140 / 255
本祭! 格闘大会!! ④ 末の妹は覚醒する
しおりを挟む
闘技場は盛り上がっていた。
響く歓声、空は天高く老若男女肥ゆる勢いで軽食やお酒をお供に年に一度のお祭りを謳歌している。
そんな誰しも楽しむイベントに、これから処刑台にでも上がろうかと言う最低のテンションで観戦しているどこかの秘書官と魔法士ギルドの期待の新人が居た。
「ねえちゃん、僕……胃が痛い。胃薬持ってない?」
「奇遇ね真司、私も欲しい……」
「お前ら……妹を信じてやれよ……うちの大ボスが大丈夫だって言ってるじゃん」
反対に気楽な様子でたこ焼きと緑茶を愉しむキズナが呆れたように二人に言い聞かせる。
キズナもお化け屋敷の出演者だが昨日やり過ぎたのを反省して、ギルドのみんなが弥生の護衛も兼ねて遊んでおいでと送り出されたのだ。
これ幸いと貯めていたお小遣いで里親募集コーナーに後で行くつもりである。
「なんかこう、怪我したらどうしようとか思う反面……あの子が自信満々で大丈夫っていう時は斜め四十五度を上がるか下がるかの判断がつかなくて」
「ねえちゃん、今からでも止めない? 多分今回下に下がる方だよ」
「……お前ら二人に比べたら文香はめちゃくちゃおとなしいと俺は思うんだが?」
実際、統括ギルドの『裏』なんてものがあるのは弥生もキズナも知っていたし気づいていた。
まさかそれに8歳の妹が関わってるとは思ってなかった弥生だが、キズナは別だった。
「俺8歳の時はもう刀持ってママに稽古つけてもらってたし、パパの銃を撃って大騒ぎとかもしてたからなぁ」
「違う、キズナ……そう言う事じゃないの」
「あん?」
「キズナ姉、僕らの言ってるヤバイは見てれば分かるよ」
8年間、文香の兄と姉を務めている弥生と真司の懸念はこの後で見事に的中する。
「さあ皆さん!! 今年もやってまいりました! ウェイランド格闘大会、今年はギルド祭50周年記念、そして! この大会も25回目と言うおめでたい大会だ!! ぞんっぶんに楽しんでってくれぇ! 優勝賞金はなんと金貨100枚! 副賞はウェイランド国王陛下が若かりし日に使用していた魔力増幅の効果を持つ魔石だ!! こんな豪華景品を求めて国外からも多数の参加者が集まっているぜぃ!! もちろん解説、進行共にこの俺! 王都振興会副部長のモーリアがお届けするぜ!! よろしくナッ!!」
観客席からひときわ高い所に開設ブースで男が叫ぶ。
ちょうど弥生達の真正面辺り、闘技場を挟んで反対側に一段高くなった場所。
「声大きい、なんか持ってるのかな?」
いくら真正面とはいえ拡声器でも使っているのか、喧騒の中でも綺麗に届くことに真司は驚く。
反対に弥生は目を細めてモーリアを注視すると右手にマイクみたいな物を持っているのを確認した。
「マイクみたいなの持ってる、魔法具じゃないかな?」
「……弥生、あの距離見えるのか? 目が良いな」
「姉ちゃん視力4.0だから……」
ふつうは双眼鏡とかで見える距離を弥生が見えるという事実に驚きながらも、キズナがポケットから単眼鏡を出してモーリアを見ると確かに持っている。
「真司、お前の姉ちゃんどうなってんの?」
「壊れてる腐女子、そう思っとけば大体安心できるよ。キズナ姉」
「ひどくない!?」
そんな3人を置き去りに、モーリアの進行で第一試合が始まろうとしていた。
観客も今か今かと待ち望んでいる中、キズナの動きが止まる。
単眼鏡を構えながらある一点をずーっと見据えていた。不思議に思った弥生がその先を辿れど何を見ているのかは良くわからなかったので声をかける。
「どうしたのキズナ」
「ん? ああ、お前が気にする事じゃねぇよ。気のせいっぽいし」
