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影は薄いですがのんびり楽しんでますぅ♪
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「あ、お姉さん。私『深海を切り刻む業火』セットで」
統括ギルド2階、その中央執務室を利用した喫茶店。『死してなお労働に従事する』では女郎蜘蛛の怪異、南雲糸子が店長となって主に不死族のメイドさんや執事さんが店員となって無事お化け屋敷を突破した人たちがのんびりしていた。
今も銀のお盆を片手に下半身蜘蛛の糸子が「はぁ~い」とのんびりした声で注文を取っている。
衣装は家政婦ギルドから提供された古着をラミア族のラビリアがすさまじい勢いでゴスロリ改造した。あの人はいつ寝ているのだろう。そして子育て大丈夫なのか? と周りに驚愕されながらも、そのメイド服は大好評で男性女性関わらず羨望の的になっていた。
「夜音ちゃ~ん、3番テーブル『深海を切り刻む業火』セットはいります~」
「かしこまりました~」
店内は約8割の席が埋まっており、想定していたよりは暇。と言ったところである。
なぜならば。
「ほとんどのお客様がカップルコースと子供向けコースの通過者ね~」
「そうね、さっきのドワーフとエルフの子供達もだけど……闇を覗く覚悟はあるのかと私綺麗? は通過者無しかぁ。後は付き添いの保護者、と……やりすぎたかしら?」
「本体の私、暇そうよ~? 今は糸であやとりしてるみたい……夜音ちゃんと」
「……本当だ。どんだけ暇なのよ」
各コース通過すると一人一枚メダルが貰えてこの喫茶店でお菓子や軽い食事ができる。
しかし、脱落した場合は残念ながらお金が必要となるシステムにした為か怯えて逃げ出した為か……日本でいうファミレスのような雰囲気になってしまっていた。
元々はちょっと怪しげな料理名と給仕の雰囲気で余韻を楽しんでもらおうかと企画されていたのだが、ここにいるお客さんにはこちらの方が好評らしい。
「おいしいわね、表面はカリッとしてて中がトロトロ……この弾力があるの何のお肉かしら?」
「このかかっている茶色いソースと黄色のソース……濃いめだけど病みつきになるわね!! 丸くて小さくて……熱いけど」
濃厚で香ばしい匂いに食欲をそそられながら、はふはふ、と口の中がやけどしない様に息を吐きながら子供の付き添いできているお母さま方がニコニコしている。まあ、正体はたこ焼きなのだがこの国に受け入れられたようだ。
メニューも名前はアレだがパンケーキやたこ焼き、焼きパスタ(中華そばがなかったので)など作り方も簡単である程度作り置きもできるものが選ばれている。
「ところでさ糸子さん、さっきからお客さんがちょいちょい話題に出してるカボチャって何のこと?」
「かぼちゃ? そんな仕掛けあったかしら? 弥生ちゃんがこっそり混ぜたんじゃないかしら? さぷらーいずって」
「……何やってんのよあの子は」
「不思議な子よねぇ~。女将さんに凍らされたっぽいのにピンピンしてるし」
「ゆきゆきなら殺さないで凍らせる事くらいはできるわよ、それより三番テーブルのたこや……『深海を切り刻む業火』セット出来上がったわ。よろしく糸子さん」
「はぁい~」
厨房から声がかかり、たこ焼きと飲み物を受け取る彼女は実に楽しそうだった。
なぜここを糸子が志願したかと言うと蜘蛛であることを隠さなくていい上に、偶に気が抜けて完全蜘蛛化してもアトラクションの一種だと認識してもらえるからである。
その代わり、気を抜きすぎると……
「糸子さん、目、目が複眼になってる……いっそ蜘蛛のまま給仕したら?」
「えええぇ……メイド服も着たいのにぃ」
「……もう好きにしなさい。あたし抜け出して遊びに行こうかなぁ」
「お店は手が足りてるからいいですよ?」
ひょいぱく、と夜音は作り置きの間食用たこ焼き(ちょっと失敗したもの)を厨房のトレーからかっさらい店内を見回す。給仕係のメイドも何人かは手持無沙汰でのんびりとお裁縫していたり、来店した知り合いと談笑するくらいには暇そうだ。となれば判断は速い。
「決めた、糸子さん。あたしちょっと遊んでくる~」
「はぁい。夕方には戻ってきてねぇ~」
そうして夜音はお仕事しつつも遊びに出かける。
糸子は給仕の方が楽しいのでお化け屋敷とこちらの喫茶店でのんびり働くことに何の文句も無い。しかし、彼女を見送ってしばらくして気が付いた。
「あれぇ? 夜音ちゃんメイド服のまま出掛けちゃったら文香ちゃんこっちで給仕できないんじゃ?」
そう、夜音が休憩するときにはメイド服は文香が着て交代するのだが……着たまんま遊びに行ったら制服が足りない。小首をかしげてどうするか悩む糸子に解決策は思いつかなかった。それでも記憶を辿ると、どこかで文香サイズのメイド服を見た事がある。
「あ!! オルトリンデちゃんのメイド服」
そう、三カ国会議で使われた迎賓館を掃除する際にオルトリンデが着ていたメイド服。あれは確か監理官執務室のクローゼットにクリーニングされて置いてあったはず。善は急げと同僚のメイドさんに断りを入れて外壁をすいすい登って目的地へ向かう事にした。
「文香ちゃん可愛いから着せてあげたいのよねぇ~」
