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ウェイランド防衛戦準備開始! ②
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「……正気ですか陛下」
王城の地下区画、禁忌武装と呼ばれる国内最高性能の武具を保管している場所。
剣と銃と戦車が収められていた。
その中でもずば抜けて危険な一品の前でアルベルトが仁王立ちする。
「今使わずにいつ使うんだよ……さすがに歳だからな。俺が使うのが一番適任だろ?」
「それは……そうですが。桜花博士のおかげで正しい使い方がわかっても……その性能はちょっと」
それは桜花が作った三世代型魔力武装。
その一つ、剣である。
発見された時は鞘にも入っておらず抜き身のまま遺跡の最深部に転がっていた。触れるだけで魔力を吸い上げ始めて持ち運ぶことすらできず。仕方なく当時の鍛冶ギルド総出で何とか鞘を作って持ち帰った一品。
「良いじゃないか。名は体を表すと言うが……|棺(コフィン)とは皮肉が聞いている」
「そのまま鬼籍入りしますよ? 陛下の魔力なんてとんでもなく少ないんですから」
「だから向いてるのさ」
「はあ……まあ、言っても聞かない人ですから良いですけど。せめて後方から有事の際にのみって約束だけは守ってくださいね? いきなり旗頭が自爆特攻なんてしたら勝てるものも勝てませんから」
実際アルベルト国王が前線に出る事態にはならないでほしいと願う、しかし……きっとこの国王は前線に出るのであろう。そう思うクロウ宰相だった。
「……なんか弥生からは開幕ブッパ頼みますって言われてんだけど俺」
「はあぁ!? 待ってください私聞いてませんが!?」
「え? やっぱり王様は一番強いと知らしめて士気を高めましょう! とかなんか言ってたが???」
「そ、それで剣を???」
「そう、だが??? 桜花曰く循環型臨界回路を組み込んでいるから全魔力を一回で使う代わりに安定した高出力斬撃が打てると聞いたが???」
だから実は魔力量に左右されないのよね、出力強すぎて一回放てば冷却に数日かかるから。と一回打ったら即離脱してもらうのを前提にしているなら、アルベルトに適していた。
だってどうせ後方待機するしかないもん。
「弥生監理官補佐ぁぁぁ!? なんてこと思いつくんだきみぃぃ!!」
「ちなみに私の護衛兼世話人のメイド隊の動向が必須だそうだ。なんでだろうな」
それは一発言ったらぶっ倒れるのを見越しているんです。国王陛下……そしてきっと弥生の事だ、国王のお世話し隊には真実を伝えてるんだろうという事も理解せざるを得ない。
とは言えずに苦笑いを浮かべるクロウ。この後始末をしなきゃいけないのだ……真実を知った際に落ち込むであろうアルベルトのご機嫌取りを。
「き、きっと騎士団も奮い立ちますね」
「だろう? たまには身体を動かさんとな……肩こりが酷くて」
なんだかんだと現役騎士に交じって今でも稽古や訓練を欠かしていない(そのせいで余計に疲れが抜けなくて倒れているのだが)アルベルトが格好良く笑うが……今ここで『あなた、使い捨ての敵減らしに活用されたんですよ』と言ったらどうなるのだろう? ちょっとやってみたい気もするクロウだが、弥生の計画に狂いが生じる方が問題だ。
「それは良い機会ですね」
「ああ、まだまだやれるぞ俺は」
そんなやる気に満ちたアルベルト国王、普段の事務処理がどれだけ嫌だったのか戦端を斬る役割がとてもうれしそう。
「……(恨むからな弥生監理官補佐)」
「じゃあ、持っていくか……」
地下倉庫に鎮座する禁忌武装『棺』を手に取るアルベルト。
本来であればこの時点で魔力食いが始まるのだが鍛冶ギルドの作った鞘のおかげで食い止められる。しかし……
――ぱきん
――ミシミシッ!!
「あん?」
アルベルトが手に取った瞬間、鞘にひびが入り……
「国王! 放してください!」
クロウが叫ぶ間もなく……木っ端みじんに砕け散った。
「うおっ!」
…………
………………
……………………
砕け散っただけだった。
「な、なんだ? 鞘が壊れた」
「陛下!? 大丈夫ですか!?」
「え、あ、いや……なんとも、ない」
「そんな訳……」
クロウとアルベルトの混乱をよそに、禁忌武装『棺」は静かにランタンの光を返す。
「なんか前に見た時と違くないか?」
「そういえば……前は刀身が黒みがかっていた気がしますね」
二人の記憶では刀身が黒い光沢を放ち、柄の部分に幾何学的な線が奔っていた。
今はその刀身が何と言うか神々しさが感じられる白い光をほんのりと纏い……柄の線が柔らかいカーブを描いている。
「どうなってんだこれ? 力が吸われる感じもしないし」
「弥生監理官補佐に状況を見てもらいましょう……なんか良く分かりませんし」
「そうするか……それにしても、こんなきれいな剣だったら『棺』じゃかわいそうだな……」
「まあ、改めてあなたが決めても良いんじゃないですか?」
「ふむ……考えとくか」
そう言いつつ、アルベルトが今腰に差している剣を抜き。代わりに禁忌武装の剣を差し込むと驚くほどしっくりとその中に納まった。
若干その感触に薄気味悪さも感じるが、今はそれどころではないと弥生の下へ急いで向かう二人。
彼らが居なくなった後、残されたウェイランドの禁忌武装……『銃』と『戦車』が歓喜の声を上げる様に震えたのだった。
ようやく出番が来たと言わんばかりに……
――なんかあの人……不幸な気配が強すぎて。思わず助けたくなっちゃった
もしかしたら違うかもしれない!?