「何か起きそう?」
先日の王城見学の時のように何かのイベントだろうが関係なく狙われることだってある。
そう思った弥生がそわそわしながら周りを気にし始めたが、キズナは笑いながら否定した。
「本当に何でもない、俺の気のせいだって……ほら、第一試合が始まるぜ? 番号ランダムだからいきなり文香が出るかも」
「そう……ならいいけど」
――427番
「姉ちゃんの受験番号だ」
闘技場の中心で審判が箱の中から引き当てた紙に書いてある番号を読み上げる。
奇しくも弥生が書記官試験を受けた時の番号だったのを真司が覚えていて、縁起悪いなぁと苦笑していたら……
「はーーい!!」
いきなり文香だった。
事実は小説よりも奇天烈だった。
「お、さすが姉妹。繋がってるもんだな」
「嫌なつながり方……」
「文香大丈夫かな……緊張してる感じしないけど」
足と手が同じ側が動いてる文香の登場に会場内からどよめきと微笑ましいと笑いが上がる。
「おおっと!! なんと今回の初戦は可愛らしいお嬢ちゃんだ!! ええと、日下部文香選手! まさかの家政婦ギルドからの参戦です!! この子はなんと我が国の統括ギルド! オルトリンデ監理官のご推薦での出場です!! いやぁ、微笑ましいですねぇ。一体どんな戦いが見れるのか楽しみです!!」
――120番
愛想を振りまく文香に顔をほころばせながらも審判は次のくじを引く、事前に登録した者で国内の出場者は100番台。事前登録で国外は200番台、事前登録なしの国内は300番台、当日参加者は400番台、と言ったものだ。
読み上げられた番号の出場者が闘技場へ現れる。
その人物は薄汚れた革鎧、くすんだ茶髪、長身痩躯の男性……昨日統括ギルドで恐怖のあまり気絶したばかりのアニキサスだった。
彼はこの大会でも常連である。一回戦負けの。
「あー説明不要。さあ皆さん、次の対戦に期待しましょう!! 良いかお前! 文香ちゃんに指一本触れたらお前をろう人形にしてやるからな!? アニキサス!!」
会場内に失笑が漏れる。
別に彼は嫌われているわけではない、このやり取りは名物なのだ。
ほおっておくと面白い物が見れるので見守る。その中には『アレが見れるとこの季節が来たな』とか観客が笑いながら話している。
「うるせぇぞモーリア!! 格闘大会でどうやって触らないで勝つってんだよ!? ぐっへっへ、ついてるぜ……昨日は賞金貰い損ねたからな!! 一回戦を通過すれば昨日の賞金分稼げるぜ」
「お前!! 神聖な格闘大会でまた賭けてるのか!? 懲りねぇ奴だな!!」
俺もかけるぞ!! アニキサスが負ける方にな!
そんなヤジが方々から彼に捧げられる。実際彼は一度も勝利したことがない。
反則ぎりぎりの小細工なども使うが……圧倒的に勝てる相手ではなかった。なぜか知らないがアニキサスと戦う相手は優勝候補がほとんどであっさりと場外に落とされたり、気絶させられたり。
アニキサスが勝つ方に掛けるのはもはやたった二人、彼自身とヤスリンのみである。
「という訳で、文香ちゃんよぉ。おじさんの晩御飯のために負けてもらうぜ」
8歳児に凄む最低の冒険者がそこにいた。
「文香も一回だけ勝てればいいんだもん!! 負けないよ! おじちゃん!!」
腰に手を当て、精一杯の虚勢を張る文香。そう、負けられないのだ。
姉が心配するのだ、兄が心配するのだ。
いつもいつも自分には笑いながら平気だと、本当は大変なのに決して泣かない姉と兄。
だから私は良い子じゃないといけない。一日でも早く、姉の様に物知りでありたい。一日でも早く、兄の様に技術を得たい。でも、私にはまだ何もない。
そう、強く思ったのはこの国に来てからだろうか?