実にわかりやすい理由で目的の部屋の窓にたどり着くと……何やら中で音がする。
恐怖に貶める側への恐怖は堂々と待ち構えていた。
統括ギルド2階、その中央執務室を利用した喫茶店。『死してなお労働に従事する』では女郎蜘蛛の怪異、南雲糸子が店長となって主に不死族のメイドさんや執事さんが店員となって無事お化け屋敷を突破した人たちがのんびりしていた。
今も銀のお盆を片手に下半身蜘蛛の糸子が「はぁ~い」とのんびりした声で注文を取っている。
衣装は家政婦ギルドから提供された古着をラミア族のラビリアがすさまじい勢いでゴスロリ改造した。あの人はいつ寝ているのだろう。そして子育て大丈夫なのか? と周りに驚愕されながらも、そのメイド服は大好評で男性女性関わらず羨望の的になっていた。
「夜音ちゃ~ん、3番テーブル『深海を切り刻む業火』セットはいります~」
「かしこまりました~」
店内は約8割の席が埋まっており、想定していたよりは暇。と言ったところである。
なぜならば。
「ほとんどのお客様がカップルコースと子供向けコースの通過者ね~」
「そうね、さっきのドワーフとエルフの子供達もだけど……闇を覗く覚悟はあるのかと私綺麗? は通過者無しかぁ。後は付き添いの保護者、と……やりすぎたかしら?」
「本体の私、暇そうよ~? 今は糸であやとりしてるみたい……夜音ちゃんと」
「……本当だ。どんだけ暇なのよ」
各コース通過すると一人一枚メダルが貰えてこの喫茶店でお菓子や軽い食事ができる。
しかし、脱落した場合は残念ながらお金が必要となるシステムにした為か怯えて逃げ出した為か……日本でいうファミレスのような雰囲気になってしまっていた。
元々はちょっと怪しげな料理名と給仕の雰囲気で余韻を楽しんでもらおうかと企画されていたのだが、ここにいるお客さんにはこちらの方が好評らしい。
「おいしいわね、表面はカリッとしてて中がトロトロ……この弾力があるの何のお肉かしら?」
「このかかっている茶色いソースと黄色のソース……濃いめだけど病みつきになるわね!! 丸くて小さくて……熱いけど」
濃厚で香ばしい匂いに食欲をそそられながら、はふはふ、と口の中がやけどしない様に息を吐きながら子供の付き添いできているお母さま方がニコニコしている。まあ、正体はたこ焼きなのだがこの国に受け入れられたようだ。
メニューも名前はアレだがパンケーキやたこ焼き、焼きパスタ(中華そばがなかったので)など作り方も簡単である程度作り置きもできるものが選ばれている。
「ところでさ糸子さん、さっきからお客さんがちょいちょい話題に出してるカボチャって何のこと?」
「かぼちゃ? そんな仕掛けあったかしら? 弥生ちゃんがこっそり混ぜたんじゃないかしら? さぷらーいずって」
「……何やってんのよあの子は」
「不思議な子よねぇ~。女将さんに凍らされたっぽいのにピンピンしてるし」
「ゆきゆきなら殺さないで凍らせる事くらいはできるわよ、それより三番テーブルのたこや……『深海を切り刻む業火』セット出来上がったわ。よろしく糸子さん」
「はぁい~」
厨房から声がかかり、たこ焼きと飲み物を受け取る彼女は実に楽しそうだった。
なぜここを糸子が志願したかと言うと蜘蛛であることを隠さなくていい上に、偶に気が抜けて完全蜘蛛化してもアトラクションの一種だと認識してもらえるからである。
その代わり、気を抜きすぎると……
「糸子さん、目、目が複眼になってる……いっそ蜘蛛のまま給仕したら?」
「えええぇ……メイド服も着たいのにぃ」
「……もう好きにしなさい。あたし抜け出して遊びに行こうかなぁ」
「お店は手が足りてるからいいですよ?」
ひょいぱく、と夜音は作り置きの間食用たこ焼き(ちょっと失敗したもの)を厨房のトレーからかっさらい店内を見回す。給仕係のメイドも何人かは手持無沙汰でのんびりとお裁縫していたり、来店した知り合いと談笑するくらいには暇そうだ。となれば判断は速い。
「決めた、糸子さん。あたしちょっと遊んでくる~」
「はぁい。夕方には戻ってきてねぇ~」
そうして夜音はお仕事しつつも遊びに出かける。
糸子は給仕の方が楽しいのでお化け屋敷とこちらの喫茶店でのんびり働くことに何の文句も無い。しかし、彼女を見送ってしばらくして気が付いた。
「あれぇ? 夜音ちゃんメイド服のまま出掛けちゃったら文香ちゃんこっちで給仕できないんじゃ?」
そう、夜音が休憩するときにはメイド服は文香が着て交代するのだが……着たまんま遊びに行ったら制服が足りない。小首をかしげてどうするか悩む糸子に解決策は思いつかなかった。それでも記憶を辿ると、どこかで文香サイズのメイド服を見た事がある。
「あ!! オルトリンデちゃんのメイド服」
そう、三カ国会議で使われた迎賓館を掃除する際にオルトリンデが着ていたメイド服。あれは確か監理官執務室のクローゼットにクリーニングされて置いてあったはず。善は急げと同僚のメイドさんに断りを入れて外壁をすいすい登って目的地へ向かう事にした。
「文香ちゃん可愛いから着せてあげたいのよねぇ~」
実にわかりやすい理由で目的の部屋の窓にたどり着くと……何やら中で音がする。
恐怖に貶める側への恐怖は堂々と待ち構えていた。
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