中に撒き散らしていた。
「いいぞ、その調子だぜ」
時折、絶妙なタイミングでキズナが声をかけ。
凄まじい勢いで真司の周りのディーヴァを駆逐してくれるおかげで距離ができる。
「いつまで続くのキズナ姉!!」
「もうしばらくだ、大分列が詰まってるからよ!」
そう、こんな戦い方は最初だけだ。
相手が対応しきれない状況に合わせてこちらも無茶を承知で、敵の数を減らせるだけ減らす戦い方をしている。
「皆は! 怪我してない?」
「自分の心配だけしろ。あいつら心配するだけ損だ……特にメイドコンビ。ひでぇぞアイツら」
キズナは真司と背中合わせになる様に位置を陣取ると愚痴をこぼす。
前だけに集中できる状況にしてくれたおかげで真司にも言葉を交わす余裕が少しだけできた。
「脱いだの?」
「薄い本みたいにうんぬんかんぬん……」
それでも撃破速度が圧倒的に多い牡丹とカタリナ、もといラストのメイドコンビ。
あれだけ組むのは嫌だといった割には絶妙なコンビネーションで中型戦車を狩り始める始末である。
「なんだ、姉ちゃんよりマシか」
「……聞きたくねぇ。お? 姉貴がやべぇな。また来る、しっかりな」
器用に銃を回し、太ももに括り付けた弾倉を銃に叩き込み。
キッチリ一弾倉分のディーヴァを破壊し、小太刀を片手にディーヴァの群れへ突っ込んでいくキズナ。
「キズナ姉も怪我しないようにね!!」
返事は無いが、それでもキズナの無事は分かる。
だって……キズナの通り過ぎた後は必ずディーヴァの部品が空に舞うんだもん。
「よし、地道に削るぞ!」
気合いを入れなおし、穴だらけになった土壁を再度生成。
地味に安定した戦い方を確立していく真司君だった。
◇◆―――◇◆―――◇◆―――◇◆
突入からしばらく、桜花は一人別任務を開始していた。
それは……
「案外セキュリティ薄いわね……」
数時間前にカタリナが狙撃した中型多脚戦車の解析だ。
思ったよりも牡丹とカタリナがディーヴァ相手に無双できている。
であればそんなに撃破の速度が速くない自分にできる事は次のフェーズに向けて事前行動。
それでもディーヴァは少なからず襲って来たが……
「分かるんですか?」
洞爺の妻、楓が近づくディーヴァを片っ端から斬り捨ててくれている。
たまたま中型戦車の前で合流したのだがその戦い方は桜花の理解を越えていた。
「数分くらいで全部のデータが吸い取れるわ。ありがとうね護衛」
「いえいえ、どうせ動き回っても止まっていても斬る数は同じようなもんですから」
にこにこと桜花に笑いかける楓にとびかかるディーヴァ、しかし。
――シャキン!
次の瞬間には首を飛ばされて桜花と楓を通り過ぎ、機能を停止させている。
最初にその切断面を見た桜花は滑らかで、ディスプレイ用かと勘違いしそうになった。
「……見えない」
「得意ですから」
抜刀から納刀まで、一瞬だけブレる手元だけが楓の行いの証拠だが……
「ふおっ!? また感知エラー!! 最初からやりなおしぃぃ!!」
「す、すみません!」
EIMSさんですら楓の技を捉えられないので何が起きたかわからずにエラーを返してくる。
「いいの、私が感知できる性能に作ってあげられてないのが原因だからぁぁ……ごめんねEIMSぅぅ」
「む、無理じゃないかなぁ」
なにせ高性能のハイスピードカメラですら楓の納刀する瞬間を残像でしかとらえられないんだもん。
「洞爺も楓も身体どうなってるのか……今度調べさせてくれないかしら?」
「私はともかく洞爺さんは嫌がるかなぁ」
とにかく病院とかが嫌いな洞爺にお願いしても逃げられるだけだろうな。と楓の脳裏に浮かぶ。
その間も間髪入れずディーヴァは襲い掛かってきているのだが……楓の攻撃圏に入った瞬間にバラバラ、もしくは両断されてガラクタと化していた。
「お、良い物見っけ」
コンソールを操作していた桜花がお目当ての物を発見、即座にデータとアカウントの吸い上げを始める。
「良かったですねぇ」
「協力ありがとね……うちの愚妹、スイッチ入って私をそっちのけで暴れ始めたから!」
「ごめんなさいごめんなさい! 私の幼馴染がごめんなさい!!」
そう、楓さん。
カタリナが居ない原因を作った牡丹の罪滅ぼしを買って出たのである。
「大丈夫、目的は果たしたし……」
コンソールに表示されている文字が『終了まで10秒』となったその時。
――どんがらがっしゃん!!
「踏み外しました」
コンソールをお尻で粉々に砕いたどこかの銀髪メイドは獰猛な笑みを浮かべて、即座に迫りくる中型多脚戦車へ跳躍した……。
もちろん解析はやり直しだろう。
「……すみません、さすがに味方は斬れないので」
桜花の言いたい事は痛いほどにわかったので、先回りして楓は応えた。
「あ、の、や、ろ、う……」
ぎりぎりと歯がしみしながら桜花が地団太を踏むのを必死でこらえる。
どうどう、と彼女の頭を撫でてあやす楓の額から汗が止まらない。
「楓さん」
「はい」
「みねうちってしなないわよね」
「か、加減すれば」
「ジャアオネガイ……ワタシ9カイメノカイセキニハイルカラ」
3分後、無事に解析を終えて戦線に戻る桜花の攻撃はなぜかメイドコンビ方面への流れ弾が多かったという……
「前後左右全部敵じゃん!? どうしろっての!?」
魔法で胸辺りの高さまで土壁を作って自分の身を守りながら杖を指輪でこすり、氷の散弾を連発してディーヴァを面で押しのけているが……キリがない。
確かに味方同士でつっかえてて真司に迫るディーヴァがわかりやすく、見てから撃つ。で十分間に合う。高速移動で攪乱する事ができない真司には確実で堅実な戦い方にできていた。
「お、落ち着かないぃぃ!!」
まだまだ魔力には余裕があるし、桜花の手が加わった新しい杖は前より効率が良く魔法が放てた。が……さすがに実戦経験が足りないのですでに余裕はない。
「ひぁっ!? 後ろ!!」
ジャッ! と独特な音を立てて指輪と杖をこすり何度目かの全方位衝撃。
その威力は至近距離と言う事もあってバラバラに吹っ飛ぶディーヴァの四肢をそこら中に撒き散らしていた。
「いいぞ、その調子だぜ」
時折、絶妙なタイミングでキズナが声をかけ。
凄まじい勢いで真司の周りのディーヴァを駆逐してくれるおかげで距離ができる。
「いつまで続くのキズナ姉!!」
「もうしばらくだ、大分列が詰まってるからよ!」
そう、こんな戦い方は最初だけだ。
相手が対応しきれない状況に合わせてこちらも無茶を承知で、敵の数を減らせるだけ減らす戦い方をしている。
「皆は! 怪我してない?」
「自分の心配だけしろ。あいつら心配するだけ損だ……特にメイドコンビ。ひでぇぞアイツら」
キズナは真司と背中合わせになる様に位置を陣取ると愚痴をこぼす。
前だけに集中できる状況にしてくれたおかげで真司にも言葉を交わす余裕が少しだけできた。
「脱いだの?」
「薄い本みたいにうんぬんかんぬん……」
それでも撃破速度が圧倒的に多い牡丹とカタリナ、もといラストのメイドコンビ。
あれだけ組むのは嫌だといった割には絶妙なコンビネーションで中型戦車を狩り始める始末である。
「なんだ、姉ちゃんよりマシか」
「……聞きたくねぇ。お? 姉貴がやべぇな。また来る、しっかりな」
器用に銃を回し、太ももに括り付けた弾倉を銃に叩き込み。
キッチリ一弾倉分のディーヴァを破壊し、小太刀を片手にディーヴァの群れへ突っ込んでいくキズナ。
「キズナ姉も怪我しないようにね!!」
返事は無いが、それでもキズナの無事は分かる。
だって……キズナの通り過ぎた後は必ずディーヴァの部品が空に舞うんだもん。
「よし、地道に削るぞ!」
気合いを入れなおし、穴だらけになった土壁を再度生成。
地味に安定した戦い方を確立していく真司君だった。
◇◆―――◇◆―――◇◆―――◇◆
突入からしばらく、桜花は一人別任務を開始していた。
それは……
「案外セキュリティ薄いわね……」
数時間前にカタリナが狙撃した中型多脚戦車の解析だ。
思ったよりも牡丹とカタリナがディーヴァ相手に無双できている。
であればそんなに撃破の速度が速くない自分にできる事は次のフェーズに向けて事前行動。
それでもディーヴァは少なからず襲って来たが……
「分かるんですか?」
洞爺の妻、楓が近づくディーヴァを片っ端から斬り捨ててくれている。
たまたま中型戦車の前で合流したのだがその戦い方は桜花の理解を越えていた。
「数分くらいで全部のデータが吸い取れるわ。ありがとうね護衛」
「いえいえ、どうせ動き回っても止まっていても斬る数は同じようなもんですから」
にこにこと桜花に笑いかける楓にとびかかるディーヴァ、しかし。
――シャキン!
次の瞬間には首を飛ばされて桜花と楓を通り過ぎ、機能を停止させている。
最初にその切断面を見た桜花は滑らかで、ディスプレイ用かと勘違いしそうになった。
「……見えない」
「得意ですから」
抜刀から納刀まで、一瞬だけブレる手元だけが楓の行いの証拠だが……
「ふおっ!? また感知エラー!! 最初からやりなおしぃぃ!!」
「す、すみません!」
EIMSさんですら楓の技を捉えられないので何が起きたかわからずにエラーを返してくる。
「いいの、私が感知できる性能に作ってあげられてないのが原因だからぁぁ……ごめんねEIMSぅぅ」
「む、無理じゃないかなぁ」
なにせ高性能のハイスピードカメラですら楓の納刀する瞬間を残像でしかとらえられないんだもん。
「洞爺も楓も身体どうなってるのか……今度調べさせてくれないかしら?」
「私はともかく洞爺さんは嫌がるかなぁ」
とにかく病院とかが嫌いな洞爺にお願いしても逃げられるだけだろうな。と楓の脳裏に浮かぶ。
その間も間髪入れずディーヴァは襲い掛かってきているのだが……楓の攻撃圏に入った瞬間にバラバラ、もしくは両断されてガラクタと化していた。
「お、良い物見っけ」
コンソールを操作していた桜花がお目当ての物を発見、即座にデータとアカウントの吸い上げを始める。
「良かったですねぇ」
「協力ありがとね……うちの愚妹、スイッチ入って私をそっちのけで暴れ始めたから!」
「ごめんなさいごめんなさい! 私の幼馴染がごめんなさい!!」
そう、楓さん。
カタリナが居ない原因を作った牡丹の罪滅ぼしを買って出たのである。
「大丈夫、目的は果たしたし……」
コンソールに表示されている文字が『終了まで10秒』となったその時。
――どんがらがっしゃん!!
「踏み外しました」
コンソールをお尻で粉々に砕いたどこかの銀髪メイドは獰猛な笑みを浮かべて、即座に迫りくる中型多脚戦車へ跳躍した……。
もちろん解析はやり直しだろう。
「……すみません、さすがに味方は斬れないので」
桜花の言いたい事は痛いほどにわかったので、先回りして楓は応えた。
「あ、の、や、ろ、う……」
ぎりぎりと歯がしみしながら桜花が地団太を踏むのを必死でこらえる。
どうどう、と彼女の頭を撫でてあやす楓の額から汗が止まらない。
「楓さん」
「はい」
「みねうちってしなないわよね」
「か、加減すれば」
「ジャアオネガイ……ワタシ9カイメノカイセキニハイルカラ」
3分後、無事に解析を終えて戦線に戻る桜花の攻撃はなぜかメイドコンビ方面への流れ弾が多かったという……
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