姉が飛竜に乗って楽しんでいる時に邪魔をした悪い人、後からオルトリンデに一歩間違えば死んでいたと聞かされた時に、一番最初に自分の弱さを悔やんだ。
当然仮に文香であっても、その場に真司が居てもどうにもならなかったのは後で洞爺が教えてくれた。それでも彼女の心は納得できない。
「おいおい、いくらなんでも子供に……」
アニキサスが不意に後ずさる。
そのことに彼は気づけなかった。
「本当に!! ケガさせんなよアニキサス!! では! がんばれ文香ちゃん!! 一回戦! はじめぇ!!」
モーリアが試合開始を告げると、文香がボロボロのマントの下に隠していたペンダントを取り出す。
それを遠くで、出場者控室の奥から見ていた牡丹がつぶやく。
「……結果が見えてるから面白くないわね」
牡丹はそれの、ペンダントが何かを知っている。
「いっくよーー! 竜化顕現!」
「あん?」
そのペンダントは、とあるお人好しの竜の角。
使い道が限られ、困っていたオルトリンデの手から零れ落ちた時に彼女が拾ったもの。
心優しき竜は言った。
願いが叶うお守りだと、だから文香は……あの日からずっと『お願いしたのだ』
光を飲み込む漆黒が文香を包み、その禍々しさとは裏腹に優しくその四肢を飾り上げる。
「うそだろ……おい!」
間近で見ている審判も、アニキサスも動けない。
文香からあふれ出した暗闇ともいうべき何かは二人を徹底的に拘束する。
――抗うな
と……。
「…………お前ら……やっぱ『きょうだい』だわ」
呆れたようにつぶやいたキズナの声は誰の耳にも届かない。
目の前にある光景だけで情報量がパンクしている。
「…………真司」
「…………言わなくても、解ってる。帰ってきたらまず拘束するから」
「お墓が三つ必要ね……」
だれが、とも言わず。
姉と兄は光を失った目で、文香のやらかしを見守るしかなかった。
響く歓声、空は天高く老若男女肥ゆる勢いで軽食やお酒をお供に年に一度のお祭りを謳歌している。
そんな誰しも楽しむイベントに、これから処刑台にでも上がろうかと言う最低のテンションで観戦しているどこかの秘書官と魔法士ギルドの期待の新人が居た。
「ねえちゃん、僕……胃が痛い。胃薬持ってない?」
「奇遇ね真司、私も欲しい……」
「お前ら……妹を信じてやれよ……うちの大ボスが大丈夫だって言ってるじゃん」
反対に気楽な様子でたこ焼きと緑茶を愉しむキズナが呆れたように二人に言い聞かせる。
キズナもお化け屋敷の出演者だが昨日やり過ぎたのを反省して、ギルドのみんなが弥生の護衛も兼ねて遊んでおいでと送り出されたのだ。
これ幸いと貯めていたお小遣いで里親募集コーナーに後で行くつもりである。
「なんかこう、怪我したらどうしようとか思う反面……あの子が自信満々で大丈夫っていう時は斜め四十五度を上がるか下がるかの判断がつかなくて」
「ねえちゃん、今からでも止めない? 多分今回下に下がる方だよ」
「……お前ら二人に比べたら文香はめちゃくちゃおとなしいと俺は思うんだが?」
実際、統括ギルドの『裏』なんてものがあるのは弥生もキズナも知っていたし気づいていた。
まさかそれに8歳の妹が関わってるとは思ってなかった弥生だが、キズナは別だった。
「俺8歳の時はもう刀持ってママに稽古つけてもらってたし、パパの銃を撃って大騒ぎとかもしてたからなぁ」
「違う、キズナ……そう言う事じゃないの」
「あん?」
「キズナ姉、僕らの言ってるヤバイは見てれば分かるよ」
8年間、文香の兄と姉を務めている弥生と真司の懸念はこの後で見事に的中する。
「さあ皆さん!! 今年もやってまいりました! ウェイランド格闘大会、今年はギルド祭50周年記念、そして! この大会も25回目と言うおめでたい大会だ!! ぞんっぶんに楽しんでってくれぇ! 優勝賞金はなんと金貨100枚! 副賞はウェイランド国王陛下が若かりし日に使用していた魔力増幅の効果を持つ魔石だ!! こんな豪華景品を求めて国外からも多数の参加者が集まっているぜぃ!! もちろん解説、進行共にこの俺! 王都振興会副部長のモーリアがお届けするぜ!! よろしくナッ!!」