王城の地下区画、禁忌武装と呼ばれる国内最高性能の武具を保管している場所。
剣と銃と戦車が収められていた。
その中でもずば抜けて危険な一品の前でアルベルトが仁王立ちする。
「今使わずにいつ使うんだよ……さすがに歳だからな。俺が使うのが一番適任だろ?」
「それは……そうですが。桜花博士のおかげで正しい使い方がわかっても……その性能はちょっと」
それは桜花が作った三世代型魔力武装。
その一つ、剣である。
発見された時は鞘にも入っておらず抜き身のまま遺跡の最深部に転がっていた。触れるだけで魔力を吸い上げ始めて持ち運ぶことすらできず。仕方なく当時の鍛冶ギルド総出で何とか鞘を作って持ち帰った一品。
「良いじゃないか。名は体を表すと言うが……|棺(コフィン)とは皮肉が聞いている」
「そのまま鬼籍入りしますよ? 陛下の魔力なんてとんでもなく少ないんですから」
「だから向いてるのさ」
「はあ……まあ、言っても聞かない人ですから良いですけど。せめて後方から有事の際にのみって約束だけは守ってくださいね? いきなり旗頭が自爆特攻なんてしたら勝てるものも勝てませんから」
実際アルベルト国王が前線に出る事態にはならないでほしいと願う、しかし……きっとこの国王は前線に出るのであろう。そう思うクロウ宰相だった。
「……なんか弥生からは開幕ブッパ頼みますって言われてんだけど俺」
「はあぁ!? 待ってください私聞いてませんが!?」
「え? やっぱり王様は一番強いと知らしめて士気を高めましょう! とかなんか言ってたが???」
「そ、それで剣を???」
「そう、だが??? 桜花曰く循環型臨界回路を組み込んでいるから全魔力を一回で使う代わりに安定した高出力斬撃が打てると聞いたが???」
だから実は魔力量に左右されないのよね、出力強すぎて一回放てば冷却に数日かかるから。と一回打ったら即離脱してもらうのを前提にしているなら、アルベルトに適していた。
だってどうせ後方待機するしかないもん。
「弥生監理官補佐ぁぁぁ!? なんてこと思いつくんだきみぃぃ!!」
「ちなみに私の護衛兼世話人のメイド隊の動向が必須だそうだ。なんでだろうな」
それは一発言ったらぶっ倒れるのを見越しているんです。国王陛下……そしてきっと弥生の事だ、国王のお世話し隊には真実を伝えてるんだろうという事も理解せざるを得ない。
とは言えずに苦笑いを浮かべるクロウ。この後始末をしなきゃいけないのだ……真実を知った際に落ち込むであろうアルベルトのご機嫌取りを。
「き、きっと騎士団も奮い立ちますね」
「だろう? たまには身体を動かさんとな……肩こりが酷くて」
なんだかんだと現役騎士に交じって今でも稽古や訓練を欠かしていない(そのせいで余計に疲れが抜けなくて倒れているのだが)アルベルトが格好良く笑うが……今ここで『あなた、使い捨ての敵減らしに活用されたんですよ』と言ったらどうなるのだろう? ちょっとやってみたい気もするクロウだが、弥生の計画に狂いが生じる方が問題だ。
「それは良い機会ですね」
「ああ、まだまだやれるぞ俺は」
そんなやる気に満ちたアルベルト国王、普段の事務処理がどれだけ嫌だったのか戦端を斬る役割がとてもうれしそう。
「……(恨むからな弥生監理官補佐)」
「じゃあ、持っていくか……」
地下倉庫に鎮座する禁忌武装『棺』を手に取るアルベルト。
本来であればこの時点で魔力食いが始まるのだが鍛冶ギルドの作った鞘のおかげで食い止められる。しかし……
――ぱきん
――ミシミシッ!!
「あん?」
アルベルトが手に取った瞬間、鞘にひびが入り……
「国王! 放してください!」
クロウが叫ぶ間もなく……木っ端みじんに砕け散った。
「うおっ!」
…………
………………
……………………
砕け散っただけだった。
「な、なんだ? 鞘が壊れた」
「陛下!? 大丈夫ですか!?」
「え、あ、いや……なんとも、ない」
「そんな訳……」
クロウとアルベルトの混乱をよそに、禁忌武装『棺」は静かにランタンの光を返す。
「なんか前に見た時と違くないか?」
「そういえば……前は刀身が黒みがかっていた気がしますね」
二人の記憶では刀身が黒い光沢を放ち、柄の部分に幾何学的な線が奔っていた。
今はその刀身が何と言うか神々しさが感じられる白い光をほんのりと纏い……柄の線が柔らかいカーブを描いている。
「どうなってんだこれ? 力が吸われる感じもしないし」
「弥生監理官補佐に状況を見てもらいましょう……なんか良く分かりませんし」
「そうするか……それにしても、こんなきれいな剣だったら『棺』じゃかわいそうだな……」
「まあ、改めてあなたが決めても良いんじゃないですか?」
「ふむ……考えとくか」
そう言いつつ、アルベルトが今腰に差している剣を抜き。代わりに禁忌武装の剣を差し込むと驚くほどしっくりとその中に納まった。
若干その感触に薄気味悪さも感じるが、今はそれどころではないと弥生の下へ急いで向かう二人。
彼らが居なくなった後、残されたウェイランドの禁忌武装……『銃』と『戦車』が歓喜の声を上げる様に震えたのだった。
ようやく出番が来たと言わんばかりに……
――なんかあの人……不幸な気配が強すぎて。思わず助けたくなっちゃった
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