観客席からひときわ高い所に開設ブースで男が叫ぶ。
ちょうど弥生達の真正面辺り、闘技場を挟んで反対側に一段高くなった場所。
「声大きい、なんか持ってるのかな?」
いくら真正面とはいえ拡声器でも使っているのか、喧騒の中でも綺麗に届くことに真司は驚く。
反対に弥生は目を細めてモーリアを注視すると右手にマイクみたいな物を持っているのを確認した。
「マイクみたいなの持ってる、魔法具じゃないかな?」
「……弥生、あの距離見えるのか? 目が良いな」
「姉ちゃん視力4.0だから……」
ふつうは双眼鏡とかで見える距離を弥生が見えるという事実に驚きながらも、キズナがポケットから単眼鏡を出してモーリアを見ると確かに持っている。
「真司、お前の姉ちゃんどうなってんの?」
「壊れてる腐女子、そう思っとけば大体安心できるよ。キズナ姉」
「ひどくない!?」
そんな3人を置き去りに、モーリアの進行で第一試合が始まろうとしていた。
観客も今か今かと待ち望んでいる中、キズナの動きが止まる。
単眼鏡を構えながらある一点をずーっと見据えていた。不思議に思った弥生がその先を辿れど何を見ているのかは良くわからなかったので声をかける。
「どうしたのキズナ」
「ん? ああ、お前が気にする事じゃねぇよ。気のせいっぽいし」
「何か起きそう?」
先日の王城見学の時のように何かのイベントだろうが関係なく狙われることだってある。
そう思った弥生がそわそわしながら周りを気にし始めたが、キズナは笑いながら否定した。
「本当に何でもない、俺の気のせいだって……ほら、第一試合が始まるぜ? 番号ランダムだからいきなり文香が出るかも」
「そう……ならいいけど」
――427番
「姉ちゃんの受験番号だ」
闘技場の中心で審判が箱の中から引き当てた紙に書いてある番号を読み上げる。
奇しくも弥生が書記官試験を受けた時の番号だったのを真司が覚えていて、縁起悪いなぁと苦笑していたら……
「はーーい!!」
いきなり文香だった。
事実は小説よりも奇天烈だった。
「お、さすが姉妹。繋がってるもんだな」
「嫌なつながり方……」
「文香大丈夫かな……緊張してる感じしないけど」
足と手が同じ側が動いてる文香の登場に会場内からどよめきと微笑ましいと笑いが上がる。
「おおっと!! なんと今回の初戦は可愛らしいお嬢ちゃんだ!! ええと、日下部文香選手! まさかの家政婦ギルドからの参戦です!! この子はなんと我が国の統括ギルド! オルトリンデ監理官のご推薦での出場です!! いやぁ、微笑ましいですねぇ。一体どんな戦いが見れるのか楽しみです!!」
――120番
愛想を振りまく文香に顔をほころばせながらも審判は次のくじを引く、事前に登録した者で国内の出場者は100番台。事前登録で国外は200番台、事前登録なしの国内は300番台、当日参加者は400番台、と言ったものだ。
読み上げられた番号の出場者が闘技場へ現れる。
その人物は薄汚れた革鎧、くすんだ茶髪、長身痩躯の男性……昨日統括ギルドで恐怖のあまり気絶したばかりのアニキサスだった。
彼はこの大会でも常連である。一回戦負けの。
「あー説明不要。さあ皆さん、次の対戦に期待しましょう!! 良いかお前! 文香ちゃんに指一本触れたらお前をろう人形にしてやるからな!? アニキサス!!」
会場内に失笑が漏れる。
別に彼は嫌われているわけではない、このやり取りは名物なのだ。
ほおっておくと面白い物が見れるので見守る。その中には『アレが見れるとこの季節が来たな』とか観客が笑いながら話している。
「うるせぇぞモーリア!! 格闘大会でどうやって触らないで勝つってんだよ!? ぐっへっへ、ついてるぜ……昨日は賞金貰い損ねたからな!! 一回戦を通過すれば昨日の賞金分稼げるぜ」
「お前!! 神聖な格闘大会でまた賭けてるのか!? 懲りねぇ奴だな!!」
俺もかけるぞ!! アニキサスが負ける方にな!
そんなヤジが方々から彼に捧げられる。実際彼は一度も勝利したことがない。
反則ぎりぎりの小細工なども使うが……圧倒的に勝てる相手ではなかった。なぜか知らないがアニキサスと戦う相手は優勝候補がほとんどであっさりと場外に落とされたり、気絶させられたり。
アニキサスが勝つ方に掛けるのはもはやたった二人、彼自身とヤスリンのみである。
「という訳で、文香ちゃんよぉ。おじさんの晩御飯のために負けてもらうぜ」
8歳児に凄む最低の冒険者がそこにいた。
「文香も一回だけ勝てればいいんだもん!! 負けないよ! おじちゃん!!」
腰に手を当て、精一杯の虚勢を張る文香。そう、負けられないのだ。
姉が心配するのだ、兄が心配するのだ。
いつもいつも自分には笑いながら平気だと、本当は大変なのに決して泣かない姉と兄。
だから私は良い子じゃないといけない。一日でも早く、姉の様に物知りでありたい。一日でも早く、兄の様に技術を得たい。でも、私にはまだ何もない。
そう、強く思ったのはこの国に来てからだろうか?
姉が飛竜に乗って楽しんでいる時に邪魔をした悪い人、後からオルトリンデに一歩間違えば死んでいたと聞かされた時に、一番最初に自分の弱さを悔やんだ。
当然仮に文香であっても、その場に真司が居てもどうにもならなかったのは後で洞爺が教えてくれた。それでも彼女の心は納得できない。
「おいおい、いくらなんでも子供に……」
アニキサスが不意に後ずさる。
そのことに彼は気づけなかった。
「本当に!! ケガさせんなよアニキサス!! では! がんばれ文香ちゃん!! 一回戦! はじめぇ!!」
モーリアが試合開始を告げると、文香がボロボロのマントの下に隠していたペンダントを取り出す。
それを遠くで、出場者控室の奥から見ていた牡丹がつぶやく。
「……結果が見えてるから面白くないわね」
牡丹はそれの、ペンダントが何かを知っている。
「いっくよーー! 竜化顕現!」
「あん?」
そのペンダントは、とあるお人好しの竜の角。
使い道が限られ、困っていたオルトリンデの手から零れ落ちた時に彼女が拾ったもの。
心優しき竜は言った。
願いが叶うお守りだと、だから文香は……あの日からずっと『お願いしたのだ』
光を飲み込む漆黒が文香を包み、その禍々しさとは裏腹に優しくその四肢を飾り上げる。
「うそだろ……おい!」
間近で見ている審判も、アニキサスも動けない。
文香からあふれ出した暗闇ともいうべき何かは二人を徹底的に拘束する。
――抗うな
と……。
「…………お前ら……やっぱ『きょうだい』だわ」
呆れたようにつぶやいたキズナの声は誰の耳にも届かない。
目の前にある光景だけで情報量がパンクしている。
「…………真司」
「…………言わなくても、解ってる。帰ってきたらまず拘束するから」
「お墓が三つ必要ね……」
だれが、とも言わず。
姉と兄は光を失った目で、文香のやらかしを見守るしかなかった。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる